「馬場香織クッキングサロン」主宰 馬場香織さん
失敗には大切な学びが詰まっている
「ひな祭り」をテーマに、9品の和食を学ぶ今回のレッスン。
まずは着席して、下ごしらえや手順などを含め、丁寧なレシピの説明が行われました。
そして終了後は、どのお料理の計量を担当するかなどうまく皆さんで分担して、早速実習の開始です。
今回は何度かご参加経験のある方ばかりとあって、手際よく計量や切りものに取り組んでいかれます。
「では皆様、鶏軟骨をフードプロセッサーにかけて細かくしていきますので、見てくださいね。
どれくらい細かくするかはお好みですが、あまり細かくするとコリコリ感がなくなってしまいますのでほどほどがよいと思います。
ハイ、これくらいがよいですね。ではここに、しょうがとおねぎのみじん切りを入れてください」
「次に錦糸卵の作り方です。玉子だけですと破れやすくなってしまいますので、水溶き片栗粉を入れてよく溶き混ぜます。
フライパンを熱してこうして卵液を流して・・・。1枚目はどうしても失敗しやすいですが、2枚目からはうまくいきやすいですよ。はい、できました!誰かやってみたい方はいませんか?ぜひ挑戦してみてください」
作業を分担をして進めてもらいながら、大切なポイントは必ず手を止めてもらって全員で共有します。
なぜこうするのか、なぜこのひと手間が必要なのか、といった調理の理由やコツをわかりやすく伝えていかれます。
「失敗しても大丈夫!みんなでリカバリー方法を学びましょうね」失敗を恐れなくて良いあたたかい雰囲気も魅力です。
「あ、先生、薄焼き卵が破れてしまいました・・・」
「大丈夫大丈夫、そういう場合はこうしてやれば破れがなくなりますよ」
レッスン中の失敗は大歓迎、という馬場さん。
失敗があるとリカバリー方法を伝えることができ、皆さんの勉強になり、料理が上達する機会にもなると、笑顔で対応されます。
ほっと安心する生徒さん。
次はとても上手に薄焼き卵ができました!
五感で学び、身につける
「それでは『タイのこぶじめ』のこぶを甘酢につけて戻します。手でこういう感じで甘酢を塗っていきます。ところで皆さん、甘酢と寿司酢は違うんですよ。割合を言いますね。お酢はこちらを使います」
調味料はできるたけ良いもの、本物を、とこだわり、厳選しているという馬場さん。
醤油、味噌、酢、みりん、料理酒など、全て生産者さんが明らかで時間をかけて昔ながらの製法で丁寧に作られたものをレッスンで使用していらっしゃいます。
「食材もそうですが、調味料も良いものを使うと、お料理がぐんと美味しくなりますよ」
レッスンに通い始めて調味料の大切さを学んだ、改めて本来はどう作られるものなのかを知った、調味料をはじめ食材の選び方が変わった、という生徒さんが多数です。
プロの手仕事を間近で見て、五感で学べるのは料理教室に参加する一番の醍醐味
「では次に『鰆の西京漬け』の漬け方です。2%の塩を振るので・・160グラムの切り身だったら塩は何グラム?そうですね、ではその分量を降りますが、こうしてバッドに先に塩を振って、その上に鰆を置いて残りを振ります。そうするとひっくり返さなくてよいですよね。
しばらくすると水気が出てきますのでしっかりふき取ります。
漬けるお味噌ですが、西京白味噌、みりん、日本酒をよく混ぜた味噌床を味噌どこは担当の方が当日作って下さったものを味見しています。実際に召し上がって頂いて鰆は前日私が漬けたものでした。ぜひ味見してみてください」
味噌床の味を確認して鰆を漬けたあとは、タイの切り方のデモと実習、菜の花の食感も彩りもよい茹で方、つくねを丸めるときの秘訣、こぶ出汁のこぶを引き上げるタイミングの見極め方、道明寺粉に少しずつ色を加えるやり方など、本やテレビやネットでは学べないたくさんのコツを段取り良く伝えていかれます。
これこそが料理教室に参加する醍醐味!
