若宮ヘルシークッキングスタジオ主宰 若宮寿子(わかみや ひさこ)さん
テーブルコーディネートはお料理に合わせて
続いて、「うなぎのせ素麺」に添える錦糸卵を作っていきます。
「では、薄焼き卵を一人一枚ずつ焼いていきましょうか。丸いフライパンで大きくいっぺんに作る方法もありますが、私はこの四角い卵焼き器を使い必要な分を焼くようにしています。丸だと切った時に端の長さが不揃いになってしまいますが、四角だと、きちんと長さが揃いますからね。ちょっと面倒ですが、きれいな仕上げにはこちらが良いと思います」
なるほど、とうなずく生徒さんたち。若宮さんのお手本披露のあと、順序を決め、お一人ずつ焼いていきます。白身を切るようにといた卵をうすーく広げて、固まってきたところで箸一本を端から入れ真ん中あたりへすべらせ、クルっとひっくり返してもう片面もさっと火を通して出来上がり。きれいな完成に拍手が起こりました。
簡単そうに見えて実は結構難しい薄焼き卵作り。
「卵焼きは、慣れているご自宅のキッチンじゃないとやりにくいものの一つ。きっとみなさんご自宅では簡単にできると思いますから、また挑戦してみてください」
なるべく簡単な調理法を伝えるようにしているという若宮さん。でも、出来上がりを左右する“手間をかけるべき大切なポイント”と、“体で覚えたほうがよい作り方”は実習を交え、しっかりと伝えていきます。
レッスン中の失敗は貴重なチャンス!
次にメイン料理の「鶏手羽の黒酢煮」です。
フライパンで焼き色をつけ、余分な脂をクッキングペーパーで吸い取ります。そしてごぼう、ひたひたの湯、黒酢、しょうがを入れ、厚めのキッチンペーパーに穴をあけたものを落としぶたがわりにのせて、10分煮ていきます。これはあく取りの役目もしてくれるそう。
煮ている間に、他の作業が同時進行していきます。
「湯葉巻き南瓜の海老あん」に取り組んでいらした生徒さんが、電子レンジで柔らかくしたかぼちゃをつぶしたものを水で戻し広げた湯葉で包んでいくときに、湯葉が破れてしまいました。
「破れても大丈夫大丈夫、もう1枚こうして広げてのせれば全く気になりません。湯葉はこういうリカバリーが簡単なところが長所なの。繊細な食材に思えるけど、自由度が高いんですよ」
レッスン中の失敗は、リカバリー法をみんなで学べる貴重なチャンスなので大歓迎という若宮さん。そう言ってもらえると安心して失敗できます(笑)。
フライパンから黒酢のいい香りが広がってきました。10分経ち、今度は黒砂糖とねぎを加えまた10分煮ていきます。そして最後にしょうゆを入れてまた10分煮て出来上がり。
「フライパン一つでできて、10分おきに3回調味料を加えるだけなので簡単で覚えやすいでしょう?」
その間も、鶏手羽や黒酢の選び方など、食材の情報をどんどん伝えていかれます。その情報量ときめ細やかさは、質問が浮かばないほど多くて丁寧です。
自宅サロンならでは!お料理以外の知識も習得
お仕事で料理の撮影がよくあるという若宮さんが重宝しているというのは、どんな料理にも合う白い食器だそう。
食器棚には様々な形・大きさの白い食器がずらりと並び、すっきり整理されています。そんな中、目を引いたのは100円ショップの書類トレイを利用した整理術!カトラリーや大皿が、A4サイズのトレイに見事に収まっています。引き出し式でとても便利そう。
「書類トレイを食器棚の中で利用するなんて思いつきませんでした!」
「早速うちでまねしてみます」と生徒さんにも大好評。
素麺もゆがきあがりお腹もすいた頃、全てのお料理が完成。生徒さん全員で盛り付けセッティングが終わると、先生も一緒に座り試食の開始です。
「いただきます!」
試食の間に、生徒さんに「若宮ヘルシークッキングスタジオ」の魅力をお尋ねしました。
「和、洋、中、アジアン料理など、月替わりでいろいろなお料理が学べるのが楽しくて。毎月来ています」
「栄養のことや、テーブルコーディネートも教えてもらえるのが嬉しい」
「簡単で豪華に見えるお料理が学べて助かっています。家で作ると主人が喜びます」
など、ジャンルを超えた様々なレシピや、プラスαの情報や知識が得られるのが人気の秘密のようです。
加えて、収納方法などお料理以外でも家庭で役立つことを学べるのは自宅教室ならではですね。
自宅サロンは出会いの場
それにしても、毎月がらっと違う内容のレッスンを組み立て、レシピを考えるの は大変な作業なのでは。いったいどこからアイデアが湧いてくるのでしょう?
