若宮ヘルシークッキングスタジオ主宰 若宮寿子(わかみや ひさこ)さん
最初はママ友3人からスタート
――自宅料理サロンをはじめてもう15年とは素晴らしいですね!短大ご卒業後は栄養士として企業にお勤めだったと伺いましたが、はじめたきっかけを教えてください。
若宮さん 仕事は子供が生まれたあと退職したんです。その後はフリーで子供の成長にあわせたペースで仕事をしていたのですが、子供が小3の頃、学校の行事でお母さん達でやきそばを作ることになって。キャベツを刻んでいたら、速さと業務用のような切り方に皆さんにとても驚かれて、「一体どんな仕事をしているの!?」と聞かれてまして。普段私はぼーっとしている方なので、みんなびっくりしたみたい(笑)
仕事内容を話したら、「じゃあ私たちにもお料理教えて」と言われて・・。半年くらい迷ったのですが、ちょっとだけやってみようかな、と思って始めたんです。
最初はママ友3人からのスタートだったのですが、だんだん口コミで広がって・・15年と聞くと長いけど、あっという間のような気がしています。
――今はたくさんの生徒さんがいらっしゃいますね。どのような生徒さんが多いですか?
若宮さん 年齢層もいろいろで、埼玉や板橋区のほうから来て下さる方もいらっしゃいます。きっかけは、以前は口コミがほとんどでしたが、最近はホームページを見て、という方が多いです。
こんなにたくさんの生徒さんが集まって下さって長く続けられるとは思っていなかったですから、本当に自分でも驚いています。
先生と生徒という関係を超えて
――レッスンを拝見していると、みなさんとても仲が良さそうで楽しそう。先生と生徒という関係を超えたつながりがあるようです。
若宮さん 10年来通ってくださっているママ友の方々は、一緒にお料理やお弁当を作って子育てした仲間ですね~。
今はいろいろな生徒さんが来て下さっていますが、レッスンを通じてたくさんの交流が生まれていくのがとても嬉しいです。
そうそう、毎年8月はレッスンをお休みするのですが、その代わりお食事会を開催しているんです。去年は芝の『とうふ屋うかい』に行きまして、今年はマンダリンホテルの『SENSE』に行きます。
みなさん食べること・作ることに熱心で、私以上にお料理がお好きなのじゃないかしら(笑)。うちに来て下さってお伝えしたことがお役にたって、皆さんが健康でいてくださるのが何よりの宝です。
――たくさんの方に長年リピートされる魅力は何でしょう?
若宮さん うーん、そうですねぇ・・。簡単で見栄えの良い料理をお教えしているからかもしれませんね(笑)。
生徒さんは主婦の方が多いのですが、料理は毎日の仕事ですから、なるべく作る過程が面倒ではなく、だけど仕上がりが豪華に見えるものや、ちょっとひとひねりアイデアのあるものを考えて伝えるようにしているんです。
おもしろいのが、夕方になるとくしゃみが出るんじゃないか、ってよく言われるんです。生徒さんがお家でちょっと変わったものを作ってお夕飯に出すと、ご主人様やご家族から「これ、若宮さんところで習ったの?」って言われるそうで(笑)。
料理って自分磨きもできるし、家族の為になるから、みなさん胸を張ってお家を出やすいんじゃないかしら(笑)ここにくれば賑やかに仲間と楽しい時間も過ごしていただけますし。
あと、栄養のこともお伝えしています。食べたあと、体の中でどのような働きをしてくれるか・・といったことも含めて、食べて健康になる料理をお教えしたいと思ってます。
栄養士になった理由
――もともと料理がお好きで、食の仕事を目指していたのですか?
若宮さん そういうわけではないのですが・・。育った実家の裏にあった本家がお寺でして、行事がある時には人が大勢来るので、料理をふるまうのを手伝ったりしていました。そこでおばが茶道と花道を教えていたので、私も小学校に入る前から茶道をやっていました。
途中でやめてしまいましたが、おばたちと過ごした時間を最近になってときどき思い出すことがあります。意識したことはなかったですが、たくさんの人の食事を作ることやおもてなしの経験がどこか心に残っていたのかもしれませんね。
――栄養士という仕事を選んだ理由は?
それが・・(笑)
お寺の従兄(現住職)が仏像画を描いていたり、ご近所に著名な日本画家の森田曠平さんという方がいらして、そんな影響で私も絵が好きになり、その道に進もうかとも思ったのですが、もっと絵が上手い人は世の中にたくさんいることを知るにつれ、才能で仕事をするのは私には難しいと思ったんです。
それより、だったら何か資格を取ろう!と思っていた時に友達から「栄養士って資格があるよ」って聞いて、じゃあ栄養士になろうかと(笑)。短大に入ってからは、父からの「資格を取って生かせ」という言葉もあり、積極的に勉強しました。
その後インターンでホテルのヘルスクラブ内で栄養士の仕事を体験したのですが、そこで栄養士の仕事内容や可能性を知り、20年、30年先のビジョンが見えたので、ぜひやってみたいと思ったんです。
暮らしの軸はやはり家族
――ところで、自宅サロンの開設にご家族の反応は?
