一生の宝物になるつながりに出会える場所

「デリス ド キュイエール 川上文代料理教室」主宰 川上文代さん

インタビュー連載 第4回

今月のサロネーゼは、都内渋谷区で「デリス ド キュイエール 川上文代料理教室」を主宰する川上文代さん。 フランス料理、イタリア料理を中心に少人数で本格的な内容が学べるレッスンには、初心者からプロまで、全国から幅広い生徒さんが通います。 今回は毎月開催されているフランス料理レッスンにお邪魔し、その模様と川上さんのインタビューを4回にわたりご紹介します。 最終回は、これまで乗り越えてきたことやお教室運営に込めている思い、今後の夢をうかがったインタビュー後半をお届けします。

掲載日:2015/2/23(月)

川上文代さん

川上文代さん

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お教室のこだわり、心がけ


――お教室は4月から20年目に入るそうですが、いつもレッスンで心がけているのはどんなことでしょうか。

川上さん いろいろありますが、まずは食材です。なるべく良い食材、本物の食材に出会ってほしいので信頼できる生産者さんや業者さんからフランス産やイタリア産など、本場のものを多く仕入れています。
また、たいてい販売用も用意していますので、レッスン後に買って帰って早速家で作っていただくことができます。

今日のレッスンで使ったチョコレートのテンパリングもそうですが、良い材料を使って贅沢に作りますが、生徒さんが家庭で作りやすいようにもしています。料理学校では1回に最低500g使うところ、少量でも気軽に作れるコツをお伝えしています。

――今日のレッスンで使った鴨や塩干しタラなど、入手しにくい食材もここですぐに購入できるのは嬉しいですね。
フライパンで焼くかオーブンで焼くか、その場で生徒さんのリクエストに応えてその場で決めるなど臨機応変なのも魅力ですね。


川上さん なるべく生徒さんのリクエストに応えたいので、その場で聞いて調理法を選ぶこともあります。
そのほか、ガスとIHの両方ありますので、どちらで調理したいか選んでもらったり、包丁や鍋、調理道具も多種多様にありますので、使い比べをしてもらったり。
なかなか家庭ではできない体験も盛り込んでいます。

そのほか、必ずポイントポイントで味見をしていただくことと、全員に作業してもらうこと、全員と会話をすることを心がけています。参加してくれたみんなに、今日は来て良かった、楽しかった、いっぱい学べた、美味しかった、自分でも作れる、と思ってもらいたいので、いつも生徒さんの立場に立って考えるようにしています。

以前はアシスタントさんがいて下準備や片づけをしてくれていたのですが、それだと生徒さんが、家で実際に作るときにわからず、基本の計量も時間がかかったり、技術や料理のフットワークが身につかず、私との距離も空いてしまいがちでした。
数年前からアシスタントなしでこのスタイルにしたところ、生徒さんがぐんと伸びました。私との距離も近いですから質問も増え、どんどん腕を上げてくれています。
専門学校と教室の中間くらいの、ベストなスタイルでレッスンができていると思います。


川上文代先生1

本物の食材に出会え、少人数でプロのコツを学べ、先生との距離が近いのも魅力


――皆さんのご満足度がすごく高いのは拝見していてもひしひしと伝わってきました。
試食のときにいろいろテイスティングがあるのも驚きました。


川上さん 生徒さんにはなるべくたくさん本物の食材に出会ってほしいと思いますし、比べる機会も大切です。例えばパンと一緒にオリーブオイルやジャムを数種類試していただいたり、撮影やイベントや試作も多いため、そのとき教室にあるものをいろいろお出ししています。

生徒さんが珍しいお土産をくださることがよくあり、みんなでありがたくいただくことも多いです。
私もそうですが、食いしん坊で食の好奇心が高い生徒さんが多いので(笑)、旅行先や家や嫁ぎ先での食べ方を話したり、様々な方法で食べ比べしたり、とても楽しいですよ。

――そうした情報交換ができるのもお教室に通う楽しみの一つですね。


今年は「グリラー」!


――料理本の出版ももう80冊以上とのことですが、直近では魚焼きグリルを活用した料理本をだされたとか。

川上さん はい、1月末に主婦と生活社さんから「魚焼きグリルのかんたん絶品レシピ」を上梓しました。
魚はもちろん、肉や野菜からお菓子まで美味しく焼ける「魚焼きグリル」を使ったレシピ集です。

魚焼きグリルは日本ならではの調理器具ですが、手軽で一番おいしく調理できる方法だと思います。
1分間で300℃以上になり余熱の必要もなく、スピーディーに調理できます。強火だと庫内は400℃近くなりピッツァも表面はカリッと香ばしく、中はもっちり焼け、ピザ釜に匹敵するほどです。

