予約の取れない自宅教室
~人気レッスンの魅力をレポート~

まるたか農園 高西タマ子

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高西 タマ子さん

今月は趣向を変えて、沖縄の伝統野菜をつかった家庭料理づくりが体験できる、石垣島・まるたか農園に、高西タマ子さんを訪ねました。野菜の収穫から、料理体験、そして14品(他に絶品フルーツデザート付!)がお膳に並ぶタマ子さんお手製のランチまで味わえる盛りだくさんの内容。インタビューではタマ子さんの波乱万丈の人生にも迫ります。(毎週月曜更新)

掲載日:2010/07/05(月)

農業経験ゼロから1000万円農家を目指して

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――マンゴー栽培のご経験があったのはご主人ですか? 

タマ子さん いえ、主人は公務員でしたから、農作業の経験はまったくありません。マンゴー農園をはじめたのは、15歳違いの主人が定年を迎え、石垣島に帰ってきてからです。
 主人が体調を崩したので、「空気のいい石垣に越して、のんびり暮らそうかー」ぐらいのつもりだったんです。
 那覇で骨をうずめるつもりで、お墓も買っていましたけれど、やっぱり2人の故郷に帰るのがいいかな、って。
 
 でも、寝転がってテレビ見て、おなかがすいたらごはん食べて、また転がって…という生活を続けていたら、体がずんずん弱ってしまって、「大変、なにかしなきゃ!」と。
 新しく石垣につくったお墓の周りの土地を少し開墾して、野菜を少しずつ種類をいろいろ植えたらすごくよく実るんです。それで「おもしろいな」と思って。 

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――それまで、農業のご経験はなかったんですよね? 

タマ子さん そう。でも、何を植えてもおいしくできるのでうれしくなったのと、老人会のおばあちゃんたちが「タマ子の畑を見に行こう!」とゲートボール帰りに訪ねてくるようになって(笑)、ほめられて自信がついて、本格的にやろう!となったんです。 

 サトウキビは無理だし、野菜は食べるだけあれば十分だし…と考えて、那覇の家の庭から持ってきたマンゴーの木が、石垣でもおいしい実をつけたので、「マンゴーがいいんじゃない?」「もしかしたら金のなる木になるんじゃないかな?」って。 

 それで1000万円農家を目指してマンゴー栽培をはじめました。八重山のためにやってみよう!と。それが20年ほど前です。

 

マンゴーづくりの苦労は楽しい

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タマ子さん 最初は1200坪くらいの土地を見つけて交渉をしていたら、農業委員の方がきて、「1500坪以上じゃないと、農地として登記できないよ」と。それで探しなおしてめぐり合ったのが今の場所です。2100坪あります。 

 主人と私、長男、長女、次女、家族5人総出で「記念になるよ!」と言いながらマンゴーの苗を植えました。毎日ハウス1棟分、50本ずつです。 

 昔ここには水たまりのようなものがあって、地元の人には「マンゴー? できないかもしれないよ」と言われてました。でも、うちのマンゴーはおいしいですよ!(笑) 

――作物づくりがお上手なんですね!
 
タマ子さん マンゴーづくりは難しいですが、石垣や那覇でマンゴーをつくっている人の畑で見学させてもらったり、いろいろ勉強はしましたね。
 そうしたら、苗を植えて1年後にはもう、花が咲いたんですよ。でも木が成長するまでは実をつけてはいけないと聞いていたので、もったいないけれど花を摘んで。
 そうしたら翌年にも花が咲いて、全部とるのは忍びないと、花をとらずに3本くらい置いておいたの。そうしたら何個か実がつきましたね。 

 食べてもおいしいし、喜んでいたんですが、2年目で実をならせてしまった木はその後の成長が遅いんです。3年目にはじめて実をつけた分は、2年目の実の倍くらい大きくって、人の言うことは聞くもんだな、と思いましたねー(笑)。
 
――(笑)。それで市場での評判もよく? 

