『La vie delicieuse Yoko’s Cooking Class』平島陽子(ひらしま ようこ)さん
福岡の市街地から車で20分ほどの閑静な住宅街に、今月のサロネーゼ平島陽子さんが主宰する「La vie delicieuse Yoko’s Cooking Class」のご自宅サロンはあります。
「いらっしゃい!どうぞー」と、平島さんの弾む声に促され2階リビングに入ると、窓が多く取られたその空間は、あふれるばかりの光! 広い部屋の隅まで陽光が届き、とにかく明るいのです。
取材にうかがった2月のテーマ「バレンタインデー」に合わせ、そこここにハートやピンクのアイテムもたくさん。「普段はもうちょっとシンプルな雰囲気ですけど、やるならとことん甘い雰囲気もいいですよ」と、平島さんはとても楽しそう。
サロンの名前に「La vie delicieuse=おいしい生活」という言葉が入っているのもうなずける、暮らしを楽しむポジティヴィティがあふれています。
来た方からどんどん実習がスタート
キッチンに向かう平島さんについていきましょう。
生徒さんがいらっしゃる前から、すでに下準備がはじまっていて、コンロに置かれた鍋からは湯気があがり、平島さんもミキサーを回していらっしゃったり、アシスタント役を務められる妹さんも下準備にお忙しそう。
キッチン手前の10人掛けのダイニングテーブルの上は、お花、キャンドル、そして手づくりのレシピカードに至るまで、完璧なバレンタインコーディネートが仕上がっています。 料理もテーブルも生徒さんと一からつくるという、一般的なスタイルとは少し勝手が違うようです。
レッスンスタートの10時半になると、まずお1人の生徒さんがいらっしゃいました。「おはようございまーす」 リビングからキッチンにいらっしゃる先生に声をかけると、カバンからエプロンを取り出し、スリッパをパタパタとならしてキッチンへ。
「あ、おはようございまーす。そういえば、前回はあの後どうなったの?…」と平島先生は自然に会話をはじめます。そして頃合いを見計らって、妹さんが「じゃあジャガイモをスライスしてもらいましょうか」と生徒さんに指示を出し、「3ミリぐらいの薄切りですね。切ったものはこちらに」と、水が張られたボウルもセッティング。
トントンと生徒さんが切りものをはじめる頃、もうお1人がやはり「おはようございまーす」と遠くから声をかけ、いそいそとエプロンを着けながらキッチンに入ります。
「先生、いつもこんなふうに、来た方からどんどん調理をはじめてしまうんですか?」とうかがってみます。
「そうなんです。皆さんが揃うのを待っていると、スタートが遅くなってしまいますから。それに、料理をつくって試食した後でレシピの説明をしたほうが、作業の全体の流れが頭に入りやすいと思いますから」と平島さん。
「きっちりしたお料理教室なら全員が揃ってからはじめたほうがいいですが、この教室では違ってもいいかな?と思っています。私のレッスンに何を求められているかは、生徒さんによっても違いますから、いろんなご要望にこたえられるように、今のスタイルになっています」
どんなお料理ができるの?
そんなことをお話しているとまた、今度はお2人組が到着。「おはようございまーす」とこちらもエプロンを手に小走りでキッチンの作業テーブルに向います。
レシピの解説はまだされていないので、どんなお料理ができるのか? 取材する私たちはもちろん、実は生徒さんもよくわかっていません。
レシピのペーパーがキッチンの吊り戸棚に貼られているので、それを見ればやるべき作業はわかりますが、生徒さんも「どんなものができるか全然わかりませーん」とちょっと楽しげ。
ペーパーを見る限り、メニューは前菜からスープ、デザートまでなんと8品! どうりで、作業台にはジャガイモ、紫たまねぎ、トマト、アボカド、いちごにりんごと食材がいっぱい。どれも新鮮でおいしそうです。
これまでのところ4人の生徒さんが来ていますが、あと4人がみえる予定です(9名の予定が風邪でお1人がお休みでした)。8人分の8品の料理を仕上げるとあって、キッチンはすでに大忙し。
平島さんはキッチンの真ん中に置かれた作業台で、生徒さんとの会話を楽しみながらも、ご自身の作業をきびきび進めていきます。デザートも手づくりされるので、工程がとにかく多いのです。
楽しい会話が絶えないのは、どうやら平島さんの合いの手が絶妙だから。とっても聞き上手でいらっしゃいます。
スープも前菜もメインも同時進行していて、生徒さんが混乱しがちなところを、「はい、○○さんはこれを切って」「じゃあ○○さん、コンロで炒め物をお願いしようかな」とスムーズにガイドしているのはアシスタント役の妹さんです。
妹さんは下ごしらえした食材を冷蔵庫から出したり、作業の指示を出したり、合間に洗いものもこなし、その目配りはとてもあざやか。
途中参加も、時には試食だけもOK
そうこうするうちにスタートか ら15分経過。生徒さんはまだ4名のままです。いつも集合はこんな感じなのでしょうか?
「そうですね。主婦の方は日常的に家事をされてますから、材料の切り方とかはわかりますよね。だから途中から参加される方もいらっしゃいます。〝できたかな?〟なんて、試食だけいらっしゃることがあってもいいと思いますし」と平島さんはニッコリ。
なるほど、おもしろいスタイルです。
レッスンを拝見していて気づいたのが、あとから来る方に仕事が分担されていくその流れのスムーズさです。
気の置けないお仲間が集うリラックスしたお教室ですから、「ごめんなさーい」と少し反省モードで合流すれば問題はないのですが、それでも遅れた方はちょっと居心地が悪いはず。そのあたりを、平島さんも妹さんも、生徒さんも、とても自然に受け入れられているやわらかい空気感が印象的でした。
「これこれ、京都の太秦映画村の前にある中華料理屋さん(菜館Wong)のラー油、いただいたの! テレビで紹介されて以来、行列になってる話題のラー油」とうれしそうな平島さん。
レッスン中はあちこちで、「どこどこのあれがおいしい」「テレビでやってたあれを取り寄せた」というやりとりが展開していて、みなさんかなり情報通でいらっしゃる。「私けっこうミーハーなんです!」と平島さんが言うと、生徒さんが大きくうなずかれているのが印象的でした。
(次回へつづく)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ
プロフィール
平島 陽子さん
La vie delicieuse Yoko’s Cooking Class 主宰
西部ガスクッキングクラス常任講師
福岡にて料理教室を主宰。
結婚を機におもてなし好きが高じて教室をスタートさせ、主宰歴、約22年となる。
とっておきレシピ
フルーツサラダ(4人分)
材料
りんご・・・2個
レモン汁・・・適量
ラズベリー
いちご・・・1パック
(A)
マスカルポーネ・・・1カップ
生クリーム・・・1カップ
砂糖・・・大さじ4
作り方
- リンゴは皮ごと薄いくし形切りにして、レモン汁をかけておく。
- ボウルに(A)の材料を入れ、ゴムべらで静かに混ぜ合わせる。
- 器に(1)とラズベリー、へたを取ったいちごを盛ってマスカルポーネソースをかける。