「Mille piatti」主宰 山内千夏さん
期待に応える責任
――直接学びたい!の声に応えてスタートしたレッスン。始めてみていかがでしたか?
山内さん 楽しみにしていただいている以上がっかりさせてはいけないと、すごく責任を感じています。メニューも内容も、あきられないように頑張らなければ、と思っています。
――始めてみて良かった、と思うことはどんなことでしょう。
山内さん 生徒さんが毎月いらしてくださることで、いろいろとレシピを考えるきっかけができていると思います。復習しましたと写真を送ってくださる方もいらして、そんなときはとても嬉しいです。
左は「キクイモとゴルゴンゾーラのトルタサラータ」、右はマルケ~エミリア・ロマーニャで多く食べられている郷土料理、「パッサテッリ」。毎回様々な郷土料理を学べます。
――毎月レシピを考えるのは大変だと思いますが、どのようにしていますか?
山内さん 何が喜んでいただけるかな、と毎月考えるのは大変ですが、自分の中では、そろそろこの料理をやりたい、というものが浮かんできます。主には季節性と食材で決めることが多く、夏野菜が美味しくなってきたから夏野菜を使おうとか、今回のように、南イタリアに行ってきたので学んだお料理を紹介しよう、とか。
――イタリアの各地方のお料理をテーマにすることもありますか?
山内さん 地方ごとのフルコースだけをメニューにすると、肉ばっかりなど食材が重なってしまうこともあるので、今はレッスンでは特にしていません。お肉を食べられない生徒さんもいらっしゃいますし、メニューのバランスも考えて決めています。
イベントでは各地方ごとのお料理をテーマにすることがあります。
イタリアに恋をして
――長年イタリア料理を伝え続けていらっしゃいますが、先生にとってのイタリア料理の魅力は?
山内さん たくさん魅力がありますが、一言でいうと、家庭に根付いている料理であることと、地産地消であることだと思います。
例えば、今回行ってきたのは南イタリアのある地方でしたが、みんな家庭菜園をしていたり、足りないものはメルカート(ファーマーズマーケット)で買うなど、都会のようにスーパーで買い物をするという感覚があまりないんですね。
どこの地方もそうですが、生産者と消費者が密着していて、料理はとてもシンプル。ちょっとおもてなしするときは少し手をかけますが、やはりシンプルです。でもそれが、すごく美味しくて。
ずっとイタリア料理を追いかけていて、「なんで?」とよく聞かれますが、答えは難しいです。私が知りたいくらい(笑)。たぶん”恋に落ちた”のだと思います。
恋愛と一緒で、好きな人をなんで好きかと聞かれても、「全部!」って思いますよね。欠点があったとしても、それも含めて好き、みたいな。
イタリアを旅すると、日本のように乗り物は時間通りに来ないし、約束しても思うように事が進まないとか、うまくいかないことがたくさんありますが(笑)、それをカバーする人の魅力や愛すべき時間が流れています。
そんなところも含めて、イタリアがやはり好きです。きっと、イタリア好きの仲間たちもみんなそうだと思います。
生徒さんもイタリア好きな方が多く、旅行や食事の情報交換ができるのも楽しみのひとつ。
山内さん イタリアの田舎に料理を学びにいったりすると、いつのまにかすごい長いテーブルが用意されて、誰だかわからない人がわらわら入ってきて。せっかく日本から料理を学びに来たので、あれもこれも教えたい、でも食べきれないから家族や近所の人をいっぱい呼んでみんなで食べよう!と言って、気が付いたら知らない人がいっぱい(笑)。
日本でも昔はそうだったと思いますが、食卓を囲んでみんなで楽しい時間を共有することが自然なんですね。人と人の関係が近いのも魅力です。
――とても楽しそうです。イタリアは家庭の食事を大切にしていて、食で人と人がつながっている印象です。
山内さん 日本と同じでだんだん変わりゆく風景だとは思うのですが、基本はそうだと思います。そして、自分の街の料理が一番おいしいとみんな思っています。
明日は次の街に行くというと、なんでそんなとこ行くんだ、ずっとここにいればよいのにと言われます(笑)。
今でも郷土料理がたくさん残っているのは、全然となりがうらやましいと思わないし、自分の街の伝統的な食文化や食材が最高に素晴らしい、と思っているのがイタリア人なのだと感じています。
それは、いろいろな国に侵略されたりしてきた歴史も理由にありますが、自分の街に、ルーツに誇りをもっている。そこがとても魅力だなと思います。
大切なことは世界共通
――どんな生徒さんが多いですか?