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タマ子さん 流通がふるわず、最初はあまり売れなかったですね。
 昔から、キロ単価は卸値で2000円、市場で2500円ぐらいでしたから、いい値でした。
おいしいとはわかっていても、石垣では高くて売れないので、農協を通じて那覇や築地まで卸したりもしましたよ。 

 口コミが一番順調だったので、中間業者を通さず、リピーターのお客さんを大事に直販を増やしていきました。 

 台風がきてマンゴーの発送が滞ると、皮に黒いぶつぶつができて、おいしいけれど見栄えが悪くて、そのままでは売れなくなってしまう。さあ、どうしよう?と考えたときに、「加工品をつくろう!」と思いつくんです。
 
 はじめはジャムと冷凍カットマンゴーづくりから。販売許可証を持っていなかったので、年に1度の産業まつりを目標に、加工品をたくさん準備して売りましたね。

 

魅力ある農業で、若者を石垣にとどめよう!

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――農業体験や、グリーンツーリズムの活動をはじめられたのは、どんな経緯で?
 
タマ子さん 知り合いの(農業改良)普及員から「生活改善グループにぜひ入らんか?」と誘われたのがきっかけでした。母も入っていたので、憧れでもありましたし。 

 お正月料理やお盆の料理をつくったり、毎日のおかずを考案したり。伝統料理をつくる主婦が少なくなっていたので、石垣の食文化を守るような意気込みで働きました。
 
 農協にしようか、婦人会にしようか、生活改善グループに入ろうか迷っていたら、全部に推薦されてしまって…。 

――えっ! 全部!? 
 
タマ子さん そう、知らないうちに名簿に名前が入ってたりね(笑)。
 生活改善グループの一員として、月に何回も普及センターに行っては料理の講習会をしたり、製品の開発をやったり、大変楽しかったです。当時は、竹富や与那国といった離島も含めて500~600人の会員がいました。 

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――その活動のなかで、ジャムやピパーズかりんとうなど、まるたか農園オリジナルの商品が誕生していったわけですね。
 
タマ子さん はい。4年前、石垣にも農林水産省から「グリーンツーリズム」振興のよびかけがあって、都会の方と農村の交流を盛り上げようという動きがはじまりました。 

 農家が高齢化して、若者は都会に出ていってしまう。「農業の魅力をアピールして、若者が地元に留まりたいと思えるような工夫をしよう」ということなんですね。

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グリーンツーリズムの講習を受けたり、講師を招いて「石垣はどうしたらいいか?」とお話を伺ったり。講習には100人くらい集まるけど、補助金が出ないとわかると、クモの子を散らすように離れていってね。
 残った10数名で八重山グリーンツーリズム研究会を立ち上げて、勉強を続けながら、実践として、農業体験やお料理教室、農家レストランなどをやっています。 

――沖縄のグリーンツーリズムのサイトは拝見していましたが、そういう経緯だったんですね(活動の詳細はこちらから)。どのイベントも楽しそうです。

タマ子さん そうだとうれしいですね(笑)。
 グリーンツーリズム研究会の活動もあり、生活改善グループもあり、「(南の島々から八重山の)味つたえ隊」にも参加しているし…毎日が講習講習、研究研究…で、自分の仕事そっちのけです。だから自分の畑にずんずん雑草が生えちゃって、アハハ!
 
