『栗田クッキングサロン』主宰 栗田 登志子(くりた としこ)さん
安心して召し上がっていただくために
「和キッシュ」と「春野菜のいちご酢ジュレ」作りから実習は始まりました。
「アスパラは下の方をこれくらい剥いて・・他のメニューでも使うので3分の1くらい残してください。ラディッシュは先をつけたままこうやって切って・・うどの皮も残しといてくださいね~」
栗田さんは一人ひとりのレベルに合わせて、また、作業量が同じになるように気配りをしながら細かく伝えていきます。でも、その手元は次の行程の細かな準備をしていますから、これはもう神業!?
全方向への気配り目配りにびっくりしている時に、ピンポーンとドアチャイムが鳴り、お届け物のようです。
届いたのは、このレッスンのあと開催される「お持ち帰りレッスン」用の新鮮な”いかなご”。兵庫ではこの時期いかなご漁の最盛期を迎え、名物「いかなごの釘煮」をどっさり作るのです。
「よかった、いかなご届いたわ~」
今日のレッスンで捌く鯛と同様、この日の早朝に馴染みの市場に行き注文したそう。栗田さんは食材の仕入れにはとても気を配っていらっしゃいます。
「レシピは、家で作ってもらえるように身近な材料を使うようにしていますが、レッスンで使うお肉、お野菜は全て国産にこだわり、お魚は早朝 卸売市場に行って仕入れます。野菜は全てオゾン処理してから使っています」
ここまで徹底するのは、毎日の食生活の大切さを広めたい、そして、生徒さんは家族同様、と考えているから。
安心して召し上がっていただきたい、と言う栗田さんのこだわりと思いが伝わります。
鯛を丸ごと一匹!
楽しい会話が弾みながら、調理は順調に進んでいきます。そしていよいよ鯛を捌く段階なりました。まずは栗田さんのお手本です。
「まずは私が捌きますね。鯛はこういうところもウロコが残りやすいので気をつけて。そして、どんな魚でもこの筋を切ると扱いやすいんです」
生徒さんの見やすい角度に気を配りながら、丁寧な解説入りで見事な3枚おろしの完成。続いて生徒さん達が、お手本を参考にマイ包丁で捌いていきます。
思うように捌けない生徒さんには、栗田さんが上から手を添えて一緒にやることも。
真剣な表情で包丁を握る生徒さん達。丁寧におろしていき、笹巻き塩釜、桜蒸し、しぐれ飯用の切り身が見事に完成しました!
尾頭付きの鯛を丸ごと1匹捌くのはやりがいも格別。レッスンの満足度も上がります。
「皆さんきれいにできましたね!では、これを笹の葉で挟んで半紙で包んで・・」
鯛も捌き終わり、笹巻き塩釜をオーブンに入れたら、さぁ、調理も後半になります。
「では次に、冷蔵庫に入れていたキッシュの生地を伸ばして焼きましょう!」
生徒のみなさんの作業スピードも加速し、質問も積極的に飛び交います。その都度栗田さんは丁寧に答えていかれ、笑いも交えながら、和気あいあいとレッスンが続きます。
毎回新しい発見がある
ここで、生徒さんに『栗田クッキングサロン』の魅力を伺ってみました。
「きっかけは、日本料理を習いたくてインターネットで探していたところ、ホームページを見つけたんです。簡単でこれなら私も作れる、と通い始めて、もう4年くらいです。長く通っても毎回新しい発見があるんですよ~。家でも作るので、主人も娘も楽しみにしてくれています」
「見た目は豪華なのに簡単な料理を教えてもらえるのがいいですね。それに、とにかく先生の知識がすごいんです。コツをたくさん教えてくれるし、わからないことも聞きやすくて」
「友人の紹介で通い始めました。なかなか休めない仕事なんですけど、月に1回は絶対来たくて、なんとか時間を作って来るようにしています。先生のお人柄も魅力ですし、レッスンは息抜きになります」
お一人が話すたび、皆さんが「そうそう」と、うなづかれます。
それを聞いて照れて恥ずかしそうな栗田さん、恐縮するようにちっちゃくなってしまいましたが・・”料理で人を幸せにしたい”その思いはきちんと生徒さんに通じているようです。
笑顔は満足のあかし
「みなさん、お疲れさまでした!それでは和室の方へどうぞ。順にお料理をお出ししていきますね」
