つくって、食べて、楽しくて、体にいい食事

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蒲原泉(かもはら いずみ)さん

インタビュー 連載第3回

今月のサロネーゼは、福岡「ピースフルルーム」の蒲原泉さんです。「体によくて、つくって、食べて、楽しい家ごはん」のアイデアを盛り込んだ「旬菜健美料理教室」が開かれているご自宅サロンにうかがいました。取材は2月の寒い時期で、体があたたまるお料理がテーマでしたが、5月は「初夏のヘルシーイタリアン」。こちらもおいしそうです!(毎週月曜更新)

掲載日: 2010/5/31(月)

●調理の主役は生徒さん

_SSP8146.jpg――レッスンを拝見して印象に残ったのは、蒲原さんが先生としてお教室の中心にいるというより、アシスタント役に回る場面が多かったことです。

蒲原 私自身がアシスタント役が好きだからでしょうか。皆さんがやりやすい環境を先読みして準備するのが楽しいんです。
福岡で長年お料理教室をされている檜山タミ先生のアシスタントをしていたときも、すごく楽しかったですし。

――お料理教室のほかに、蒲原さんはどんなお仕事をされているのでしょう。

蒲原 自宅教室以外では、食品メーカーさんのイベントで講演をさせていただいたり、雑誌・テレビ・ラジオなどで、健康という切り口で食に関する解説をしたり、レシピ開発をしたり、西部ガスさんなど、企業さんの運営するお料理教室で講師のお話をいただくこともあります。

 メインは、月に5、6回開催している自宅教室です。

――「旬菜健美料理教室」とあるとおり、生活習慣予防やダイエットに効果的な、低カロリーで免疫力を高めるレシピという切り口を大事にされている。

蒲原 以前、あるクリニックでレシピ開発をしていたことがあって、塩分制限のある患者さんだと味が極端に薄くて、決して「おいしい」と言えるものではなかったんですね。
 病院食のレシピを考えながら、「食事制限が必要になるまえに、おいしいものを食べることで病気を予防する方法はないかしら?」と思っていたので、自分でお教室は、「おいしく食べて健康になれるレシピ」をテーマにしました。

●がんばらない、続けられる、体にいい料理

_SSP8004.jpg――「おいしい」「食べることが楽しい」「作るのも楽しい」ということをコンセプトにされていて、「体にいいからがんばろう」の連続より、「おいしいから食べる」、そして「簡単だからまた作る」の連続にしたい、ともおっしゃっていて。

蒲原 ええ、それがすごく大事だと思っています。
 手順がすごく大変な…「打ち上げ花火」みたいな(笑)お料理もたまにはいいですが、健康管理は毎日毎日の積み重ねなので、かんたんなほうが「さあつくろう!」と思えるかしら?と。

 この教室で目指しているのは、お客さまがみえるときのおもてなし料理ではなく、普段の食卓にのぼる、「我が家の定番」と言われるような料理の提案です。

 人はいつも元気なわけじゃなくて、キッチンに立つ気力さえ湧かない日もあります。
 今はみなさん忙しいですから、つい外食したり、外で買ったお惣菜が食卓にのぼるときもある。外食も中食もたまにはいいですが、ありものでかんたんに料理がつくれたら、そのほうがいいような気がします。

「これは冷凍できます」とか「ここまでをまとめて作業しておくと便利です」とか、いい意味で「楽をする方法」を伝えることで、健康的な食生活をつづけてもらえたらいいな、と思います。
「体にいい」といくらわかっていても、手間がかかることを「頑張って」続けるのは難しいですからね。

_SSP7982.jpg――「毎日の料理」を大事にされるというポリシーが、自然なかたちで蒲原さんのオリジナリティになっていらっしゃいます。
 つくりおきのだしを使う代わりに、だし昆布を切って入れたり、干ししいたけやしょうがの皮の干したものを入れたり、味の出る素材をうまく使われて。

蒲原 「おばあちゃんの知恵袋みたい」ってよく言われます。たまには華やかなお料理もするんですけれど(笑)。

――お味噌の仕込みも教えていらっしゃる。

蒲原 ええ。皆さん、仕込んだ味噌はほうろうの入れ物に入れて、子どもを抱えるように大事に抱えて帰られます。

――楽しそう。ご自身で梅干もつくられるそうですね。

蒲原 ええ。日本人なら梅干くらい自分でつくりたいなと思って。
 生徒さんの中にも「教えてほしい」とおっしゃる方はいて、私も梅干づくりのクラスをやってみたいんですが、梅干は工程が多くて、日数もかかるのでちょっと難しいですね。

●「ご飯を炊いたこともありませんでした」

_SSP8387.jpg――食べることにはずっと関心がおありになった?