また、”焼く”だけでなく”煮る””炊く””蒸す”こともできて、コンロの火口が鍋で塞がっているときの、もう一つの火口として大活躍します。
網焼きで食材の余分な油も落ちてヘルシーに仕上がりますし、魚を焼くだけでは本当にもったいないので、是非いろいろな料理に活用していただきたいです。


川上文代先生2

「魚焼きグリルは日本ならではの素晴らしい調理器具。もっと活用してグリラーになりましょう!」


――本の冒頭にありましたが、小さい頃からグリルを活用して料理をする「グリラー」だったとか(笑)

川上さん そうなんです。実家では、朝のトーストに始まり、塩鮭、ししゃも、くじらのたれ、めざし、いか、あじのひらきなど、魚焼きグリルで焼いた魚介を小さい頃から毎日食べていましたから、私の食生活には欠かせない調理器具です。

ちょっとしたコツで、べちゃつきやすいチャーハンや野菜炒めもおいしくでき、普段のおかずはもちろん、オーブン代わりに焼き菓子までできるんですよ。
今年は「グリラー」をはやらせたいですねー!

――それは目からウロコですね。魚焼きグリル、もっと使いこなします!


目指すのは「都会のオアシス」


――多くのシェフや料理家さんから師匠として尊敬されるベテランでいらっしゃいますが、いまでも勉強し続けていることはありますか?

川上さん 食の世界は深く広いですから、生涯勉強です!
食と健康、食と農、各国の食文化など、私自身が学びたいということもあり、教室では様々な講座を開催しています。
また、川上文代と一緒に行くツアーとして、私の地元である千葉・南房総館山の農業体験ツアー、復興支援ツアー、海外研修ツアーなどもあります。
農業体験ツアーは随時開催してますが、種の蒔き方やクワの使い方など農家の方に指導していただき、摘みたての野菜の美味しさを畑で味わい、素材を生かした料理教室などを体験します。

募集が始まりましたが、7月には「川上文代と行くあれからの大船渡」として、東北大震災の復興支援活動の一環として大船渡の屋台村で現地の素材を使った料理を振る舞ったり、食べ歩きをしたり、現状を視察したり、現地の方々と交流を深めます。

10月には「川上文代と行くイタリアの食卓」として、北イタリアピエモンテ州を訪れます。アルバのトリュフ狩りや、マンマやシェフに郷土料理やパスタを習ったり、バローロのワイナリーやチーズ生産者を訪問したり、星付きレストランの食べ歩きをします。
食べ歩きや旅行を通じ、これからも皆様と共に様々なことを学んでいきたいと思っています。

――これから料理教室を始めたい方へアドバイスをお願いします。

川上さん 始めは大変なことだらけかもしれませんが、本当に好きだったら絶対頑張れるので、まずは計画を立てて挑戦していきましょう。
もちろん、やると決めたからにはとことんやらないと失敗するのでその自覚と責任はしっかり持って、収益をたてて自立できるように頑張ってほしいです。
辛くて苦しいことが大きいほど、乗り越えた先の成果は絶大だと思います。

明日の成功を祈り、食材はじめ色々な方への感謝の気持ちを忘れず、先生として元気にたくましく太陽のように明るく、尊敬されるような存在であって欲しいと願います。

――最後に、これからの夢やお教室の展望を教えてください。

川上さん 夢は、「本当の幸せをつかむこと!」です。そのためにはまず私自身が幸せでないと(笑)。
お教室の運営の安定もですが、やりたいことをやれて、仕事もプライベートも含めて、「あ~幸せ!」と心から思え、そして教室に来られた方に幸せな気持ちで帰っていただければと思います。

夜のレッスンで時々、「仕事がうまくいかなくて」「今日失敗してしまって」なんて暗い顔をした生徒さんがいらっしゃると、一緒に月を見上げて「大丈夫だよ、また頑張ろう~!」って話すことがあるんです。私自身、太陽に元気をもらい、月や星に癒されてます!
不思議なことに、一緒に美味しいものを作ってみんなで食べたら元気になるんですよね。
会った時は疲れた顔をしていても最後は笑顔になって帰ってくれるとすごく嬉しくて、やはり食のチカラはすごいな、と思いますし、みんなに元気をあげることができる都会のオアシスでありたいと思います。

料理だけでなくハート面でも、生徒さんに「来て良かった」「通っていて良かった」と思ってもらい続けることができたらいいですね。
そのためにも私自身も幸せで、心の底から笑顔であり続けたいと思います。


川上文代先生3

「後輩には同じ辛さを味わわせたくない」。料理を仕事にする人の交流や学びの機会も提供


――お料理だけでなく人生の師匠でもいらっしゃいますね。

川上さん いえいえ、そんなことはないですが・・。でもせっかくここでご縁があった生徒さんみんなに、食を通して幸せになってほしいと思っています。

実は、私が辻調理師学校で職員になった30年ほど前は、あまり女性はいなかったんです。男の先輩から「なんで女がプロの世界に入ってくるんだ。みんな3年くらいでやめていくのに、どうしてお前は残るんだ。」といわれて、悔し涙の日々でした。

