「HONDO」料理教室主宰 本藤房子(ほんどう ふさこ)さん
落ち着いた生活エリアとして人気がある、市川市・八幡駅から5分ほどのところに、今回のサロネーゼ、本藤房子さんが主宰する「HONDO料理教室」があります。クラシカルな雰囲気の広いリビング・ダイニングに入ると、キリリとしたスーツ姿の本藤さんが出迎えてくださいました。
初めてお会いするにもかかわらず、ソフトで温かみのある笑顔のおかげか、緊張が次第にほどけていきます。
キッチンをのぞいてみると、両サイドに作業スペースがあります。ここで多い日に5人が立って料理をされるそうですが、生徒の皆さんは効率よく、和気あいあいと料理をしているのだとか。調理器具や調味料などをすべて戸棚の中に収納しているため、スペースを無駄なく使うことができるのだそうです。
キッチンから出てすぐのところに、4人掛けのダイニングテーブルがあり、ここで生徒さんにレシピの説明を行います。レッスンは1日2回。1回目は11時から、2回目は16時からなので、キッチン回りには食材、ボール、まな板などが並んでいるのかと思いきや、そんな様子は全くありません。いったい、どのようなスタイルでレッスンが行われているのか、期待に胸が高まります。
「今日は何を作るの?」そんな会話からスタート
11時近くになり、2人の生徒さんがサロンにやってきました。2人とも近くに住んでいて、月に1回通っているそうです。
「いらっしゃい! まずはお茶を入れましょうか」と本藤さん。
リラックスした空気の中で、レッスンがスタート。生徒さんも料理を勉強しにに来るというよりは、知り合いの家で料理を作りながらおしゃべりをする感覚のようです。
この日のメニューは和食。といっても堅苦しいものではなく、晩ごはんにすぐ作りたくなるような家庭的なおかずです。『信田巻きとヒジキの煮もの』、『菜の花和え』、『じゃが芋とシラスのコーン煮』、そして『竹の子と豚バラのキンピラ風煮もの』の4品。レシピを見ながら、作り方やポイントを1品ずつ詳しく説明していきます。
「実は、生徒さんはここに来てから、今日何を作るのかを知るんです。前もってメニューを決めておくと、思ったような食材が手に入らないこともあるでしょ。できるだけいい食材で、おいしいものを食べて欲しいから、私の教室では旬に合わせて臨機応変に対応しています。そんな自由なところが、サロンの良さかもしれないですね」
メニューの内容は家庭料理がメインとのことですが、いつも和食と決まっているわけではないのだとか。例えば、シューマイ、えびのチリソースなどの中華の日もあれば、フランス風のクレープ・ガレットの日もあったそう。生徒さんは和・洋・中の家庭料理からおもてなし料理まで、さまざまなジャンルの料理を学ぶことができます。
ひと通りレシピの説明が終わると、「さて、レシピの説明はこのくらい。それじゃあ、始めましょうか」と言ってさっと立ち上がり、キッチンへ。いよいよ、実習の始まりです。
見るだけでなく自分で手を動かすレッスン
「まずは『菜の花和え』。でも本物の菜の花は使わないの。いり卵のポロポロとした形や大きさが菜の花のようだから、こういう料理名なのよ。このメニューには鯵を使うので、今日は鯵の三枚おろしを1人ずつやってみましょう」
するとさっそく、小さなまな板の前にそれぞれが立ち、鯵の三枚おろしに挑戦。先生が後ろから手を取り、マンツーマンで指導を始めました。包丁の角度や、立つ位置などを細かく教えていきますが……。
「骨にいっぱい身がついちゃった。あーあ。」(生徒さん)
「大丈夫よ。自分が動くんじゃなくて、鯵を動かせばいいのよ」(本藤さん)
「できた! もう一尾やりたいな」(生徒さん)
「帰りにスーパーで買って、家で復習するといいわよ」(本藤さん)
手取り足取りの親切な指導は、料理初心者にとっては心強いもの。一度教わって自分でできるようになれば、料理のレパートリーもぐんと広がります。
「次に、鯵は酢でしめるんだけど、その前に塩をふります。このときの加減が重要なの。塩は指の間からパラパラとこぼれるくらいね。20~30分置くと身がしまって中骨が立ってくるから、そうしたら水で洗って水けを拭きます。酢は魚によくなじむように、ペーパータオルをかけておくといいわよ」
ちなみに、いわしに塩をふる場合は、身が小さいので塩水にくぐらせればOK。さばの場合は雪のようにしっかりふるのだとか。魚の扱いは慣れないと難しく、どうしても敬遠してしまいがちですが、生徒さんはこのレッスンで自信をつけたようです。
「続いてはいり卵を作ります。鍋に卵液を入れたら菜箸でひたすらグルグルかき混ぜて。大きさの目安は菜の花の花びらくらいだから、そんなに細かくしなくても大丈夫」。菜の花のような鮮やかな黄色に仕上がるように、卵は機能性卵として人気の高い『ヨード卵・光』を使用していらっしゃいました。いり卵に先ほどの鯵とウド、絹さやを混ぜたら、華やかな『菜の花和え』の完成です。
アットホームだから臆せず質問できる!
