「Backe分室no.605」Backe晶子(べっか あきこ)さん
チャレンジの場をつくりたい
――――晶子さんは、お料理教室のほかにもいろいろなお仕事をされています。
晶子さん メインはBacke分室no.605の主宰ですね。
ここは私の教室だけではなく、今、8名の先生たちに講座を担当していただいているので(パン、お菓子、ワイヤーアート、編み物、野菜、家づくり、写真など。詳しくはBacke分室no.605のサイトへ)、そのプロデューサー的な仕事もしています。
それから自宅カフェのオーナー、雑誌などへのレシピ提供、コラム連載(『ママズ カフェ』)もやっています。
分室で他の先生の講座がある日も、今のところは、キッチンで洗いものをしたり、サポート役としてなるべく立ち会うようにしています。
ここをはじめてすぐの頃は、講座に慣れていない先生もいらっしゃって、場がシーンとしてしまったり、話が横道にそれたまま時間だけが経ってしまうということがあったので、状況に応じて軌道修正をしたりもしていました。
でもオープンから1年が経って、先生たちもずい分慣れてこられたので、最近は私の出番も少なくなりました。
私の「お教室開業講座」の生徒さんがここでお試しレッスンのようなものをやられる場合もサポートをします。
カリキュラムやタイムスケジュールを一緒に考えたり、当日必要なものをリストアップしたり、講座開催までの段取りを整えるプロデューサー的な仕事ですね。
ここの先生の多くは、私が以前からお仕事ぶりを知っていた人たち。誰かに教えた経験のない方がほとんどでしたが、「教えてみない?」とお願いしました。
教室をやる場合に大切なのは、「つくる」と「教える」は違うと理解することなので、講師の方の個性やスタイルを尊重しながら、どう教えるのがよいのか、一緒に試行錯誤するのが今はすごくおもしろいです。
――Backe分室no.605はつまり、晶子さんが教室をやりたい人の手助けをする場、ということなんですね。
晶子さん ええ。この場所はもともと、自分の教室をやることより、教室をやってみたい方にチャレンジのチャンスをつくってさしあげたいという思いで借りましたから。
「伸びていく人」を見るのが楽しい
――「教室をやりたい人を支援したい」という視点が、晶子さんの独特なところです。なぜ「支援したい」と思われたのでしょう?
晶子さん おもしろいからですね!
――なるほど(笑)。
晶子さん お教室をやりたい方でもカフェをやりたい方でも、たとえば「レベル5」の力があっても「5」を出せる人って本当に少ないんです。プレゼンテーションの力さえあれば…と端から見てずっともったいない気持ちでした。
私はそういう人たちが伸びていくのを見るのがうれしいし、おもしろいんです。だからサポートしたくなるのでしょうね、きっと。
結婚前は私、アパレルの仕事をしていました。私自身は販売員としてけっこう成績がよかったのですが、自分の営業成績を評価されるより、新人教育の担当になって、指導した若い人たちが育っていくのを見るほうがずっと楽しかった。
今の分室の仕事もその延長線上にあるような気がします。
――1人1人の能力を、うまくアピールする方法を教えることがお好きなんですね。
晶子さん そうですね。いい素材をもっているのに言い方が悪いとか、表情が硬いとか、それだけのことで業績が上がらない。自分のいいところ・悪いところって、本人はなかなか気づかないものですから。
私が指摘してあげると、ちょっとしたことで急に伸びてしまうからおもしろいんです
アパレルを辞め、パンづくりにハマる
――「食」に興味を持たれたのは結婚されてから?
