「馬場香織クッキングサロン」主宰 馬場香織さん
お教室の開催情報
――お疲れ様でございました。お料理のコツがぎゅっと詰まった充実のレッスンでした!
たくさんお聞きしたいのですが、まずはお教室の開催情報を教えてください。
馬場さん ありがとうございます。レッスンは、基本的に火曜日クラスと土曜日クラスがあり、そのほか、グループレッスンをお受けしていて、平均すると月に10回くらい開催しています。
和・洋・中ほか世界中のお料理を、家庭で簡単に美味しく作れるようできるだけ身近な食材を使い、毎回平均4~6品をご紹介しています。
例えば「洋」でしたら、前菜からデザートというように、コース仕立てでお教えしています。
――毎回異なるジャンルのお料理を学べて楽しそうですね。メニューは月替わりですか?
馬場さん それが・・そうしたほうが運営はラクだよとアドバイスももらうのですが、一ヵ月同じお料理をお教えすることは私が飽きてしまって(笑)。クラスごとにメニューを変えています。
そのほうが、新しいレシピの開発にも役立ちますし、教え方の工夫をしますから私自身も勉強になるんです。
料理を学ぶことを通じて仲間の縁も生まれるあたたかい雰囲気も魅力
――なるほど!レシピ作りやご準備は大変かもしれませんが、先生にとっても毎回新鮮で楽しそうです。
お教室には長く通う生徒さんが多そうですね。
馬場さん そうですね、長い方ですと20年近く通ってくださっています。
曜日ごとに固定メンバーでの開催となりますので、皆さんすごく仲良くなられます。先日は一緒に築地に買い物に行ったり、そういえば以前、クラスで韓国 食の旅に行ったこともありました。
同じクラスになったことがご縁で仲良くなっていく生徒さんが増えることは、とても嬉しいです。
――お教室はとても人気で、いまウエイティングリストには200名ものご登録があるとか。
馬場さん おかげさまでそうなのです・・。キャンセルが出たときに、ご登録いただいている方々へメールでご案内をお送りしています。
「馬場くんちのごはんがおいしい!」
――最初にお教室を始めてからもう30年以上とのこと。始めたきっかけを教えてください。
馬場さん 二人子どもがおりまして、もう二人とも今は成人していますが、まだ幼稚園のころ同じ幼稚園のお子さんが遊びにきて、うちでご飯を食べることがよくありました。昔のことですから、遊んで、ごはん食べて、そしてお風呂も一緒に入って。
子ども同士で遊んでくれ、あとは寝かせるだけですから、うちもラクだったんですね。
そんなことがよくあったのですが、あるとき「馬場くんちのごはんがおいしい!」というお子さんの声が広がって、ママたちにお料理を教えて、と言われたんです。
料理学校などで習ったわけではないですし、私の味で良ければ・・・とママ達に気楽な感じでお教えしたのが始まりです。
――そうだったのですね。お子さんは美味しさに素直ですものね。とても美味しかったのだと思います。
馬場さん しばらく細々と続けていましたが、3度目の主人のアメリカ転勤の時、子どもたちがスクールバスで現地の学校に通うようになると。その間まとまった自由な自分の時間を持つことができるようになりました。
そこで、この時間を有効に使って料理を本格的に学びたい!と思い、ニューヨークの有名な料理学校に通い始めました。
ここでかなりラッキーなことがありました。
子ども達の「おいしい!」の声から始まったレッスンは、いまではウエイティング200名以上
――何でしょう!?
馬場さん ちょうどその頃アメリカでは日本食ブームで、学びたい人がたくさんいました。 でも教えられる人がいない。カオリ、教えてくれないか?と言われて、途中からは学びながら日本食を教えた時期もありました。
――それはすごい!
