クッキングスタジオ チャコ主宰 杉田久子(すぎた ひさこ)さん
東京と大阪、二大都市のほぼ中間地点にある静岡県浜松市。浜松と言えば浜名湖のうなぎが有名ですが、日照時間が長く温暖な気候のため、野菜や果物、花などの農業生産高は全国上位で、実は農業の街でもあるそう。利便性がありながら、四方を海、川、山、湖に囲まれ四季折々の自然と豊かな恵みを楽しめる、そんな魅力的な街の一角に『クッキングスタジオ チャコ』はあります。
夢と思いの詰まったサロン
浜松駅から車で約7~8分。「クッキングスタジオ チャコ」の駐車場に到着すると、「こんにちは~!」と明るい笑顔の杉田さんが出迎えてくださいました。
まるでリゾート地のおしゃれなプチホテルのような、2階建の白亜のかわいらしい洋館に、思わず取材スタッフから「素敵!」「かわいい!」と歓声があがります。
「浜松は車で移動する人が多いので、生徒さんが困らないように」と、9台も止められる駐車場も完備。お家のまわりには、杉田さんが自ら手入れしているという季節の花が美しく植えられており、女性なら一度は憧れる真っ白な洋館の佇まいに、サロンに入る前からワクワクしてきます。
ふと目にとまったのは、玄関ドアの上に掲げられているサロンの看板。サロン名と共に、桃の絵が描かれているのです。
「なぜ桃かと言いますと、家を建てる前、この敷地には桃を植えていたんです。家を建てるにあたって切らなければならなかったのですが、私の母がとても悲しみまして・・。せめて看板に絵を入れて、思い出を残そうと思ったんです」
とエピソードをお話くださった杉田さん。
実はこちらのサロンは、十数年前に、長年の夢だった料理教室を開催することを前提に、杉田さんがデザインを考え思いを込めて作り上げたそう。
看板だけでなく、あちらこちらに杉田さんの夢と思いが詰まっているサロンなのです。
キッチンが2台!料理サロンのための家
レッスンが行われるのは、1階の広いキッチンスペース。
一歩入ると、一番出汁のよい香りに迎えられました。テーブルには今日使われる食材がきれいに並べられており、アシスタントさんがきびきびと準備を進めていらっしゃいます。
カーテンやお花はサロンのテーマカラーである黄色で統一されていて、白い壁に映えてとても明るい印象。二か所の出窓からは日差しが差し込み、目の前の川べりの風景もほのぼのとしていて心が癒され、ほっとできる居心地の良さを感じます。
室内には、長年ガス会社が運営する料理教室に携わっていらした杉田さんの経験や知識がいかされた、料理サロンとして便利な設備や配置の工夫がほどこされていました。
まず目に飛び込んできたのは2台もあるシステムキッチン!
「1年間かけて何軒も何軒もキッチンメーカーのショールームを回り選びました」というキッチンは、壁付けのI型が1台、そして両側から使えるアイランド型が1台の計2台。クリナップ社製のものですが、収納性に優れていたのが決め手だったそう。
「レッスンは1回8~10名の生徒さんをお迎えし、実習スタイルで開催しているのですが、キッチン1台では厳しいので、やはり2台入れていて良かったと思っています。位置と形は、快適な導線を考えてこのようにしました」
アイランド型キッチンの端には、二口のガスコンロが設置してあります。システムキッチンにビルトインされている三つ口のガスコンロと合わせ、火元が五口もあるのでとてもスムーズに作業がはかどるそう。
そして室内の真ん中には、どーんと大きな作業台兼テーブルが置かれています。
「生徒さんみなさんに協力し合って作っていただくので、作業場所を広く持ちたかったんです」と杉田さん。
これが実に便利で、まな板を並べて一斉に材料切りから最後の盛り付けまで、全てここで行えます。
そのほか、人数や場面に応じて幅を変えられる伸縮式のダイニングテーブルや、調理家電がぴったりはいるサイズの棚、生徒さんの荷物置き用の棚などがそれぞれ便利な場所に置かれており、生徒さんの導線も十分確保されているのでストレスなく動けます。
「クッキングスタジオ チャコ」では、料理講座に加え、パンやスイーツの講座も開催されるため調理器具は多いはずなのですが、とてもすっきりしてるのは、キッチン自体にも収納スペースがたくさんあることと、杉田さんが収納上手でいらっしゃるからなのでしょう。
月替わりのメニューが大好評
レッスン開始時間が近づき、続々と生徒さんの車がやってきました。
みなさん譲り合って上手に詰めて駐車される様子はお見事!