晶子さん アパレル業界は忙しくて、食べる時間があったら営業!でしたからね(笑)。結婚してはじめて、食も含めた「暮らし」全般に目が向いた感じです。
生まれてはじめて書店の料理本コーナーに足を向けたときにパンづくりの本に出会って。忘れもしません、堀井和子さんの本でした。この本で人生が変わりました。
パンづくりをしたいというより、「堀井和子さんになろう!」と思いましたから。
パンづくりの教室に通うことなく、堀井さんのレシピを読みながらひたすら試行錯誤をしていました。
――なるほど、だから、晶子さんのデモンストレーションは具体的なんですね。独学で失敗を実際に経験された方ならではの教え方だと思います。
晶子さん 失敗はいろいろしましたねー(笑)。でも失敗も私の財産です。私の失敗談をお話すれば、生徒さんは同じ失敗をしなくてすみますよね。
当時の私には、堀井さんのレシピを読解しきれないところがあって、だからこそ「なんで!?」と執着して何度もトライして。それでもうまくいかなくて、という段階がありました。
その後、2、3年のあいだに、私の知らないパンの本はないというくらい、買いあさりました。それで土器典美さんの本にたどり着き、「みんなのやっている通りにやらなくてもいいんだ」と気づいてから、なんだか展望が開けました。
サロン開業が今、おすすめです
晶子さん 私はカフェ開業とお教室開業と両方の講座をもっていますが、今はサロン開業のほうが圧倒的におすすめです。
――それはなぜでしょう?
晶子さん 単純に、教室のほうが利益が出やすいですね。
カフェをはじめるための先行投資はサロンに比べると1桁多いですし、先行投資を考えず日々の収益だけ見ても、カフェで利益をあげるというのは本当に難しいことですから。
私も自宅カフェをやっていますが、カフェは名刺代わりと考えています。儲けを出そうとは思っていません。すてきなカフェを見ていただいて、収益を上げるのはBacke分室no.605の講座で、そういうビジネスモデルなんです。
コーヒー好きで、お菓子が好きで、雑貨が好きで、カフェ空間が好き!というだけでお店を出しました、という人は意外と多いですが、はじめてみてから「お客さんが来ないな…」となってしまう。お客さんが来てくれる仕掛けをしっかり考えてつくらないと、商売として成り立ちませんから、カフェは実はすごく難しいと思います。
自宅カフェは、レッスンの「時間」、サロンの「居心地」に、生徒さんが代金を払ってくれますから、初期投資も少ないですし、在庫を抱えるリスクはもちろんありません。集客の方法さえ間違えなければリスクをとらずに収益を上げることができるんです。
自分の特色を知って、自分を商品化する
――生徒さんはどうやって集めればいいのでしょう。
晶子さん 「ここでしか得られない何か」をつくってください。
サロンをはじめるときに一番大事なのは、自分の特色を知ることだと思います。
私のお教室開業講座でも「晶子さんみたいにおしゃべりがうまくないから…」とおっしゃる方がいますが、私は話すのが得意だから、おしゃべりに力を入れた教室のスタイルにしているだけ。私がもしコルドンブルーを出ていたら、勉強したことを生かして技術をしっかり教える教室にしますもの(笑)。
自分の得意なことは何かを考えて、それを生かす戦略を考えれば、おしゃべりがうまくなくても生徒さんは集まります。
――自分をどう商品化するか?ということですね。
晶子さん ええ。あれこれ手を広げなくても、1つでも商品になる売りがあれば十分です。
――Dreamiaサロンには「自宅サロン開業Lesson」というコーナーがあるのですが、そこで読者の方に最初にご紹介したのが「サロンはサービス業です」ということでした。
晶子さん ほぉ。
――サロンをはじめるのはすてきなことだけれども、それだけじゃなくてビジネスとしてのシビアな問題、当日のキャンセルをどうするか、クレームがきたらどう対応するか、赤字を出さないようにするには?といった問題も避けて通れません。
晶子さん その通りですね。私は会社勤めが長かったので、人間関係のいいところも悪いところもしっかり見ています。それも自分の強みだと思います。
――サロンを開業される前に、アルバイトでもいいので何かサービス業を経験されたほうがいいと思うのですが、いかがでしょう。
晶子さん 私も本当にそう思います。
サロンをはじめられるような方は、気持ちがやさしくて、「世の中に悪い人はいない」と信じていらっしゃる方が多いんですね。
でも世の中には、残念ながら一定の割合で悪い人はいます。サロンをはじめてたくさんの人に会えばそれだけ、悪い人と出会う確率は高くなります。
「悪い人はいる」と知っていないと、自分が悪いと思ってしまうのですが、それではあまりに悲しいですからね。
社会に出て働いて、いい人も悪い人も、世の中にはいろんな人がいると体感することは、お教室をはじめられるにあたってとても大事だと思います。
(次回へつづく)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ
プロフィール
Backe 晶子(ベッカあきこ)さん
完全予約制の自宅カフェ「Backe」オーナー&お教室プロデューサー。
結婚を機に独学ではじめたパン作りをきっかけにHPを立ち上げ、さまざまなカフェイベントへの参加、レシピ本の出版を経て、 2007年茨城県にある自宅を改装し、1日2組限定、完全予約制のカフェ「Backe」をOPEN。
カフェではじめたパン教室が好評だったため 2009年からは台東区上野にお教室専用のスペース「Backe*分室no.605」を構え、、パン教室にとどまらず「お教室開業講座」「自宅カフェ開業講座」など「好きな事を仕事にしたい」女性に向けての講座を開催中。
Backe分室no.605
晶子さんの「お教室開業講座」「カフェ☆PAN講座」のほかに、8人の先生方による講座が開催されています。詳しくは晶子さんのご自宅カフェBackeのホームページから、「Backe分室no.605について」をクリックしてください!