山内さん 料理を作るのが好き、そして、人と接するのが好き、ワインが好き、といった明るいお客様が多いです。その明るさにとても助けられています。
――毎回楽しみに通い続けている方が多いと思いますが、レッスンではどのようなことを心掛けていますか?
山内さん 星の数ほど教室があるなかで来ていただいた以上は、たとえ1回だけだとしても、その時間は楽しんでかえっていただきたいと思っています。
また、ひとりよがりにならないこと。作業がみなさんに均等にわたるようにすることも心がけています。
時間通り終わることも大事ですが、みなさんの疑問や質問を都度拾えるようにしたいと思っています。
大切なことは、世界共通。イタリアの食文化を通じて、食の魅力に出会えます。
――最後に、これからの夢や展望を教えてください。
山内さん これからもイタリアの家庭で作る、シンプルだけど美味しいお料理を伝えていきたいと思います。
また、イタリア料理のシェフたちとのお付き合いが多いのですが、皆さんからいろいろな情報をいただいて現地で勉強させていただけています。そしてシェフたちに私が見たものなどお伝えしたりして情報交換をしていますが、みんなで次の世代にイタリア料理の魅力を伝えていきたい、そのお役に立ちたい、と思っています。
――お話を伺って、イタリア料理にますます関心が深まりました!素敵なお話をありがとうございました。
山内さん こちらこそありがとうございました!
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スローフード運動の発祥でもあるイタリア。自分の街の伝統的な食文化に誇りを持ち、それぞれの家庭の料理を大切にし、食で人と人の絆がつながっていく暮らしは、国に関係なく、素晴らしいことだと思います。山内さんのお話から、その大切さを感じました。
日々の食への意識が変わる、そんなきっかけが詰まった素敵なレッスンやご活動、これからも広がりが楽しみです。
(おわり)
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=原田圭介
プロフィール
山内 千夏(YAMANOUCHI CHINATSU)
料理家 大学で食物学を専攻後、管理栄養士免許取得。製菓会社にて商品企画に携わったのち、かねてより関心のあったイタリアへ料理留学。帰国後、料理教室勤務を経て、イタリアの家庭料理の魅力を伝える料理家として活動中。
著書に「トルタ・サラータ」、「カルパッチョ!」(いずれも文化出版局)がある。
管理栄養士、調理師、ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル、アンチエイジングアドバイザー
山内 千夏(YAMANOUCHI CHINATSU)
料理家 大学で食物学を専攻後、管理栄養士免許取得。製菓会社にて商品企画に携わったのち、かねてより関心のあったイタリアへ料理留学。帰国後、料理教室勤務を経て、イタリアの家庭料理の魅力を伝える料理家として活動中。
著書に「トルタ・サラータ」、「カルパッチョ!」(いずれも文化出版局)がある。
管理栄養士、調理師、ワインエキスパート、チーズプロフェッショナル、アンチエイジングアドバイザー
サロン情報
Mille piatti
イタリアの家庭に伝わる郷土料理に魅了され、20年ほど前からイタリアの家庭料理を学んでいます。日本の家庭でも愛される、シンプルで栄養ゆたかなイタリア家庭料理を中心に、皆様の食卓を健康に、そしてより豊かなものにできるお手伝いができればと日々思っております。
ジャンル:
イタリアン、ワイン、チーズ
所在地:
神奈川県藤沢市