「もう、いつもアンテナを立てています!旅行や食事に行っても、自然と何かを得ようとしていますね。私にとってはお料理教室が主軸ですが、外でいろいろな仕事もしているので仕入れた流行をほどよく取り入れつつ、栄養士の料理だから・・とカタく思われないように、親しみやすくて新鮮な料理アイデアを提案できるように心がけています」
生徒さんにとって、長く通っても毎回新鮮な学びがあるのは大きな魅力。
そして「こう見えてわたし、おっちょこちょいなんです。生徒さんにいつも助けてもらってます」と笑う若宮さんの気取らないお人柄が、さらに魅力を高めているようです。
試食後は、生徒さんが後片付けを終えてレッスン終了となりました。
次回は若宮さんに自宅料理サロンオープン~これまでの道のり、そして長年続いている秘訣や栄養士として展開していらっしゃるご活躍を伺ったインタビューをお届けします。
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=村越将浩
プロフィール
若宮寿子(わかみや ひさこ)
栄養士
FCAJ認定フードコーディネーター
米国NSF HACCPコーディネーター
企業にて9年間栄養士として勤務し 出産を機に退職。
その後 フリーにて活動を始め1995年より 美味しく、ヘルシーをモットーに若宮ヘルシークッキングスタジオ主宰し今年15周年を迎える。
また、外食企業・ホテル・レストランのフードコンサルティングや新聞・雑誌・テレビから あらゆる世代に向け 健康と美しさをサポートするオリジナルレシピを発信中。
とっておきレシピ
とり手羽の黒酢煮(4人分)
夏といっても 冷房のきいた部屋では体の冷えが心配。暑さ対策と同様 冷え対策も大切な昨今。薬膳の体を温める食材(鶏肉・根菜・黒砂糖等)を組み合わせ 丁度30分で出来る主菜です。
材料
手羽先・・・8本
ごぼう・・・1/2本
ねぎ・・・1/2本
しょうが・・・大1かけ
いんげん・・・4本
黒酢・・・大3
黒さとう・・・大2
しょうゆ・・・大2
作り方
-
- 1.手羽先の内側に縦に切り込みを入れる。
- 2.フライパンで手羽先を焼き、出てきた油は拭き取る。
- 3.2にごぼう、ひたひたの湯、黒酢、しょうがを入れ10分煮ます。
- 4.3に砂糖・ねぎを加えさらに10分煮ます。
- 最後にしょうゆを加え10分煮て皿に盛り茹でたいんげんを添える。
湯葉巻き南瓜の海老あん(4人分)
かぼちゃには 美肌をキープするのに働くカロテンとビタミンEが豊富。紫外線による肌のダメージを予防するのにお勧めです。板ゆばは案外手軽に使える食材なのでチャレンジしてみて下さい。
材料
かぼちゃ・・・1/4個
アスパラガス・・・2本
片栗粉・・・大1
板湯葉(3分水で戻す)
むきえび・・・12尾
【A】
だし汁・・・200ml
しょうゆ・・・小1/4
塩・・・小1/4
砂糖・・・小さじ2
【B】
片栗粉・・・小さじ2
水・・・小さじ2
作り方
- 1.かぼちゃは種を取り濡らしたペーパータオルをかけラップをして600Wで6分電子レンジで加熱します。アスパラガスは色よく茹でます。
- 2.かぼちゃをスプーンですくいボウルに入れ片栗粉を加え混ぜます。
- 3.巻きすにラップをしき、戻した板湯葉を敷きかぼちゃを平らに広げアスパラを芯に巻いたら、ラップでくるみ3分レンジで加熱し、冷めたら切り器に盛る。
- 4.Aを合わせむきえびを煮てBでとろみをつけ3にかけます