蒲原 実は25歳で結婚するまで、「食事」と言えば箸を持つこと以外したことがなかったんです(笑)。自宅通学、自宅通勤で、母が料理好きだったので、お昼のお弁当もつくってもらっていたくらい。
 母の料理がおいしかったので、舌が鍛えられてはいたみたいですけれど。

 新婚旅行から帰って「なにか食べるものをつくらなきゃ」となって、母に「どうしよう、私?」って電話したくらい、料理は何にもできなかったんです。

――意外ですね! ご飯を炊くこともなかった?

蒲原 ないです(きっぱり)。お米を研いだり、下ごしらえを手伝ったり、がんばって1品つくるくらいで、家族の食 事をひと通り自分で用意したことはありませんでした。

 でも主人には「料理をしたことがない」と知られたくなかったので、主人がリビングでテレビを見ている隙に別の部屋で料理本を読んで、キッチンに戻って調理して、「あれ?どうやるんだっけ?」とわからなくなったら、また別室に行って本を読んでキッチンに戻るというのを繰り返したりして。

――(笑)その調子だと食事の準備に1時間以上かかりませんか?

蒲原 3時間くらいかかりました!
 朝ごはんは品数が少ないのでなんとかなりましたが、晩ごはんはすごく大変でした。

――それこそ「打ち上げ花火」みたいな晩ごはんをつくられていた?

蒲原 そうですそうです。でも少しずつ、本を見なくても料理ができるようになり、半年くらいで、母につくってもらった料理もなんとか真似してつくれるようになりました。

●自分の料理で家族を健康に

_SSP8248.jpg蒲原 その半年で発見したことがありました。
 結婚したばかりの頃、主人は手に水いぼのようなものがあったんです。母に話すと「食事が偏っているから」と。たしかに、主人は1人暮らしが長く、その間ずっとコンビニ食や、外食もハンバーグやカレーと子どもが食べるようなものを好んでいました。

 ところが結婚後、私がつくる料理を食べるようになって、主人の水いぼがきれいに消えてしまったんですね。

 それで「食事ってすごい!」とはじめて気づいて。以来、出産・子育てを経て、より食事の大切さを考えるようになりました。

 主人が営業職で、接待でお酒を飲むことが多いのも、私が「食」にこだわらざるを得なかったきっかけです。なにしろ「生活習慣病のデパート」みたいなんですもの。

 本を見ながら「○○に効く食材」を食事に取りいれると、検査の数値が改善されていったり、子どもの急な熱でも、薬を使わずに食べ物で対応することができるようになったり。そんな試行錯誤の積み重ねが今の仕事につながっています。

――なるほど。

蒲原 息子が小学生の頃、PTAの保健委員をやっていて、そこで私以上に「食」に熱心なおかあさんと知り合ったのも分岐点でした。

「食事は大事」とみんなわかってはいるけれど、いざとなると外食したり、お惣菜を買ってきちゃうものだよね、という話になり、「おいしくて、かんたんで、体にいい料理を提案しよう!」と、私とそのおかあさんともう1人で、公民館を借りてお料理教室をはじめたんです。それが10年前くらいです。

――当時から「体にいい」というコンセプトがはっきりされていたんですね。

蒲原 はい。ただ、私は目標をもって何かをするタイプではなく、「料理研究家になろう!」
「先生になろう!」とは考えもしませんでした。
 公民館でお教室をしているうちに、生徒さんから「体にいい食べ物のことをもっと詳しく知りたい」というご要望が出てきたのと、私自身も少ない人数を対象に丁寧に教えてみたいと思うようになった、という自然な流れで自宅教室をはじめました。

(次回へつづく)

インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング
写真=下村しのぶ

プロフィール

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蒲原泉(かもはら いずみ)さん

Peaceful Room主宰

食生活アドバイザー。フードコーディネーター。食養士。二男の母。

家族の体調不良を食事で改善した経験などから食べ物のチカラに目覚め、、多方面で勉強を重ねる。
2005年より料理界の重鎮:檜山タミ氏に師事。

地域の公共施設で開いていた料理教室が評判となり、自宅教室を開くようになる。

「おいしい」「食べることが楽しい」「作ることも楽しい」を大切に、時候に合ったヘルシーな食卓を提案中。
KBCテレビ「アサデス。」に出演(~2006.9)
RKBラジオ番組に出演。雑誌やクリニックなどへのレシピ提供。西部ガスクッキング料理教室講師。直前組織の料理教室講師。食品メーカーのレシピ開発。