馬場さん 日本人って欧米人に比べたら圧倒的に包丁使いがうまいでしょう?彼らからすると驚きで、一通りの日本食もできますし、「教えることができる」と思ったようです(笑)。
最初は驚きましたが、報酬の変わりに好きな授業をどれだけ受けても良いと言っていただき、それならば、と引き受けました。
といいますのが、ビザの関係で「働いて報酬を得ること」ができないので、報酬の代わりに授業を、ということなのですが、アメリカでは教育に関する費用はとても高いですからこんな嬉しいことはありません。フランス料理、イタリア料理、コンチネンタル料理など、幅広く学びました。
――貴重なご経験でしたね。教える立場に立つことで学ぶことも大きいと想像します。
馬場さん そうですね、とてもよい経験でした。教えるにあたっては当時英語力に不安がありましたので、そこで教えている女性の先生に手伝ってもらい、カリキュラムを組んで、教え方を考え、クラスでは彼女に通訳をしてもらうなど工夫をしました。
その後まもなく主人の帰国が決まり、そこで日本料理を教えたのは1年だけでしたが、このときに学んだ知識はとても役に立っています。
そして帰国後、やはり料理が好きでこれをライフワークにできれば良いなーと思い、料理教室を開始しました。
生徒さんから学ぶこともたくさん
――そうだったのですね!貴重な体験、学びをされたのですね。
やはり小さい頃からお料理好きだったのでしょうか。
馬場さん 中国に「人が集まる家には幸せが来る」といった意味の故事があるそうで、父はよくそれを言い、部下の方々を家に招いていました。
当時は今みたいにお店がたくさんあるわけでもないですし、上司が部下を家に呼んでもてなすことがよくありました。母が手料理をふるまっていたわけですが、それを手伝い、子どもながらに楽しいなぁと思っていました。
また、父がよく美味しいものを食べに連れて行ってくれていたので、料理を作ること、もてなすこと、食べることは大好きでした。
――素敵ですね!
馬場さん いま思うと父はあちこち連れて行って舌を育ててくれていたのかもしれませんね。
アメリカ駐在時も、週末はどこかの家庭に呼ばれるか呼ぶか、というおもてなしの機会が多くて、それでスキルも磨かれていったと思います。
「生徒さんから学ぶこともたくさん!」教室を始めたことで出会える縁や学びに感謝
――お教室を始めてみていかがでしたか?
馬場さん 教える立場ではありますが、学ぶこともとても多く、楽しいです。お料理のスキルも含めて、教えるためには学びますし、様々な生徒さんがいらっしゃるおかげで知らないこともたくさん教えていただけます。
先日は若い生徒さんがインスタグラムのアカウントを開き、使い方を教えて下さって、投稿できるようになりました!
――教室を主宰していらっしゃると、いろいろな出会いがあって素敵ですね。
馬場さん 料理教室を本格的に始めたのは子育てがひと段落してからですが、とても幸せなことだなと思います。
私の母はお茶の先生だったのですが、小さい頃母が忙しくて、週に1回私が夕食を作っていました。
母が準備してくれている材料を使ってチャーハンなど、簡単なものでしたが・・・。それを弟と食べていたのですが、その頃はそれがすごくイヤだったんです。
「いつか自分に子どもができたら、私は絶対働かない」って思っていました(笑)。
子育てが終わってからスタートすることができましたし、アメリカで料理の勉強もできたりと、とても恵まれていたと思います。
――教室運営はご自分のリズムやライフサイクルに合わせて調整できるのも魅力ですよね。
それにしても、子育てとおうちのことをしながらアメリカで料理学校に通い、講師までなさるなんて、すごくパワーのいることだったと思います。尊敬します。
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馬場さんがレッスンでも大切にしていらっしゃるのは、「家庭で作る美味しい料理」。おもてなしの多かった小さい頃からのご体験や、子育て、アメリカでの暮らしを通して、心のこもった手作りのお料理はそこに集まる人の笑顔を生み、絆を深め、幸せな気持ちになれる・・・そんな力があることを深くご存知だからかもしれません。
食べてくれる人の笑顔を想い、丁寧に料理に向き合う日々を重ねていらしたことが伝わる優しい笑顔とあたたかい雰囲気、そして、教えるために学び続けている姿勢がとても素敵。きっと生徒さんはこの雰囲気に出会いたくて通い続けていらっしゃるようにも感じました。
次回最終回は、お教室運営で心がけていることなどをうかがったインタビュー後半です。
どうぞお楽しみに!
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=原田圭介
とっておきレシピ
かにちらし
材料
・すし飯 3合
・炒りゴマ 大さじ3
・のり 適宜
・錦糸卵 卵4個分 ・・・ボールに片栗粉大さじ1と、水を入れよく混ぜ卵を割りとく
・蟹 蟹缶1缶(大)でもよいし、カニのほぐし身でもよい
・甘酢 (酢と砂糖同量 大さじ2ずつ)
・きぬさや 適宜
作り方
- 1.すし飯を作り、白炒りゴマをまぜておく。
- 2.蟹缶は甘酢につけておく。
- 3.器に半量のすし飯をよそい、海苔を一面におく。
- 4.残りのすし飯をおき、錦糸卵を広げ、中央に軽く水気を切った蟹を盛り、千切りにしたきぬさやを散らす。