レッスンをご一緒したお2人のサロン情報です。
太田有羽子さん: 東京・八王子の自宅パン教室「Maman Reve(ママン レーブ)」主宰。
結城なお子さん:東京・調布の自宅パン教室「Atelier705」主宰。
とっておきレシピ
Bache ベーグル(4人分)
材料
スーパーキング(最強力粉)…200g
カメリヤ…100g
インスタントドライイースト…小さじ1/2
三温糖…大さじ2
塩…小さじ1/2
ぬるま湯(35℃程度)…175cc
三温糖(ゆでる時用)…大さじ2
作り方
- ボウルに計量した粉をふるい入れ、塩と砂糖をはなしていれる。
ボウルを傾け、砂糖とそのまわりの粉を軽く混ぜながらくぼみを作り、そこにぬるま湯をそそぎイーストを振り入れ指で溶かすように粉と混ぜ合わせていく。
ひとまとまりになったら台の上にうつし手のひらに体重をかけて、押しのばすようにしっかりとこねる。 - こねあがったら軽く手で押し平たい円にしてスケッパーで4等分する。
- 切り口を包み込むように半分に折りさらに半分に折って丸め、表面に張りをもたせてとじめを下にしてしっかりととじる。きつく絞ったぬれ布巾をかけ10分のベンチタイムをとって生地を休ませる。
- 生地を台の上に取り出し軽く手で押しガスを抜き、平たい楕円にして三つ折りにして均一の太さになるように転がしながら、約25cmの棒状にする。生地の端と端を合わせてしっかりとめる。
- オーブンペーパーを敷いた天板の上に軽く茶こしでコーンミール(分量外)を振り、生地を並べきつく絞ったぬれ布巾をかけ、あたたかい場所で2倍にふくらむまで約35~40分発酵させる。
(発酵終了時間に合わせて、なべにお湯を沸かして三温糖を溶かしておく。) - ぐらぐらと煮え立ったお湯の中に生地をひとつひとつ入れていき、入れた順にひっくり返し、水気をきって天板に戻す。200度に余熱しておいたオーブンで約20分こんがりと焼き色がつくまで焼く。
あっさりミネストローネ(約4人分)
材料
ブロックのベーコン…100g
えのき…100g
玉ねぎ…1個
にんじん…1本
にんにく…1かけ
キャベツ…1/4個
サラダ油…小さじ1
塩…小さじ1/2
スープ…4カップ
(お湯4カップにコンソメキューブ2個を溶かしたもの)
パルメザンチーズ…適量
作り方
- ベーコンとにんじんは1cm角くらいに切り、キャベツは粗いざく切り、玉ねぎとにんにくはみじん切り、えのきは2cmくらいの長さに切っておく。
- 鍋にサラダ油を熱しにんにくをこげつかないように炒め香りが出てきたら、ベーコン、玉ねぎ、にんじんを炒め、野菜がしんなりとしたらキャベツとスープを加え、軽く煮込む。
- 塩・黒こしょうで味を整えて、仕上げにえのきを入れ、ひと煮たちしたらできあがり。
- 器に盛り、お好みでパルメザンチーズをふって食べる。