若宮さん レッスンは、主人が仕事、娘二人が学校へ行っている間に開催していたので、そう迷惑をかけることはなかったのですが、企業の仕事で、撮影が押してしまって子供たちに晩御飯をきちんと用意してあげることができなかったときは悪いな~と思いました。
かといって、撮影のときは仕事モードですから、企業、代理店の方々がたくさんいらして皆さん真剣な中、「はい、ごはんよ~」なんて言えないわけで。紙袋におにぎりをいれてそれとわからないようにして子供部屋に運んだこともありました。
それでも家族は、次々に何か新しいことを始める私をおもしろがってくれていたみたいで、子供たちもよく協力してくれました。懐かしい思い出です。
――ブログで、お嬢様が薬膳の勉強をされていると拝見しました。
そうなんです!今では娘は国際中医薬膳師の資格を取り、いろいろアドバイスしてくれてとても助かっています。今日のメニューの「身体を温める食材」もずいぶん協力してもらったんですよ。
――親子で協力しあってレシピを考えるなんて素敵です!
お母様から譲り受けた思い出の品
――長年運営を続けていらして、何か思い出の品はありますか?
若宮さん 教室をはじめるときに母が、「たぶん食器が足りないんじゃない?」と心配して、これをゆずってくれました。 沈金の松亀の銘々皿でもう古いものですが、その時の母の気持ちが嬉しくて。今ではお正月以外めったに使わないですが、大切にしまってあります。
ご両親の応援や、ご家族の理解と支えがあったからこそ続けてこれた、と話す若宮さん。お嬢様のお話をされるときは、優しいお母さんの表情を見せてくださったのが印象的でした。
次回は、若宮さんが手掛けているお仕事内容、そしてサロン運営やお仕事にかけている思いや工夫をお届けします。
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=村越将浩
プロフィール
若宮寿子(わかみや ひさこ)
栄養士
FCAJ認定フードコーディネーター
米国NSF HACCPコーディネーター
企業にて9年間栄養士として勤務し 出産を機に退職。
その後 フリーにて活動を始め1995年より 美味しく、ヘルシーをモットーに若宮ヘルシークッキングスタジオ主宰し今年15周年を迎える。
また、外食企業・ホテル・レストランのフードコンサルティングや新聞・雑誌・テレビから あらゆる世代に向け 健康と美しさをサポートするオリジナルレシピを発信中。
とっておきレシピ
とり手羽の黒酢煮(4人分)
夏といっても 冷房のきいた部屋では体の冷えが心配。暑さ対策と同様 冷え対策も大切な昨今。薬膳の体を温める食材(鶏肉・根菜・黒砂糖等)を組み合わせ 丁度30分で出来る主菜です。
材料
手羽先・・・8本
ごぼう・・・1/2本
ねぎ・・・1/2本
しょうが・・・大1かけ
いんげん・・・4本
黒酢・・・大3
黒さとう・・・大2
しょうゆ・・・大2
作り方
-
- 1.手羽先の内側に縦に切り込みを入れる。
- 2.フライパンで手羽先を焼き、出てきた油は拭き取る。
- 3.2にごぼう、ひたひたの湯、黒酢、しょうがを入れ10分煮ます。
- 4.3に砂糖・ねぎを加えさらに10分煮ます。
- 最後にしょうゆを加え10分煮て皿に盛り茹でたいんげんを添える。
湯葉巻き南瓜の海老あん(4人分)
かぼちゃには 美肌をキープするのに働くカロテンとビタミンEが豊富。紫外線による肌のダメージを予防するのにお勧めです。板ゆばは案外手軽に使える食材なのでチャレンジしてみて下さい。
材料
かぼちゃ・・・1/4個
アスパラガス・・・2本
片栗粉・・・大1
板湯葉(3分水で戻す)
むきえび・・・12尾
【A】
だし汁・・・200ml
しょうゆ・・・小1/4
塩・・・小1/4
砂糖・・・小さじ2
【B】
片栗粉・・・小さじ2
水・・・小さじ2
作り方
- 1.かぼちゃは種を取り濡らしたペーパータオルをかけラップをして600Wで6分電子レンジで加熱します。アスパラガスは色よく茹でます。
- 2.かぼちゃをスプーンですくいボウルに入れ片栗粉を加え混ぜます。
- 3.巻きすにラップをしき、戻した板湯葉を敷きかぼちゃを平らに広げアスパラを芯に巻いたら、ラップでくるみ3分レンジで加熱し、冷めたら切り器に盛る。
- 4.Aを合わせむきえびを煮てBでとろみをつけ3にかけます