「HONDO」料理教室主宰 本藤房子(ほんどう ふさこ)さん
食べる人のことを考えて作る大切さ
—-料理には「気」が大切というお話が出ましたが……。
本藤さん 料理は食べる人のことを思って作るもの。忙しいからといってあせって作るとしょっぱくなるし、味がきつくなってしまいます。子どもってそういう「気」が入っていない料理をすぐに見抜くんですよね。
それが分かってからは、子どもたちに本物のおいしさを味わってほしいという気持ちが強くなったんです。そのうち近所で畑を借りて耕し、子どもを連れて行って野菜を収穫するようになりました。今でいう「食育」なのかしらね。旬のおいしさに勝るものはないということが、伝わったんじゃないかと思っています。
だから教室でも、料理だけでなく、食べる人のことを考え、「気」を入れて作ることの大切さも伝えたいと思っているんですよ。独身の生徒さんには特に「親ゴコロ」のようなものが出て、ついつい話が長くなってしまうのよね(笑)。
料理を通じて伝えたいこと
—-料理教室以外には、どんな活動をされていますか?
本藤さん 幼稚園で園児のお母さんに対して講演会をしています。そこでよくお話するのが、「ご飯の力」について。最近はパンやパスタなどのいわゆる粉ものを食べる機会が多くなりましたが、やはり日本人の体に合うのはお米。ご飯は頭の回転をよくしてくれるので、子どもたちはご飯をしっかり食べることが大切なんです。
お母さんが忙しいときは、ご飯のおかずセットを作っておくと便利。佃煮、漬物などのご飯のおかずになるものをセットにして冷蔵庫に準備しておき、ご飯さえ炊いておけば、たとえ一人のときでもちゃんとした食事ができます。
最近はバランスのいい食事がとれていないため、子どもたちが社会に順応できないケースが多いようです。成長期の子どもにとっては、肉、野菜などもしっかりとり、バランスよく食べることが必要。そんなことをみなさんにお伝えしているんですよ。
—-食にまつわるエッセイも書かれているとか。
本藤さん 「食の歳時記」というエッセイを『月刊いちかわ』に連載しています。ここでは、旬の食材や調理法、栄養、レシピを紹介しています。「旬はおいしいし、安い。本当の旬は今なのよ」ということを生徒さんに教えるように書いているんですよ。Webサイトにも掲載しているので、ぜひ読んでみてください。
料理器具とテーブルウエア選びの決め手
—-キッチンで使っている調理器具にこだわりはありますか?
本藤さん 余分な調理器具を持たないことがこだわりかしら? 私は物持ちがよくて、広島から持ってきた器もそうだけど、長く使えるのはとことん使っています。
例えば、この圧力鍋。30年前から使っているピースの超ロングセラー商品なんですが、ゴムパッキンを取り替えているから、全く問題なく使えるんです。自分に必要なものを見極め、余計なものを増やさなければ、キッチンはいつでも気持ちよく、広々と使えますよ。
—-リビングの食器棚には、素敵な洋食器がそろっていますね。
本藤さん お気に入りは、アメリカ・レノックス社のテーブルウエア。流行り廃りのないものは、いつまでも使えますね。お茶を入れてほっとくつろぐひと時、気持ちをなごませてくれます。
親子2世代が通う料理教室を目指して
—-これからの目標は何かありますか?
