「リコズキッチン」主宰 山脇りこさん
インタビュー連載 第3回
今月のサロネーゼは、都内で料理教室『リコズキッチン』を主宰する山脇りこさん。九州の観光旅館で生まれ、四季のしつらえや旬の山海の幸を使った板前さんが作る料理を五感で学びながら育った豊かな経験を活かし、旬を大切にした家庭料理のクラス『旬の教室』と、日本のだしについて基礎から学べる『だしの教室』を開催。ひと工夫もふた工夫もあるワクワクするメニューとセンスの良いスタイリングは評判を呼び、開設2年にして満席が続きます。2冊の著書も好評で、今年1月には3冊目も刊行する山脇さんの人気のレッスンの模様とインタビューを4回にわたりご紹介します。第3回目は教室のコンセプトやオープンのきっかけなどを伺ったインタビュー前半です
掲載日:2013/1/21(月)
「料理を楽しむこと、作る喜びを伝えたい」
――おつかれさまでした!本当に楽しくて充実したレッスンでしたね。まずは、『リコズキッチン』のレッスン情報やコンセプトについて教えてください。
山脇さん はい、レッスンは『旬の教室』と、月に1回『だしの教室』を開催しています。旬の教室の一環で、年に2回ほど『おかずの教室』を開いていて、今日はその『おかずの教室』でした。
『旬の教室』は、季節の食材を使い旬を大切にした家庭料理でそのままおもてなしで使える組み立てになっています。番外編のおかずのクラスは、できるだけ品数多く、毎日使えるおかずをお伝えしています。『だしの教室』は、昆布やかつおの材料の話から、だしの引き方、使い方などをお伝えして、すべてにだしを使った一汁三菜を楽しんでいただくクラスです。
ともかく、料理が楽しい!と思って頂きたいので、継続してかならず通っていただくスタイルではなく、行きたいな、と思ったときに来ていただけるようなスタイルを心がけています。
『お料理は大切な人のために、楽しく♪』『旬のものを、ひと手間だけかけて♪』がモットー
コンセプトとしては、まず、料理を楽しむこと、作る喜び、料理する自分をほめたくなる感じをお伝えしたいと思っています。なので、デモンストレーションの料理もありますが必ず実習を入れ、なにか一緒にお料理をします。
もうひとつ大事にしているのが、いろいろな料理の過程で、なぜそうするのか?ということを伝えたいと思っています。
なぜ砂糖が先なのか?なぜ蓋をするのか?なぜしっかり絞るのか?。そんな、料理のかんどころをわかりやすく伝えたい。さまざまな疑問の答えを、私も勉強してきちんと伝えたいと思っています。
それはプロの技とかではなく、代々つないできた家庭料理をおいしくつくるひと手間だったりすると思うのです。理由がわかれば応用も効くようになります。
――なぜそうするのか?をしっかり教えてもらえるのはとても魅力的です。理由を知ることは食材を深く知ることでもあり、おいしく仕上げる自信がつき、料理がますます楽しくなると思います。
お楽しみと学びがいっぱい!宝箱のようなレッスン
――レッスンではお料理もテーブルも、とても『旬』を大切にしていらっしゃるのを感じました。
山脇さん はい、食材の旬ははずさないようにしたいと思っていますし、テーブルでも旬を意識して、かならず生花を飾るなどしています。
――旬を大切にする、四季折々折りの日本ならではの行事やしつらえを暮らしに取り入れる・・・とても大切なことなのに、だんだん忘れられているような気もします。小さいころから五感全てで体感していらした山脇さんのご経験はとても貴重で、もしかしてそうした大切なことの伝道師の役割をお持ちなのかもしれませんね。
ところでレッスンは、「テーブルセッティングを2度楽しめる」「裏テーマがある」「おまけのお料理(和えもの)がある」など盛りだくさんのサプライズやワクワクすることがあって楽しいですね。
山脇さん ありがとうございます。テーブルセッティングは、ウエルカムテーブルと試食のときのテーブルを変えてご紹介しています。おいしく楽しくいただくには、テーブルの演出も大切だと思うんです。
裏テーマは、毎回何かコツになるテーマを設定しています。今日は『下処理』がテーマで、あえて下処理の良し悪しが出来栄えを左右する料理を選んで、青魚と海老の下処理をお伝えしました。
あと、和えものはいつも2品くらいをレッスンとは別にご紹介して召し上がっていただいています。和えものって本当に素晴らしい日本のサラダだと思うので皆さんにもっとおうちでも作ってほしいんです。和えもの推進委員として、和えもの魅力を広げています(笑)
しっかり学べてそのうえ楽しいレッスンは料理もテーブルもサプライズがいっぱい!
