福岡のビジネス街の手ごねパン教室
◆今月のサロネーゼ◆
今月のサロネーゼは福岡市のパン教室[K’s Kitchen]主宰、河合香さん。少人数で手ごねから焼き上がりまでが楽しめるレッスンが好評です!(毎週月曜更新)
福岡随一と言われる繁華街・天神からも程近いビジネス街。都会的なビルの一室のドアを開くと、「こんにちはー」と柔らかな声が迎えてくれます。今月のサロネーゼの主役、K’s Kitchen主宰の河合香さんです。
室内にはジャズピアノのBGMが低く流れ、白を基調にした整った部屋の随所に、動植物をモチーフにした北欧風のナチュラル小物があしらわれています。テーブルの上に用意されているレシピのペーパーには、K’s Kitchenのホームページでも会えるかわいらしいてんとう虫のキャラクターがプリントされていて、心が和みます。
ドット柄のカーテン越しに差し込むやわらなか光――なんだかここ、とても癒される空間なのです。
パンのやさしい香りに包まれて
「毎日寒いですねー」と、お天気の話などをのんびりしながら、ゆるゆると講義がはじまります。
K’s Kitchenのパン教室のコースは体験、基本、応用、フリーと分かれています。今日受講される常連のお2人は応用コースの生徒さん。選んだレシピはお1人がオレンジ風味のチーズパン、もう1人がカンパーニュです。
1回のレッスンは申し込んだメンバーだけのために行われる少人数制の教室ですから、生徒さんはご自分のペースで、手ごねから焼き上がりまで、じっくりゆっくり作業をすることができます。
「お子さんづれや、聴覚に障害のある方にも気兼ねなく楽しんでいただいているんですよ」と河合さん。
キッチンは二口コンロのコンパクトタイプ。作業台も兼ねた4人掛けのテーブルの上には、計量された粉や、ボウルやはかりなどの調理器具がお行儀よく並んで、生徒さんを待っています。
部屋の隅に発酵機と2台のオーブンが置かれているのが唯一、パン教室らしい風景という感じ。それ以外はごくごく普通のご家庭のダイニングキッチンで、そこに河合さんのこだわりで持ち込まれたアイランドの作業台が設置されています。
使う道具も、木べら、スケッパー、めん棒、こね台くらいと、ややこしいものはありません。
「おうちでも思い立ったときにすぐに作れるように、特別な道具は使いません。うふふ」 河合さんのおしゃべりのやわらかなトーンと、部屋にほんのりと残る焼きあがったパンの香りに包まれていると、ここがオフィス街のビルの一室だったことを忘れてしまいそうです。
レッスンスタート!
「はい、では始めますね。オレンジ風味のチーズパンとカンパーニュ。オレンジのほう、仕込み水は牛乳です。しっとり焼きあがります。生地を8割こねたところでオレンジピールを入れていきます。ほとんどこね上がっているので、そこからはピールを潰さないように弱めにこねましょうねー」
「はーい」
「成形はどちらも難しくありませんが、オレンジのほうは分割が多めなので、そこだけちょっとがんばりましょー」
「はーい」
「カンパーニュを少しご説明しておきますね。カンパーニュ(campagne)はフランス語で〝田舎〟という意味。大きな田舎風のパンのことを総称したものです。バターなど油脂分を使いませんので、こねていると手がカピカピになりますよー(笑)」
河合さんが終始笑顔なので、こちらもついつい頬がゆるみます。
「正式には天然酵母を使って長時間熟成さ「正式には天然酵母を使って長時間熟成させた生地を焼きますが、今日はおうちでつくりやすいように配合を工夫してあります。強力粉、全粒粉、ライ麦粉と3種類の粉を使ってつくる、今までお2人がつくらなかったタイプです。お砂糖も塩も少なめですね。
油脂分を入れないので、こねた生地をボールに入れて発酵させるときも、打ち粉をしてから入れるようにしましょう。
カンパーニュのポイントは、こねと成形で切り込みをたくさんいれるので、そこだけがんばりましょうねー。はい、でははじめましょう」
