Peaceful Room主宰 蒲原泉(かもはら いずみ)さん
お約束より少し早く呼び鈴を押したにもかかわらず、「どうぞどうぞー!」とインターホンからやわらかな声。促されて中に入ると、包み込むようなやわらかな笑顔で迎えてくださったのが、ピースフルルーム主宰・蒲原泉さんです。
「野菜を中心に、体にいい食材を使ったヘルシーな家庭料理で、体の中からキレイになる」というサロンのコンセプトが、そのまま現れているような健康美人。なんという肌のツヤ! そういえば博多人形もキメ細かな肌が特徴だったっけ、と思い出しました。
スタジオのようなキッチン
キッチンはスタジオのように広々。壁側にゆったりとシステムキッチンが設置されているのに加え、アイランドにもう一式、作業スペースがより広くとられたシステムキッチンが配置されています。
アイランドのダイニング側には食器類の収納もたっぷり。
コンロもレンジフードもよく手入れされ、清潔。よく使うものは見える場所にあって、時々しか使わないものは定位置にしまわれ、必要なときにスッと出せるように工夫されています。
「隠す収納」に徹した、スタイリッシュなキッチンもすてきですが、こちらは、毎日の食生活を支える「生きているキッチン」という印象です。
冷蔵庫は2台。1台は扉がガラスのショーケースタイプで、生徒さんに見やすいことが選んだポイントと、あとでうかがいました。
11時に、4人の生徒さんがそろい、テーブルのお誕生席に蒲原さんが座るとレッスンスタートです。
メニューは、ニラたっぷりのもっちり豚まん、大豆のかんたん五目煮、ひじきと玉ねぎのさっぱりサラダ、しょうがをたっぷり入れた中華風かきたま汁(事務局注:取材にうかがったのが2月だったので、お料理も寒い季節向けです。5月のメニューは「初夏のヘルシーイタリアン」です)。
はじめに、材料から調理のポイントまで、詳しく説明があります。
「…なんだか緊張しますね!」 取材チームの存在に生徒さんが反応すると、「みなさん、いつもと違って口数が少ないもの~(笑) でもいつも通りね!」と蒲原さん。
花が咲いたような笑顔に、一気に場が和みます。
レシピ解説にじっくり時間をかけて
「豚まんの具は豚ひき肉とニラと白ねぎに、戻した干ししいたけ。お好みでキャベツや白菜の千切りをしぼって入れてもOK。冷蔵庫の残り物、なんでも入れて大丈夫です。
必ず入れてほしいのが干ししいたけ。これがないとよい風味が出ません。
豚肉とニラの組み合わせは疲労回復に効果的です。ニラに含まれるアリシンには解毒作用があるほか、スタミナもつきます。ビタミンB群を含む豚肉と一緒に食べることで疲労回復に相乗効果が生まれます。
味つけに今日は紹興酒を使いますが、なければお酒で全然大丈夫。わたしも何度もお酒でつくってますので実証済みですよ(笑)」
「実証済み」と言っていただけるだけでとても心強いです。
「皮は、薄力粉と強力粉を両方使います。中力粉や薄力粉だけでもできますし、今日は薄力粉:強力粉が2対1ですが、強力粉を増やすとよりもっちりとした食感になります。
ドライイーストは予備発酵が不要のタイプ。今日は3gずつ小分けになったものを使います。大きな箱で買うと、しばらく使わずに置いておくと――保存方法にもよると思いますけれど、うまく発酵しなくなるの。だから、小分けがおすすめです」
生徒さんから「私は箱から小分けにしてジップロックに入れて冷凍しています」とアイデアが紹介されると、
「そう、冷凍がいいみたい。でも私、冷凍してもうまくいかなくて(笑)。それでこの小分けを見つけたの」と蒲原さんが会話をつなぎます。
へぇ、なるほど、ふむふむ…と、ほんの数分の講義で使える知識やアイデアをたくさん学べてしまいました。