――調味料の説明も丁寧で、味見ができるのも嬉しいですね。
山脇さん 調味料はとても大切だと思っていて、クラスではおすすめ調味料をご紹介して、調味料単体で味見していただいています。たとえば、みりんとか、単独で味見して比べたりしていない方が多いみたいで、新鮮に感じて下さいます。やっぱり、丁寧に作られた調味料は、料理を格段においしくしてくれます。ちょっと高いかなと思うかもしれませんが、コーヒー1杯と比べたり、キャミソール1枚と比べていただいたりすると、高くない?と思うようになったり、笑。シンプルなお料理ほど調味料が大きな役割をはたしますし、毎日体に入るものですから、ちゃんと作られたものを買うことをおすすめしています。探すのも楽しい!ので、新しい喜びを発見してほしいなと思って。
――それに今日は焼酎がずらっと並んで驚きました(笑)。生徒の皆さんに、作ることはもちろん、おもてなしして召し上がっていただくことまでしっかり楽しんでもらいたい、という思いを感じます。お料理の知識がしっかり身につくだけでなく、たくさんのお楽しみがつまっていて宝箱のようなレッスンで楽しいですね。
いまお教室の登録者数は700名を超えたそうでどんどん予約の取れない人気教室になっていらっしゃいますが、どんな生徒さんが多いですか?
山脇さん 20代~50代までいらっしゃいます。一番多いのは30代~40代のOLさんやワーキングマザーの方ですね。あらゆる意味で、美しい、前向きな方、自分を持っている方が多いなと感じます。 皆さん本当にいい方ばかりで、生徒さんにとても恵まれていると感謝しています。
伝えられた大切なことを、今度は伝える番
――お教室をはじめたきっかけを教えてください。
山脇さん 私は九州の観光旅館で生まれ、四季のしつらえや旬の食材を使った板前さんが作る料理を間近に体験しながら育ち、自分で強く意識する以上に食べることが大好きだったっと思いますが、そのころは、いつか自分が料理の道に進むとは思っていませんでした。
なので、普通に進学して、その後 起業して、結婚前からPR会社を経営していました。ただ、料理は大好きで、海外では、おいしいと思った店で厨房に入って教えてもらったり、キッチンつきの部屋を取って、各地の市場を訪れて現地の食材を使って料理してみたり、地元の人の教室に行ったり、料理を中心にした旅をよくしていました。またADF(Alain Ducasse/アランデュカス)+tsuji(辻)にも通いました。
そういう料理を自宅で友達に食べてもらうのも大好きで、おもてなしのしつらえを考えるのも大好きで・・・そのうちに「教えて」といわれることが増え、2005年から自宅で知人と口コミのみのサロンをはじめました。
その後主人の留学に帯同してニューヨークに住むことになったのですが、仕事はわりあいうまくいっていましたので現地でできるカタチで続けていました。でもニューヨークでいろいろな人生に触れ――例えば、スタンダップコメディを小さな劇場で披露するコメディアンの方に出会って、1ステージ20ドルくらいしかもらえないけど、好きなことをしてとっても幸せそうだったんです。そんな、好きなことをして、仮に安定しなくても人生を楽しんでいる人達に次々と出会うにつれ、自分の生き方を再考し、よし、帰ったら私も好きなことをしよう!と思ったんです。