「次は『じゃが芋とシラスのコーン煮』。シラスって煮ものにはあまり使わないけど、思ったよりもシラスの味がきいて、おいしい煮ものになるのよ。さあ、じゃが芋をむきましょう」。と言って準備したのは紙。何に使うのかと思えば、この紙の上で皮をむいていたのでした。こうすれば、ゴミの後始末もらくですね。
「じゃが芋は半月切りにして」(本藤さん)
「半月切りって何?」(生徒さん)
「こうやって切るのよ」とアドバイス。普段、なかなか聞くことができない料理の基礎知識。アットホームな雰囲気だからこそ、生徒さんも気後れすることなくどんどん質問できるようです。
「シラスは熱湯をかけて臭みを抜きます。じゃが芋は角が透明になるくらいまで炒めるのがポイント。新じゃがを使う場合はちょっと注意。水分が多いから、よく炒めないと味がボケた感じになるの。だからコロッケを作るなら、新じゃがは避けたほうがいいわよ」
炒めたじゃが芋にシラス、クリームコーン、牛乳、和風だしを入れて弱火で煮ていくのですが、シチューとシラスを組み合わせたような斬新な創作メニュー。いったいどんなお味になるのか、とても楽しみになってきました。
(次回へつづく)
インタビュー=窪田みゆき
テキスト=川端浩湖
写真=中村あかね
プロフィール
本藤房子(ほんどう ふさこ)さん
「HONDO」料理教室主宰・料理研究家
知り合いの店で作っていた家庭料理が評判となり、レストランを開業することに。約4年半続けた後、常連のお客様に頼まれて、少人数制の料理教室を開く。現在は自宅で数々の有名料理教室やホテルのシェフから学んだ料理の知識をベースに、アイディアあふれる創作家庭料理を教えている。料理教室にとどまらず、講習会や企業へのレシピ提供、食品会社による香港・韓国の新店舗開業プロデュースを行っている。『月刊いちかわ』で「食の歳時記」を連載中
とっておきレシピ
信田巻きとヒジキの煮もの
材料
鶏挽肉・・・150g
油揚げ・・・1枚
ヒジキ・・・20g
★片栗粉・・・小さじ1
★卵・・・1個
★醤油・・・小さじ1
★みりん・・・小さじ1
★酒・・・小さじ1
★塩少々
《煮汁》
出汁・・・3カップ
みりん・・・大さじ2
醤油・・・大さじ2
酒・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ1
塩・・・小さじ1/3
作り方
-
- 1.油揚げを湯通しして冷まし、まな板の上に置き、箸をコロコロして、三方に切り込みを入れて広げる。
- 2.鶏挽肉に、★を入れ、よく混ぜ合わせる。
- 3.1に薄く片栗粉を振り、2をのり巻きのように広げて巻く。
- 4.ヒジキは水につけて戻し、食べよい長さに切る。
- 5.鍋に煮汁を煮立たせ、3、4を加えて強火で煮立て、落とし蓋をして弱めの中火で煮る。
- 6.煮汁が少なくなってきたら味を調え、1~2分煮て火を止める。 油揚げを取り出し、6等分に切り分け、ヒジキとともに皿に盛る。
菜の花和え
材料
卵・・・2個(砂糖、塩)
鯵・・・1尾
ウド・・・5cm
絹さや・・・10枚
酢
塩
砂糖
合わせ酢(酢 大さじ3、砂糖 大さじ3、塩 小さじ1/3)
作り方
- 1.鯵は三枚におろし、塩をして身が引き締まって中骨が立つまで20~30分置く。
- 2.1を水洗いして水けをよく拭き取って、酢を入れたバットに並べ、ペーパータオルをかぶせる。
- 3.絹さやは、筋を取って塩少々を入れた熱湯で茹でる。
- 4.ウドは、皮を取り短冊切りにして、酢水に放ちザルに上げ、水けをペーパータオルで取る。
- 5.卵を割りほぐし、砂糖、塩少々を入れて混ぜ合わせ、鍋でそぼろ状にする。
- 6.2の鯵の水けを軽く取って、皮を取って太めの斜め切りにする。
- 7.合わせ酢を混ぜ合わせる。
- 8.ボールに3、4、5、6を混ぜ合わせ、出来上がり。