「こんにちはー!」
ぱっと花が咲いたように明るい声の生徒さん方が入っていらっしゃり、すぐにエプロンを付けていかれます。
今日の生徒さんは、サロンのオープン時から長く通っている方、毎月欠かさず通っている方、そして久しぶりに復帰した方など9名、そしてDreamia Clubから事務局の浅井が参加させていただき、合計10名での開催です。
「クッキングスタジオ チャコ」では、一か月に約14回ほど料理・ケーキ・パンの定期講座が開催されており、月ごとに全く違うメニューが学べます。その他、プライベートレッスンもご要望に応じ開催しているそう。
取材に伺ったこの日の内容は、秋の味覚満載の和食がテーマの「10月のメニュー」。「菊ご飯」「鰤の幽庵焼き」「れんこんとしめじの山椒風味」「海老芋まんじゅう」「沢煮椀」のたっぷり5品です。
生徒さんが、「9月はエスニック料理だったんですよ。毎月ガラッと違う料理が学べるのは嬉しいし、得した気分です(笑)」と教えてくださいました。
「先月のタンドリーチキン、作った?」
「作った作った。おいしかったわ~」
と、生徒さん同士の楽しそうなお話も聞こえてきます。
平日昼間のレッスンとあって、今日の生徒さんの大部分は主婦の方。レッスンで学んだ料理をよく家で再現し、ご家族に喜ばれているそう。お料理のレパートリーが増えるのは生徒さんご本人もそしてご家族にとっても嬉しいことですね。
いよいよレッスン開始!
「ではみなさんお揃いのようですから始めますね。よろしくお願いします。さて今日のメニューは、秋のお料理です。鰤の幽庵焼きから説明をしますね。
幽庵焼きとは、江戸時代の茶人、北村祐庵が創案したと言われていて、ゆずの輪切りを加えて作った漬けだれに漬けて焼く焼き物のことを言います。
鰤は今朝市場から届いたばかりの新鮮なものです。これを調味料に浸してからグリルかオーブンでこんがりと焼いていきますね」
と、ホワイトボードを使いながら調理名の由来について教えてくださるのも嬉しいところ。次々に、今日の食材と作り方の手順の説明をレジュメに沿って丁寧に説明していかれます。
中でも生徒さんの興味を一番引いたのは、立派な海老芋!
「海老芋は皆さんご存じでしょうか。京野菜の一つで、ほくほくしていてとても美味しいんですよ。今日の海老芋は磐田産のもので、とても立派でしょう?私もこんな立派な海老芋は初めて見ました!今日はこれを使って海老芋まんじゅうを作っていきしょう。
ご自宅で作る場合は、普通の里芋でもおいしくできます。冷凍の里芋でも大丈夫。冷凍のものを使うと早くできるので、忙しい時は利用するのも良いですね」
「海老芋まんじゅうは、蒸して作るのがお薦めではありますが、蒸して作るのがお薦めではありますが、最近はご自宅に蒸し器がない方も多いようですので、今回は蒸し器を使わなくてもできる簡単な方法で作っていきますね」
応用の仕方や、代替えアイデアも交えつつ、全てのメニューの丁寧な説明が終わりました。
「皆さん、だいたいわかっていただきました?わからないところはどんどん聞いてください。またあとでも説明しますね。では二班に分かれて早速作っていきましょう!」
杉田さんのかけ声で生徒さんが、バランスを取りながら二班に分かれ、早速計量などから始めていかれます。
和気あいあいと会話が弾み、だけれども手際よく調理が進んでいく生徒さんたち。実に楽しそうで、こちらもつい、もらい笑いをしてしまうほど。
リズムよく役割分担していかれるチームワークの良さは、素晴らしいの一言です。
続けて通いたくなる魅力
そんな皆さんのそばで杉田さんは、生徒さんたちの手順を確認し、アドバイスをしていかれます。
そして、皆さんが次の作業がしやすいようにフライパンや鍋を用意するなど、さりげなく皆さんの動きを読んで先回りして用意していかれる動きに、段取り力と生徒さんへの気遣いを感じます。
ここでお二人の生徒さんに、「クッキングスタジオ チャコ」に通い始めたきっかけを伺ってみました。
「私はまだ数回目の参加ですが、元々通っていた友人がレッスンを急に欠席しなければならなくなり、その時代わりに参加させてもらったのがきっかけです。参加してみるととても楽しくて、私も通いたい!と思い、それから通っています」