 ここで教室を開くようになったのは平成17年、つい最近です。それまでは、この土地は農地だから、家屋を建ててはいけない決まりだったんですが、「農産物加工のための施設なら」という但し書き付きで市の許可が下りて、料理教室を開けるようになりました。

 

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――まるたかの商品は、5年以上前から公設市場で買えたと思うんですけれど…。 

タマ子さん あれは自宅でつくった分です。許可証をとって、加工品をつくりはじめたのが平成4年。家の駐車場を改築して、車は別のところに移動しちゃって(笑)、島とうがらしのペーストとか、ピパーズかりんとうとか、いろいろつくりました。 

――タマ子さんの商品は、辛いものはしっかり辛いし、どれも香りがいいし。実は昔からまるたかファンなんです。 

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タマ子さん まぁ、それはそれは(ニッコリ)。
 マンゴーのジャムも評判がよくて、平成7年には「食アメニティ・コンテスト」で浜美枝さん(当時の会長)から会長賞をいただきました。
 
 商品は今は10種類を超えましたね。私1人でつくってます。 

――ええっ! ご家族がご一緒に作業をされているんじゃないんですか! 

タマ子さん ううん、1人でやります。午前中はジャムづくり、昼は畑に出て、午後は講演会に行って、帰ってまたジャムづくりの続きをやったりしますから。

 

レッスンのある1日のスケジュール

前の晩に下ごしらえ(加工品の下準備も済ませる) 
7:00 ごはん
    教室がはじまるまでにしこみなどを済ませ、その他雑用いろいろ
11:30~14:00 収穫体験+料理教室
    教室が終わったらジャムづくりや講演会などのお仕事をこなす 
20:00 夕ごはん
    食後はテレビを見てゆっくり。ちなみにお好きな番組は「水戸黄門」。でもチャンネル主導権はお子さんが持っているので、「何かわからないけど、ついてる番組を見てますね(笑)」
23:00~24:00 就寝

八重山の文化を「食」で伝えたい

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――野菜の収穫体験とお料理教室、さらにタマ子さんのお料理もいただけるこのスタイルは、どのように思いつかれたんでしょう。
 
タマ子さん お正月や盆になると、姉がお膳を組んで、料理をたくさんつくってくれました。それが私は楽しみで仕方なかったの。だから今度は私がもてなす側に回って、みなさんにも少しでも喜んでいただければと思い、こんなふうにしてみました。

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こういうお膳は昔は、各家庭に30、40枚はあって、お客さんの数が多ければお膳をよそから借りてきて、自宅でもてなしていたものなんですね。
 そんな伝統も含め、みなさんに八重山の文化を知っていただきたくて、今のスタイルでお教室をやっています。
 
 グリーンツーリズム研究会もはじまったばかりで、体験プランもあれこれ工夫したいと思っていますし、新商品のアイデアもどんどん浮んでくるので、自分でも楽しみです。

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――最後にうかがいます。タマ子さんにとってキッチンとは? 

タマ子さん 女性の仕事場ですね。女性が一番活躍できる場所はキッチンだと思っています。
 
 台湾にいた子ども時代、ままごと遊びをしていたとき、缶詰の空き缶をもらって、火をおこして、本当にお米でごはんを炊いていたくらいですから、私にとって「食」は切っても切れないものです。
 
――今のお仕事も楽しまれている? 

タマ子さん
 ええ。好きなことだから、どんなに難儀でもやれるんです。 

――なるほど。今日は本当にすばらしいお話をありがとうございました! 

タマ子さん いえいえ、こちらこそ!
 

 八重山の食材や文化を紹介するときのタマ子さんは、本当に自信に満ちていて、ご自分が生まれ育った沖縄への誇りがひしひしと感じられました。
 
 ほんの数時間ですが、子どもの頃に帰ったように小さな驚きや喜びが次々に湧き起こる貴重な体験ができますので、石垣に行かれたらぜひ、まるたか農園にタマ子さんを訪ねてみてください!
 
(おわり)

インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング
写真=下村しのぶ

 

プロフィール

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高西 タマ子(たかにし たまこ)さん

まるたか農園で昔なつかしいあっぱ(母さん)の沖縄の伝統料理の味を伝授。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるたか農園

住所 石垣市登野城2151-5 
電話 0980-83-1665
*3日前までに要予約料金 
一人2500円(12~14時。昼食付き)

 

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