「材料をボウルに入れ、ざっくり混ぜたら真ん中にくぼみをつくって、ぬるま湯を少し入れ、粉をかぶせて混ぜて、またくぼみをつくってお湯を入れて混ぜ、を繰り返します。やられたこと…ありますよね?」
生徒さんが力強くうなずくのを確かめて、蒲原さんは説明を進めます。
「湯量の目安をレシピに書きましたが、粉の水分量によって変わってくるので、様子を見ながら作業してください。耳たぶの硬さか、ちょっと硬めでも平気。
滑らかになったら油をいれてさらにこね、作業台に移して100回くらいこねます。上から押して繊維を伸ばすように…今日は○○さんがいらっしゃるので見せていただきましょうねっ!」
と、天然酵母のパンづくりにこだわりのある生徒さんに少しプレッシャーをかけてみたり。楽しそうに微笑む蒲原さんを、生徒さんがニコニコと囲みます。
蒲原さんのお話はゆったりしていて、「~してですね…」など語尾がやわらかいので、講義を聞いているとつい時間を忘れそう。
だからか、ピースフルルームのレッスンはいつも長丁場なのだそうです。
「しょうが」でひと盛り上がり
材料のしょうがの説明から、巷で流行りの「しょうがダイエット」の話題でおしゃべりがふくらみます。
蒲原さん しょうが紅茶でダイエットする人もいるみたい。しょうがは基礎代謝を上げて脂肪を燃えやすくしますからね。
Aさん 代謝があがると基礎体温も上がりますか?
蒲原さん あがるあがる。基礎体温が1度上がると免疫力は飛躍的にアップします。
Bさん 理想は36.5度くらいですよね? なかなかそこまで上がらない。
蒲原さん 爪もみも血行促進にいいですよ。爪をギューッと抑えてパッと離すだけ。
Cさん 薬指以外はリラックス効果があるから、お風呂で押すといいとか。
Bさん 先生もお風呂でなにかやられてるんでしたよね?
蒲原さん 私はリンパマッサージ。わきの下と脚の付け根のリンパ節のコリコリをほぐしてから、心臓に向かってマッサージするの。
Aさん 私もやってます! 寝た状態でひざを立てて、ひざ裏を押すの。バタグルウくらい痛いけど。
一同 ……バタグルウ?
Aさん 知らない!?
Cさん どういう意味?
Aさん 「バタ狂う」。もがき苦しむとか、慌ててるときとかに使うの(笑)。
「今日は雑談が少ないほう」と蒲原さん、みなさんが雑談する様子をニコニコ楽しそうに眺めています。
うかがうと、11時のレッスンスタートで、実習のはじまりが13時のこともあるとか(!)。試食時間のおしゃべりが「気づいたら2時間!」というお教室はありますが、実習前に2時間のおしゃべりとは、はじめて聞きました。
生徒さん曰く「私たちのは実のあるおしゃべりですから(笑)」。もちろんですとも!
そんなこんなで、今日は順調に(?)12時前に調理がはじまりました。
(次回へつづく)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ
プロフィール
蒲原泉(かもはら いずみ)さん
Peaceful Room主宰
食生活アドバイザー。フードコーディネーター。食養士。二男の母。
家族の体調不良を食事で改善した経験などから食べ物のチカラに目覚め、、多方面で勉強を重ねる。
2005年より料理界の重鎮:檜山タミ氏に師事。
地域の公共施設で開いていた料理教室が評判となり、自宅教室を開くようになる。
「おいしい」「食べることが楽しい」「作ることも楽しい」を大切に、時候に合ったヘルシーな食卓を提案中。
KBCテレビ「アサデス。」に出演(~2006.9)
RKBラジオ番組に出演。雑誌やクリニックなどへのレシピ提供。西部ガスクッキング料理教室講師。直前組織の料理教室講師。食品メーカーのレシピ開発。