この「日本料理特別コース」では、試食は隣接する和室でコース仕立てで召し上がっていただくのです。栗田さんが一品一品仕上げて、お出ししていかれます。
「他のコースはこのテーブルで召し上がっていただくのですが、このコースだけこうしています。ちょっと非日常の雰囲気を味わっていただきたくて」
手際良く、先付け、お椀物・・と仕上げて順番に栗田さんがお出しするたび、「きれい!」「おいしい~」と生徒さんの声が聞こえます。
お店のようにコース仕立てでいただけるのは、日々家事や仕事で忙しい生徒さん達に大好評。レッスンに来ることが「気分転換」「癒し」という生徒さんが多いことに納得です。
ゆっくり食事と会話を楽しんだあとは食器を片づけて終了です。
「ありがとうございましたー!」
お帰りの時の生徒さんの笑顔は満足のあかしですね。同時に、栗田さんの活力のもとでもあります。
「こちらこそありがとうございました!みなさん、お気をつけて」
栗田さんの思いや気配り、料理の楽しさがたくさん詰まったレッスン。12年間も続き、たくさんの生徒さんに支持されている理由がわかったような気がしました。きっとこれからも多くの「料理好き」を生み続けていくのでしょう。
次回は、お教室オープンのきっかけや工夫など、栗田さんのインタビューをお届けしますのでどうぞお楽しみに!
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=伊藤裕司
プロフィール
栗田 登志子(くりた としこ)さん
『栗田クッキングサロン』主宰
1964年生まれ 武庫川女子短期大学英文科卒業。
その頃から本格的に『フランス家庭料理』『家庭でできる中華料理』『パン専科』など習い始め、『基礎料理及び懐石料理』を3年間に亘り習得。その後助手を務めながら知識をより深める。
女子栄養大学 専門料理過程を終了し、1999年「栗田料理教室」開設。現在は「栗田クッキングサロン」として教室を主宰。現生徒数 約200名。
2010年より携帯電話(docomo、au、softbank)公式サイト 会員制『ケータイ料理教室』のレシピ、動画制作及び監修。現在会員数約5000名
教員認定師範1級 食育インストラクター 1級 フルーツ & ベジタブルJ.マイスター 西日本料理学校協会会員校
とっておきレシピ
鯛の桜蒸し
材料
鯛切り身・・・適宜
【A】
道明寺粉・・・50g
出し汁・・・50cc
塩・・・小1/8
砂糖・・・小1
食紅・・・少々
【銀あん】
出し汁・・・200cc
みりん・・・小1
うすくち醤油・・・小1
塩・・・小1/8
くず粉・・・10g
桜葉塩漬け・・・5枚
桜花塩漬け・・・適宜
作り方
- 1.鯛は両面に薄く塩をし、ペーパーにくるんでしばらく置き、真ん中に切り込みを入れておく。
- 2.道明寺粉は【A】を合わせた出し汁に水分が無くなるまで漬けておく。
- 3.鯛で【A】の道明寺をはさむ様にし、さっと洗った桜葉で巻いて、蒸気の立った蒸し器で10分蒸す。
- 4.【銀あん】の材料をすべてお鍋に合わせて、くず粉をよく溶き、混ぜながら火にかけて煮立ててから火を止める。
- 5.桜蒸しを器に盛り、銀あんをかけて塩抜きした桜花をのせる。
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しぐれ飯
材料
鯛刺身・・・1さく
【A】
練り胡麻・・・20g
たまり醤油・・・大1
濃口醤油・・・小1
砂糖・・・小1/2
すり胡麻・・・大1
わさび・・・8g【B】
つくね芋(大和芋でもOK)・・・150g
だし・・・70cc
みりん・・・小2
薄口醤油・・・小1ご飯、うずら卵、青海苔、海苔・・・適宜
作り方
- 鯛刺身は薄造りにし、【A】を合わせたたれに15分程つける
- つくね芋(大和芋)は皮をむいて水につけてあくを抜く
- つくね芋(大和芋)をすりおろして【B】と合わせる
- ご飯に【B】のとろろをかけ、刺身を並べる。
- さらに、青海苔を振ってうずら卵をのせ、海苔を色紙に切って散らす。