本藤さん おばあちゃんになっても料理教室を続けていたいです! 生徒さんに子どもができて、その子どもたちが習いにきてくれるとうれしいわ。
料理教室には、包丁の握り方や野菜の切り方だけを教える、初心者向けの基礎料理クラスもあります。さいの目切り、みじん切りなどをしっかり身につけてもらうための講座なんですが、私に色々注意を受け、叱られながら(?)手を動かすのが結構楽しいみたいです。
料理は楽しみながら続けることが一番だと思うので、これからも生徒さんと一緒にさまざまな「食」を体験していきたいと思っています。
レッスンのある一日のスケジュール
6:00~ 起床→ウォーキングやランニングを30~40分間。
洗濯、掃除をすませてお茶を飲む。
7:30~ 朝食
9:00~ レッスンの準備、事務的な仕事
11:00~14:00過ぎまで 1回目のレッスン
15:00~16:00 休憩、次のレッスンの準備
16:00~19:30過ぎまで 2回目のレッスン
20時くらいまでおしゃべりが続くことも。
レッスン後はパソコンでメールチェックなどをして過ごす。
24:00 就寝
キッチンはお城以上の場所
—-最後に、キッチンは本藤さんにとってどんな場所ですか?
本藤さん それはもう、お城以上のところです!
キッチンは私にとって一番大事な場所。料理教室に来た生徒さんには、ここで習った味を自分の体にしみこませて、おうちでもぜひ料理を楽しんで欲しいと思っています。
—-本日はありがとうございました。
(おわり)
インタビュー=窪田みゆき
テキスト=川端浩湖
写真=中村あかね
プロフィール
本藤房子(ほんどう ふさこ)さん
「HONDO」料理教室主宰・料理研究家
知り合いの店で作っていた家庭料理が評判となり、レストランを開業することに。約4年半続けた後、常連のお客様に頼まれて、少人数制の料理教室を開く。現在は自宅で数々の有名料理教室やホテルのシェフから学んだ料理の知識をベースに、アイディアあふれる創作家庭料理を教えている。料理教室にとどまらず、講習会や企業へのレシピ提供、食品会社による香港・韓国の新店舗開業プロデュースを行っている。『月刊いちかわ』で「食の歳時記」を連載中
とっておきレシピ
信田巻きとヒジキの煮もの
材料
鶏挽肉・・・150g
油揚げ・・・1枚
ヒジキ・・・20g
★片栗粉・・・小さじ1
★卵・・・1個
★醤油・・・小さじ1
★みりん・・・小さじ1
★酒・・・小さじ1
★塩少々
《煮汁》
出汁・・・3カップ
みりん・・・大さじ2
醤油・・・大さじ2
酒・・・大さじ1
砂糖・・・大さじ1
塩・・・小さじ1/3
作り方
-
- 1.油揚げを湯通しして冷まし、まな板の上に置き、箸をコロコロして、三方に切り込みを入れて広げる。
- 2.鶏挽肉に、★を入れ、よく混ぜ合わせる。
- 3.1に薄く片栗粉を振り、2をのり巻きのように広げて巻く。
- 4.ヒジキは水につけて戻し、食べよい長さに切る。
- 5.鍋に煮汁を煮立たせ、3、4を加えて強火で煮立て、落とし蓋をして弱めの中火で煮る。
- 6.煮汁が少なくなってきたら味を調え、1~2分煮て火を止める。 油揚げを取り出し、6等分に切り分け、ヒジキとともに皿に盛る。
菜の花和え
材料
卵・・・2個(砂糖、塩)
鯵・・・1尾
ウド・・・5cm
絹さや・・・10枚
酢
塩
砂糖
合わせ酢(酢 大さじ3、砂糖 大さじ3、塩 小さじ1/3)
作り方
- 1.鯵は三枚におろし、塩をして身が引き締まって中骨が立つまで20~30分置く。
- 2.1を水洗いして水けをよく拭き取って、酢を入れたバットに並べ、ペーパータオルをかぶせる。
- 3.絹さやは、筋を取って塩少々を入れた熱湯で茹でる。
- 4.ウドは、皮を取り短冊切りにして、酢水に放ちザルに上げ、水けをペーパータオルで取る。
- 5.卵を割りほぐし、砂糖、塩少々を入れて混ぜ合わせ、鍋でそぼろ状にする。
- 6.2の鯵の水けを軽く取って、皮を取って太めの斜め切りにする。
- 7.合わせ酢を混ぜ合わせる。
- 8.ボールに3、4、5、6を混ぜ合わせ、出来上がり。