「海外体験を通じ、日本人でよかったと思う瞬間をすごく大事に思うようになりました」
それが料理だってことは、自分でよくよくわかっていました。NYの前に日本で料理学校にも通っていましたし。でも、とても無理では?とずっと思っていたんですね。40歳目前だったし、新しい挑戦すぎる?と思ったりして。 だけど、30歳を過ぎたあたりから、自分の育った日本旅館と言う環境がちょっと特殊だってことにも気づき、そこで体感してきた、日本の旬を大切にした料理の素晴らしさ、祖母や母、叔母たちから伝えられた季節のしつらえや家庭料理を伝えたい、という思いが強くなっていました。そして海外に住んだことでその思いはより強くなりました。
でも、私は子供がいないので、自分の娘に伝えることはできない・・・と思ったら、無性に誰かに伝えたい、と思うようになり、お料理の仕事は数あるかもしれませんが、中でも、教室をやりたいなと思うようになったんです。
そこで、改めてNYの料理学校にも行き、帰国後は、フードコーデイネイターや食育インストラクターの資格を取ったりして、3年くらいかけて会社を整理しながら、料理教室を開く準備をして、2010年からここでリコズキッチンをスタートしました。
――ニューヨークで体験したことが大きな転換のきっかけになったのですね。それまで得ていらしたことの素晴らしさを再確認されたこと、とても貴重な機会だったと想像します。
海外での体験を通して、日本の食の素晴らしさ、培っていらした貴重な体験を再認識し、伝える道を選んだ山脇さん。熱い思いをレッスンに込めていらっしゃいますが、でもとても自然体。そこには「料理を楽しんでほしい!そのためにはまず作り手が楽しもう!」というモットーを感じます。
それこそがワクワクドキドキ楽しくて、通いたくなるレッスンの秘密なのかもしれません。
次回最終回は、山脇さんがレッスンに込めている思いや、1月末に発売になる3冊目の料理本について伺ったインタビュー後半をお届けします。どうぞお楽しみに!
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=原田圭介
プロフィール
山脇りこさん
『リコズキッチン』主宰
料理家、フードコーディネイター。
『リコズキッチン@代官山』主宰。
九州の観光旅館で生まれ育ち、季節を感じる食材や料理、しつらえをこよなく愛するように。料理は”作る私も楽しい!が大事””大切な人のために♪旬のものを!シンプルに♪”が信条。
著書に『もてなしごはんのネタ帖』『かけこみおだし塾』(ともに講談社)、また1月末には『うちのごはんヒットパレード~予約が取れない料理教室「リコズキッチン」の人気レシピ125』(ソフトバンククリエイティブ)を刊行。
サロン情報
リコズキッチン
旬の食材を使ったシンプルなお料理で、おいしいちょっとステキな毎日へ。
ちょっとしたコツや組み合わせでいつものお料理がぐぐっとあかぬけるポイントに加えて、おいしくなるために、”どうしてこうするのか?”をしっかりお伝えするようにしています。素材の本当の味をお伝えしたいという気持ちから、少し大人の味、な教室かと思います。
このほか、だしの教室を毎月やっています。ほんとうにおいしい、昆布とかつおの出汁をとってみませんか?