今回は何度もいらっしゃっている生徒さんなので、ポイントだけ説明したら、すぐに実習に入っていきます。
オレンジ風味のチーズパンとカンパーニュづくりが並行してスタートします。
混ぜて、こねて、叩いて
「オレンジのほう、ドライイーストをお砂糖の隣に、まず小さじ1杯。ここに卵が入るのでスケッパーで卵が入る場所をつくっておいて……と、仕込み水の牛乳をイーストめがけて(笑)入れていただいたら木べらでまぜていきます。
カンパーニュは粉が全部で300グラム。最初から半量入ってますから大変ですよー。はい、こちらも仕込み水を入れていただいて…水もオレンジ風味のパンの牛乳と同じように40℃くらいに温めていまーす。
ちなみに全粒粉は小麦。胚芽やふすまを全部粉にしたもの。ライ麦はまた違った種類の麦で、酸味があって、少しどっしりした感じですね」
和やかムードの中でも、パンの基礎知識はしっかり説明されます。
生徒さんが、ボウルに入った生地の素を、力強く勢いよく混ぜていきます。
レッスンがはじまって数分で、気づけば会話も止まり、生徒さんは生地と一対一で格闘しているよう。
「手を止めて、生地がぷくぷくとしはじめたら結構ですよー………うん! それでいいですねー そこで粉を全部入れましょう。大きく混ぜて、粉っぽさがなくなったら台の上に出してこねていきますねー」
「今日は生地のタイプが違うのでおもしろいですね。バターの入るオレンジ風味のほうはまずバターをしっかりと生地に入れるようにしてください。カンパーニュは生地が多いので大変ですよー 手につきやすいですしね、がんばって!(笑)」
すると生徒さんのお1人から悲鳴。「はやくも手に生地がまとわりついて…毛羽立ってきましたー!(笑)」
「手早く手早くー 生地が転がってしまう場合は、空いているほうの手で、生地を押さえてみてください」と河合さんがアドバイス。
「あーなるほどぉー……あ、でも生地がこびりついて手がどんどん大きくなっていきます、先生!」
「あらあら大変!(笑)スケッパーでちょっとこそげおとしましょうねー」
一難去って(笑)また集中。生徒さんはこねの作業にもくもくと没頭しています。
「オレンジ風味のほうはどうですかー?」と、河合さんは順調な生徒さんの様子も確認します。
「けっこう柔らかくなってしまいました。これでいいんですか?」
「牛乳を仕込み水に使うとまた違ったしっとり感が出るんですね、これで大丈夫ですっ! はい、オレンジのほう、バターがしっかり入ったところで、たたきの作業に進みましょう。4本指をしっかりかけて…はい!そうです。カンパーニュは分量が多いので生地を分けてたたきをしてみてください」
河合さんの号令で、生地をこね台にたたきつけては伸ばし、折り返す…を繰り返す生徒さんたち。ペッタンペッタンと、お餅つきのような楽しい音が室内に響きます。
(次回へつづく)
企画構成=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
インタビュー/写真=宮野友紀子(Dreamia Club)
</div
プロフィール
河合 香(かわいかおる)さん
K’s Kitchen主宰/食育指導士
1966年福岡生まれ。
会社員時代に友人に誘われて行った料理教室で横野律子先生と出会い、
家庭料理の大切さを学び、食に興味を持つようになる。
1994年より横野先生の自宅料理教室に通い始め、
アシスタント等を経験し、現在に至る。
2006年、手ごねパン教室「K’s Kitchen」をOPENさせる。
2007年より「西部ガス香椎教室」にて「初めてのパン作り」講座を担当する。
現在も自宅教室「K’s Kitchen」と「西部ガス香椎教室」にて楽しいパン作りを実践中!
サロン情報
K’s Kitchen
ホームページ、ブログ:
K’s Kitchen HP