同期の男子はテレビや校長の食事会など、花形の仕事が来ても、私は学生の実習や授業の準備ばかり。料理の道は自分で決めたので絶対負けないと思い続けながら頑張り、6年目には教壇に立たせていただきました。6年目の終わりには、料理では女性として初めてのフランス校勤務になり、フランス校赴任の話を聞いた時には”まさか、本当に行けるの?”と思うと同時に、うれし涙が止まらず、自宅で「やった、やった、やった~。」と叫んでしまいました!

今まで頑張ってこれたのは、こういった悔しさがバネにもなっています。
ですのでその分、後輩の女性たちには頑張ってほしいと思いますし、絶対そんな思いをさせたくない、こんな辛い思いは私たちだけでいい、と思ってきました。

12年間勤務した辻調を退職し、料理研究家として19年前に独立しましたが、それまでの男性中心の世界から女性中心の世界に一気に様変わりしました。その頃は、横のつながりがあまりなく、友人であった料理研究家の方に「今度独立しようと思うので、この世界のことを教えて欲しい」と相談したら、「ライバルになる人に、教えることは何も無い。相談すること自体、この世界のことをわかってない」と言われ、当時はとても閉鎖的な世界だと思いました。「いつか変えてやる!」と心に秘めながら、私のところに相談に来た方には、全て教えてきました。

料理研究家は、料理のことはもちろん、生徒さんの事や、カリキュラムや運営など、一人で悩むことが多くあります。
そんな方の何か励みになりたいという思いで辻調理師学校のOBで料理研究家やそれを目指す人を対象に、「アウラの会」という集まりが3月・7月・9月・11月の年4回教室で定期的に開催されています。
学校を卒業すると、普段なかなか顔を合わせる機会がないのですが、ここで交流や学びの機会を得て、お互いの教室を盛り上げて行ければいいなと思います。

これからも、食の世界で頑張る人達を応援して、何かあったときは協力したり切磋琢磨できるように、みんなで手を取り合って向上していけたらと思います。

――初心者からプロまで集まり、皆さんに惜しみなくスキルや機会を提供されるお取り組み、尊敬します。先生のもとで羽ばたいてく食のプロがこれからもどんどん生まれそうですね。
今日は素敵な機会をありがとうございました!


川上さん こちらこそありがとうございました!


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これまでの実績に甘んじることなく、常に勉強、常に前進をしながら、後輩たちもあたたかく応援し、様々な活動を通じて食から幸せを広げていきたいと話す川上さん。食は人と人をつなげる大きな役割をもっているということを改めて感じる、素敵なインタビューでした。

これからもここからたくさんの食のプロとともに、笑顔やつながりが生まれていきそうですね。
本格的な調理技術と食の知識が身につき、一生の宝物となるようなつながりも生まれるお教室や、教室を飛び出したツアーなど、ぜひ参加してみてください。

インタビュー・テキスト=窪田みゆき
写真=原田圭介



プロフィール

川上文代さん

川上文代さん
1983年、辻調理師専門学校を卒業。同校職員として12年間勤務。
この間、フランス三ツ星レストラン”ジョルジュ・ブラン”での研修をはじめ、辻調理師専門学校(大阪)、同グループであるフランス・リヨン校、エコール辻東京にてプロ料理人の育成に勤める。
●1996年、東京・広尾に「デリス・ド・キュイエール 川上文代料理教室」を開設。
持ち前の明るさと気さくな性格と確かな技術に裏打ちされた”本物の技”は知る人ぞ知る存在となっている。
教室では本格的なフレンチ・イタリアン・パティスリーを中心に、基本の家庭料理、世界の料理、オリジナリティ豊かな料理を提案。

サロン情報

「デリス・ド・キュイエール 川上文代料理教室」

デリスは「おいしい」、キュイエールは「スプーン」という意味です。『美味しい料理は、本では学べない”さじ加減”が大切!』という思いを込めて名づけました。
本当の料理を知りたい!レストランや料理教室を開きたい!食べること、作ることが大好きな方のための教室です。


ジャンル:

家庭料理、日本料理、イタリアン、フレンチ、韓国、インド、エスニック、パン、洋菓子、おもてなし、テーブルコーディネート、その他

サロン特長:

初心者歓迎、平日開催、夜間開催、土日開催、お友達同士歓迎、男性参加OK、予約制、各種イベントあり、駅近(徒歩10分以内)、お酒の提供あり

所在地:

東京都渋谷区広尾

ホームページ、ブログ:

http://www.delice-dc.com/

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