クラスでは毎回、お料理に加えて、国内外から、マニアな私がみつけた、おすすめの調味料やリキュール、食材をご紹介、みりんや塩、お味噌などの味見もしていただいています。
ジャンル:
家庭料理、日本料理、イタリアン、ベジタリアン、日本酒、ワイン、おもてなし、テーブルコーディネート
サロン特長:
初心者歓迎、平日開催、夜間開催、土日開催、お友達同士歓迎、男性参加OK、予約制、駅近(徒歩10分以内)、お酒の提供あり
所在地:
東京都渋谷区代官山
ホームページ、ブログ:
ホームページ:http://rikoskitchen.com/
日々のプライベートごはんブログ:http://ameblo.jp/marukinsyokudo/
Facebookページ:http://www.facebook.com/RikosKitchen
レッスン情報:
はじめにメーリングリストにご登録いただき、その方々に教室のご案内を送付しています。ご登録ご希望の方は、next10@carol.ocn.ne.jpまで、メールをご送付ください。 その際、お名前、ご連絡先(お電話番号とご住所)、メーリングリストの送付先アドレスをお知らせください。メール♪お待ちしています。
サロン日程やお申込み関係はこちら
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とっておきレシピ
「失敗しない さばの味噌炊き」
材料
材料 作りやすい分量 1尾分 4切れ
※20センチの鍋で。・鯖 2枚おろし 1尾分
・小麦粉 大1弱
・油 適量
・酒 カップ1/2 100cc
・みりん 大2
・砂糖 大4 黒砂糖やきび糖(白い砂糖の場合、少しひかえるとよい)
・みそ 大4~5(好みの味噌で、ここでは麦みそ。米味噌の方が一般的に少し塩分強めにしあがります)
・しょうが 40グラム ふたかけ(麺棒などでたたく)
・鷹の爪 半本、種は抜く作り方
- 鯖はそれぞれ2つに切ってさっと流水で血を流し、キッチンペーパーで拭く。4切れにする。これに薄く薄く小麦粉をはたき、中火で焼く。火を通すのではなく無駄な脂を落として、臭みを抜くため。ペーパーで油をふいて、炊く鍋に並べる。
※湯引きで臭み抜きを行う場合:ザルなどにならべて、身のほうから、全体にそっーと熱湯をかけて湯引きする。(皮にかけると皮がはがれてしまう。)
- 1に酒と砂糖、みりん、たたいたしょうがを加えて、中火にかける。オーブンペーパーなどで覆うように落としブタをし、そのまま沸くまで火にかける。5,6分して沸いたら、弱火にし、みそ、鷹の爪を加えて、さらに7,8分炊く。火をとめてそのまま冷まし、食べる前に再び火を入れるとよい。
※青魚は冷たい煮汁から、白身魚は熱い煮汁から、それぞれ煮ます。落としブタは、オーブンペーパーなどの紙蓋が、優しくて機能も果たすのでおすすめです。
書籍
『ほんとうは簡単! かけこみおだし塾』
だしを初めてとる人、だしに自信がない人、だしのとり方を見直したい方のための、おだしの入門書です。本書では、昆布を水につけるだけの「昆布水」、「一番だし」、「めんつゆ」などだしを使った「自家製の合わせ調味料」の作り方とそれらを使ったメニューを多数紹介します。著者 山脇りこ
出版社 講談社
価格 税込1,365円『うちのごはんヒットパレード―予約が取れない料理教室「リコズキッチン」の人気レシピ125 』
家庭料理といえば、何を思い出しますか? から揚げ、ハンバーグ、煮つけ…。答えは人それぞれ。 日本の食卓には、和食から、洋食、中華料理、エスニック料理まで、 さまざまなメニューが並びます。 しかし、一通りの作り方を知っていてもどこかうまくできない、 どうしても献立が単調になりがち、ということも多いはず。 そこで、旅館の娘として育ち、人気の料理教室を主宰する著者が、 繰り返し作ってきた「うちの味」を厳選して披露します。 おうちで食べたくなる、そして、おもてなしにも活用できるレシピが満載です。著者 山脇りこ
出版社 ソフトバンククリエイティブ
価格 税込1,365円 - 鯖はそれぞれ2つに切ってさっと流水で血を流し、キッチンペーパーで拭く。4切れにする。これに薄く薄く小麦粉をはたき、中火で焼く。火を通すのではなく無駄な脂を落として、臭みを抜くため。ペーパーで油をふいて、炊く鍋に並べる。