『La vie delicieuse Yoko’s Cooking Class』平島陽子(ひらしま ようこ)さん
床から天井までの大型収納
平島陽子さんのサロン「Yoko’s Cooking Class」の特筆すべきポイントの1つが収納。
リビングもダイニングもキッチンも、床から天井までの壁面を有効に使った大型収納になっていて、しかも小物の整理に使う箱類は白か黒、もしくはクリアなアクリル素材やカゴなどテイストが揃えられているので、とてもすっきりしています。
「これはここに置く」という指定席を決めているから物も迷子になりません。
平島さんのレッスンは、テーブルコーディネートまでトータルに提案をする構成ですから、お皿やカトラリーはもちろん、テーブルクロスやマット用のリネンや小物がたくさんあるのですが、よく考えられた収納のおかげで空間がとても整然としています。
ダイニングスペースは今日のテーマの「バレンタインデー」に合わせて、ハートをモチーフにしたお皿や小物がディスプレイされ、落ち着いた色使いのなかにも赤やピンク、ゴールドが効果的に使われ、甘い雰囲気をただよわせています。
(お手洗いに用意されたお客様用のハンドタオルまでハートの刺しゅう入りという徹底ぶりにもびっくり。)
平島さんは、レッスンのテーマにそってペーパーアイテムまで毎回ご自身で手づくりされるのですが、今回お1人お1人の席に置かれたレシピカードは板チョコをイメージしたデザイン。とてもかわいらしいアイデアです。
お店の厨房のように指示が飛び交うキッチン
キッチンでは下ごしらえが終わり、炒める人、焼く人、材料を和える人、クッキーを仕込む人…生徒さんがそれぞれの持ち場で仕事をてきぱきとこなしています。
平島さんはご自分でも必ず何かしらの作業をしながら、生徒さんの動きに目を配り、「塩こしょうは多めにね」「火はもうちょっと強火がいいかな」と指示を出します。
泡立てていたメレンゲのボウルを手に平島さんがコンロに向うと、生徒さんが「なになに?」と集まってきました。いったいコンロで何を?
「メレンゲを茹でますね」と、泡立てたメレンゲをみかん大にお玉ですくい、煮立った湯の中へ。するとメレンゲが、みるみるふくらんでいきます。
生徒さんも「へぇー茹でるんですね」「おもしろい!」と盛り上がります。
このメレンゲ、デザートのチョコレートスープ用ですが、どんなふうに使われるのかはまったくわかりません。仕上がりがどうなるかワクワクします。
続いて平島さんが取り掛かったのはフルーツサラダの盛りつけ。サラダ係が1人、いつの間にかサポートしています。このあたりの采配がとても自然。
「いちご、ラズベリー、りんごと、バレンタインっぽく赤いフルーツをそろえました。マスカルポーネと生クリームのソースで和えます。食べる直前に混ぜたほうが色がきれいに仕上がりますよ。秋は柿でやりましたね」
「先生、これは裏返しますか?」とメレンゲ係の質問に「あ、もう大丈夫です。それであげてください!」と平島さん。作業台の逆サイドからは「ポテトの重ね焼きのほう、炒めたたまねぎと牛肉にビールを加えてくださーい」と妹さん。
質問と指示の声がキッチンに飛び交います。その様子は、お料理教室というより、レストランの厨房のようです。もちろん、飛び交っているのはプロの厨房のような怒号ではありませんけれど(笑)。
先生が料理人に、生徒さんがお客様に
11時30分。教室のオープンからほぼ1時間で、前菜の盛り付けがはじまります。
平島さんがあらかじめコーディネートしたテーブルに8人分のプレートが置かれ、作業台ではポテトの重ね焼きが、仕上げ焼き前の飾りつけに入っています。
最後に薄切りじゃがいもを「花びらのように」飾るのですが、この「花びらのように」に生徒さんたちは少し苦戦されていたようですが、なんとか完成! あとはオーブンにお任せです。
作業があらかた終了すると、「じゃあそろそろ、みなさんお席に着いてください!」と平島さん。その合図で、生徒さんはエプロンを取り、ダイニングテーブルへ。
「みなさんお疲れ様でした」という平島さんの言葉から、試食の時間になるのですが、驚いたのは、テーブルに着いた瞬間から生徒さんはお客様に、平島さんと妹さんがレストランのシェフとスタッフにと、すっかり役割を変えてしまうことでした。
「こちらはクランベリーのジュース。前菜はひよこ豆とサルサ、ワカモレ、3種のディップです。タコスもつけましたがお野菜で召し上がっていただいてもおいしいと思います」と、お料理の説明をされると、それ以降はおしゃべりは少なめ。
生徒さんからの質問があればお返事はされますが、それ以外、平島さんは厨房の作業に没頭されます。みなさんがお料理を食べ始めたら料理人に変身するのです。
やさしく、手抜きがなく、サービス精神旺盛
この日いらっしゃった生徒さんで、一番古くから来ていらっしゃったのは17年めの方。最近通いはじめた方でも3年めと、みなさん長く通っていらっしゃいます。
「先生はとにかくやさしいです。みなさんにまんべんなく気を使われます」
他の方にもうかがってみましょう。平島さんの魅力は?