これをやることで料理が各段に美味しくなる、という大切なひと手間を知り、目で見て耳で聴いて鼻でにおって舌で味わい手で触れて・・と、料理を全身で感じ、学ぶことができます。
お料理以外も学べることがいっぱい
「では蛤のおすいものを仕上げていきましょう。ここからが大事なところです。最後に木の芽をのせるときはこのままの味でよいのですが、今日は白髪ねぎをのせますので、もう少しお塩を入れましょう。白髪ねぎは水にさらしますよね。水気をよく切ってもどうしても残りますから、味が薄まってしまいます。その分、お塩で調整するというわけです。
蛤は、殻から外し、食べやすいようにします」
「最後に、巻き寿司を一人一本作っていきましょう。のりは表と裏がありますよ。このように酢飯をのせて具をおいていきます。ここで一度ぐっとまいて・・・ハイ、完成です!では順番にやってみましょう!」
ごはんや具材を置くバランス、力の入れどころや抜くところを細かくレクチャー。馬場さんのリズミカルな巻き方を真似て、皆さんとても上手に巻いていかれます。
「すごい!上手です!お寿司屋さんになれますよー!もう巻き寿司は作れますね。もうすぐ節分ですが今年の恵方巻はぜひお家で作ってくださいね」
「絶対作ります!」
生徒さんに笑顔が広がり、お料理を楽しんでいることが伝わってきます。
一層美味しく見える盛り付け、思わず歓声があがるような彩りでテーブルが華やぎます
全てのお料理が完成したら、盛り付けの開始です。
「盛り付けは、平坦ではなく高低差をつけるとお料理がおいしそうに見えますよ。お鉢や大皿に盛るときは中央を高く富士山型に、皿盛りは山川(やまかわ)と言って向こう高く手前低くという盛り付けが美しいとされています」
和食の盛り付けのルールや器に合わせ美しく見える盛り付け方も丁寧に指導していかれます。
こうした器の使い方もおもてなしのお手本になると、毎回異なる演出が生徒さんからとても喜ばれています。
ずらりとお料理が並ぶと、食卓に春が来たかのように華やぎました!
皆さんが着席されたら、お待ちかねの試食のスタートです。
お知り合い同志のご参加とあって、とても和やか。
ここで、お教室の魅力をお尋ねしてみました。
「お料理の作り方はもちろんですが、材料や調味料のことも詳しく教えてくださるのでとても勉強になります。お料理に合わせてテーブルのイメージや盛り付け方も毎回変わるので楽しみです」
「お料理だけではなくテーブルコーディネートも一緒に学びたかったので、毎回違う内容を学べて嬉しいです。美味しくできるコツがいっぱいですし、身近な材料で難しくなく作れるのも魅力です」
「おもてなし料理を学びたくて申し込みました。臨機応変に対応してくださり、説明もとてもわかりやすくてしっかり身に付きます。自宅でも作って家族に喜んでもらっています」
と、お料理がしっかりと身につくこと、テーブルコーディネートや盛り付けなど、おもてなしに役立つ知識も一緒に学べることが大きな魅力とのことです。
また、皆さんから「先生の気さくなお人柄が魅力!」というお声が重なりました。
お教室に一歩入った瞬間からふわっと居心地の良さを感じていましたが、その空気感は、生徒さんが緊張することなく楽しみながら学べることにもつながっています。
そんなやわらかな雰囲気は、「来てくださる生徒さんにいつも感謝を忘れない」「お料理を好きになり楽しんでほしい」という馬場さんの思いと、生徒さんを緊張させないよう気さくにあたたかく迎える笑顔から生み出されているように感じました。
今日は9品とたくさんのお料理を学びましたが、一品一品に家庭でプロのように美味しくできるコツがたくさん詰まっていて、きっと皆さんの自慢のお料理になるのではないでしょうか。
お料理の奥深い楽しさ、大切さに触れ、確実に腕が上がる、とても素敵なレッスンでした。
次回は、お教室の情報や開始したきっかけなどをうかがったインタビュー前半をお届けします。
どうぞお楽しみに!
インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=原田圭介
とっておきレシピ
かにちらし
材料
・すし飯 3合
・炒りゴマ 大さじ3
・のり 適宜
・錦糸卵 卵4個分 ・・・ボールに片栗粉大さじ1と、水を入れよく混ぜ卵を割りとく
・蟹 蟹缶1缶(大)でもよいし、カニのほぐし身でもよい
・甘酢 (酢と砂糖同量 大さじ2ずつ)
・きぬさや 適宜
作り方
- 1.すし飯を作り、白炒りゴマをまぜておく。
- 2.蟹缶は甘酢につけておく。
- 3.器に半量のすし飯をよそい、海苔を一面におく。
- 4.残りのすし飯をおき、錦糸卵を広げ、中央に軽く水気を切った蟹を盛り、千切りにしたきぬさやを散らす。