「私は、こちらができた時から通っています。たぶん私が一番古いかもしれません(笑)。毎月違うお料理が習えることと、先生のお人柄がとても魅力的で・・。ここにくると先生やみなさんから元気をもらえて、毎月とても楽しみなんです」
と嬉しそうに話してくださいました。
月替わりのオリジナルメニューに加え、サロンの明るく楽しい雰囲気と先生のお人柄に魅かれて通い続けている方が多いようです。
アシスタントさんも生徒さんからの質問にきびきび答えていかれ、おおいに頼れる存在。
あちこちで楽しそうな会話と笑い声が響く中、レッスンは続いていきます。
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=菊池友理
プロフィール
杉田 久子さん
料理研究家/栄養士/食育インストラクター/料理教室「クッキングスタジオ チャコ」主宰
・ SBS学苑提携料理教室「男のチャレンジクッキング」講師
・ 静岡服飾美容専門学校非常勤講師
・ ウィズガス「全国親子クッキングコンテスト」東三河大会審査委員
・ 浜松市公民館「男の料理」
・ アイミティ浜松「食育クッキング」講師
・ 浜松シルバー人材センター「離乳食」「介護食」講座講師
・ 浜松FM放送「Brush of Life」にて料理・ケーキレシピを紹介
・ 愛知県「お菓子の城」に超大型シュガークラフト「眠れる森の美女」を出品
【過去実績】
・ 中部ガス株式会社 豊橋・浜松「サーラ料理教室」講師
・ 名古屋栄中日文化センター料理教室講師
・ 東海福祉専門学校非常勤講師
・ フランス・パリのル・コルドンブルにて製菓研修
・ スイスのリッチモント製菓学校にて製菓研修
・ 静岡県主催「椎茸料理コンクール」ケーキ部門にて優良賞を受賞
・ 遠鉄百貨店友の会冊子にケーキレシピ掲載
・ 浜松フリーマガジン「ウィーラ」に恋めしレシピ掲載
・ サッポロワイン「サンタ・リタ」赤白ワインに合う料理レシピカード採用
サロン情報
クッキングスタジオ チャコ
・ 全国料理学校協会認定校
・ NPO食育インストラクター協会推進校
・ 遠鉄百貨店友の会提携料理教室
・ 教室内容
ルンルンクッキング教室/和・洋・中・エスニック料理
ケーキ・パン教室
プライベートレッスン教室
季節イベント教室
食育教室
フルーツカッティング教室
企業向けメニュー提案・料理撮影
ホームページ、ブログ:
HP
とっておきレシピ
れんこんとしめじの山椒風味
材料
れんこん・・・150g
しめじ・・・60g
実山椒・・・小1/2
サラダ油・・・適量
酒・・・大1/2
醤油・・・大1
みりん・・・大1/2
作り方
- 1.れんこんは、皮をむいて薄い輪切りにし、水にさらして灰汁抜きをし、水気を切っておきます。
- 2.しめじは、石づきを取って、食べやすい大きさに分けておきます。
- 3.鍋にサラダ油を熱し、れんこんとしめじをさっと炒め、酒、醤油、みりん、実山椒を加え、炒め合わせます。
海老芋まんじゅう
材料
海老芋・・・200g
塩・・・少々
牛乳・・・20ml
【A】
むき海老・・・70g
生椎茸・・・1個
玉葱・・・20g
生姜・・・少々
塩・・・ひとつまみ
酒・・・小2
片栗粉・・・小2
【B】
だし汁・・・400ml
塩・・・少々
砂糖・・・小1
酒・・・小2
醤油・・・小1
片栗粉・・・小2
人参・・・20g
舞茸・・・40g
三つ葉・・・4本
作り方
- 1.海老芋は皮をむいて、鍋に入れ、米のとぎ汁を海老芋がかぶる位まで加えてから加熱し、軟らかく下茹でします。温かいうちにマッシャーで滑らかになるまでつぶし、塩、牛乳を加えてよく混ぜます。
- 2.(A)のむき海老は叩いて細かくし、生椎茸、玉葱はみじん切りにします。(A)の生姜をすりおろして加え、塩、酒、片栗粉を混ぜて、まんじゅうの餡を作ります。
- 3.を4等分し、1人分をラップに広げ、2の餡を包み、まんじゅうの形を整えます。
- 4.鍋に湯を沸かし、3をラップごと入れ、約10分茹でます。
- 5.人参は千切り、舞茸は手で裂き、三つ葉は1.5cm長さに切ります。
- 6.(B)を鍋に入れ、人参と舞茸を加え火にかけ、野菜に火が通ったら、片栗粉を同量の水で溶いたものを加えとろみを付けます。
- 7.を碗に盛り付け、6をかけ、三つ葉を散らします。