「先生は甘いです」 甘い、ですか? 「遅刻しても許してくれるし…(笑)」とおっしゃるのは今日一番遅れてみえた生徒さん(名誉のために書きますと、どうしても断れない来客がおありで、「遅れても来たい!」と出席された熱心な生徒さんでした)。
ほかにも、
「先生の魅力はセンスの良さです。それから何事にも手を抜かれないところがすごいと思います」「お話がおもしろい。いろんなことを知っていらっしゃって、どんどん教えてくださる」「お料理以外にも趣味が多くていらっしゃるし…ちょっとミーハー(笑)。そこが先生の一番の魅力かもしれない」「サービス精神が旺盛!」
平島さんが手抜きをされず、サービス精神旺盛なことは、この日、実感しました。
生徒さんが試食されている横で、平島さんがテーブルに出すものとは別に、お弁当箱のようなアクリルのボックスに料理を詰めていらっしゃったので…これは?とうかがうと、「今日、風邪でいらっしゃれなかった方がいるので、お連れの方に持ち帰っていただくテイクアウト用です」と。
リボンなどを使ってきれいにかわいらしく飾られていて、ほんとうに何事にも手を抜かれないのです。
クッキーもお1人ずつにお土産用(リボン付き!)が準備されていました。
実習を終えてからのレシピ説明
生徒さんの試食が進みデザートタイムになると、平島さんがコーヒーを片手に仲間入り。近況をおしゃべりしながら、自然にレシピの説明をはじめます。
つくりかたを大まかに振り返りながら、レシピのアレンジについてポイントを丁寧に解説します。たとえばこんな感じ。
ビーツのビシソワーズ:ビーツはフレッシュでもいいけれど、缶詰で十分。缶詰の場合は長く煮込むと色が悪くなります。他の材料を煮た後で、最後の10~15分に加えればきれいに仕上がります。
3種のディップ:ひよこ豆はドライパックだと固め、水煮缶はしっとりめ。ワカモレにはお嫌いじゃなければパクチーを入れてもおいしいですよ!
ポテトとビールの重ね焼き:味付けは塩こしょうだけなので、ジャガイモ、たまねぎ、牛肉と、それぞれ炒めあがる段階でしっかりと塩こしょうしてください。塩はご家庭ごとに味が違うので、味見をしながら。
紫玉ねぎのマリネ:普通の玉ねぎでもできますが、その場合は色味にケッパーやオリーブを加えるといいと思います。あまったら刻んでサラダに入れたり、タルタルソースに入れても。
実習作業を思い返しながらつくり方を説明してもらうと、「あの工程にはそういう意味があったのか」と腑に落ちやすいものでした。
こだわりキッチンアイテムいろいろ
平島さんの使い慣れたキッチンアイテムです。コメントとともにご紹介します。
シリコン(orka)mastrad フルシリコンスプーン。
キッチングッズは白か黒かシルバーがメインですが、このスプーンの黒は使いすぎてボロボロだから写せません(笑)。(←本当にボロボロになるまで使われていました)
クイジナートのブレンダー。
好きだったブラウンの製品が廃番になった後、探していたら今のところこれがいちばん使いやすかった。
オリーブオイル「サルバーニョ」。
東京・代官山のリストランテ・カノビアーノの植竹さんが使っていたもの。何年か前に食べに行ったときにとても気に入って。福岡のよく行くチーズ屋さんで扱っているので、今はそこで買っています。
それから、さりげないながらとてもいいアイデアだと思ったのがこちら。平島さんは生徒さん用に筆記用具も用意されていました。メモしようと思ったら「ペンがない!」ということってありがちですから、これは助かります。
(次回へつづく)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ
プロフィール
平島 陽子さん
La vie delicieuse Yoko’s Cooking Class 主宰
西部ガスクッキングクラス常任講師
福岡にて料理教室を主宰。
結婚を機におもてなし好きが高じて教室をスタートさせ、主宰歴、約22年となる。
とっておきレシピ
ポテトのビール重ね焼き
材料
オリーブオイル・・・大さじ4~5
ジャガイモ・・・大4個
玉ねぎ・・・1個
牛肉(薄切り)・・・200g
ビール・・・1/2カップ
塩・コショウ・・・適量
パセリ、みじん切り・・・少々
作り方
- ジャガイモは大きい時は、半分に切り、3mm程の薄切りにして水にさらしてから、水気を切っておく。
- 玉ねぎは薄切りにする。
- 牛肉はひと口大に切る。
- 鍋にオリーブオイル(大さじ2)を熱し、ジャガイモを2回に分けて入れ、透き通るまで炒め、塩・コショウをして取り出す。オリーブオイル(大さじ1)を足して、玉ねぎも炒める。
- 玉ねぎを取り出し、バター(大さじ1)を足して熱し、牛肉を強火で炒め塩・コショウをして取り出す。
- 牛肉を炒めた後の鍋に、ビールを注いで木べらで鍋底をこすりながら旨味を溶かしながら、半量になるまで煮詰める。
- 耐熱性の器に、炒めたジャガイモの1/2を入れ、上に玉ねぎ~牛肉をのせ玉ねぎ~牛肉~ジャガイモの順に重ねる。
- ビール入りの煮汁を上からかけ、アルミホイルでぴったりおおう。
- 180℃のオーブンに入れ、20分ほどしたら、アルミホイルを取り除き表面に焼き目がついて汁気がなくなるまで15-20分焼く。
仕上げにパセリをふる。