パン教室を越えたパン教室

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中川 佳省さん

インタビュー連載 第1回

今月のサロネーゼは、茨城県・つくばみらい市で「yoshimi baking school」を主宰する中川佳省さん。ご自宅を新築されたのを機に2年前に本格的にお教室をスタート、パンづくりを通して「家族が笑顔になる、自分がやさしくなれる」と熱いファンが集う、中川さんのレッスンにお邪魔しました。

掲載日:2011/2/7(月)

玄関から始まる"ヨッちゃんワールド"

「つくばエクスプレス」の開通によって、東京との距離がぐんと近くなったつくばみらい市。「未来」という言葉が入った市の名前は、全国でも類がないそうです。肥沃な土地で育った野菜や常陸牛やいばらき米など、おいしいものもいっぱい。みらい平の駅に降り立つと、空も土地も広々として、思わず深呼吸したくなります。

そんな街に建つ中川さんのお住まい。玄関のドアの横にさりげなく飾られた「Yoshimi Baking School」の看板と、素敵なリースが目印です。「どうぞ~」とドアを開けてくれた"ヨッちゃん"こと中川さんは、とびっきりの笑顔で迎えてくれました。
 

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玄関を開けると、まず目に飛び込むのは大きなフラワーアレンジ。このアレンジは季節ごとに、お友達のフラワーアーティストと一緒に作り上げるのだとか。

「今回のアレンジは、秋のお花に夏のお花をからめて、自然の移り変わりをちょっと味わえるようにしてみました。このお花は毎回ガラッと変わるんです。このお花はその時々の私の心の叫び(笑)であり、元気のもとです」。

ここのお花が、しばらく経つと短く切られて別の場所に飾られ、最後に先ほど私たちを出迎えてくれた、看板のリースになるのだそうです。

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玄関を開けてもう一つ気づいたのは、空気がなんともさわやかなこと。その正体は、お花の横にさりげなく置かれた「マジックボール」でした。

「大勢の方がいらっしゃるので、いつも空気をきれいにしていたいなと。これは消臭効果があるだけでなく、除菌までできるというのが気に入って。中に入れるソリューション(専用液)によっては、インフルエンザウィルスも除菌できるんですよ」。
 

リビングとひと続きながら独立したキッチン空間

高い天井が気持ちいい広々としたリビングの横に設けられたダイニングキッチンが、中川さんのお教室スペース。リビングがウッディなインテリアであるのに対して、キッチンは床も壁も白く、リビングとひと続きながら独立した空間となっています。

「白い床にはこだわりました。木目にすると全部一緒になっちゃうでしょう。生活スペースとはっきり区別したかったんです。でも、全体を通して見た時には違和感のないようにしたいし……と考えた結果、白い木の床に行き着きました。汚れがわかるほうが、いつも清潔に保つことができますしね」

お掃除が大変ではないですか?

「1日2回、ふき掃除をします。自分たちだけで使っている家ではないから、ふき掃除をして見えてくることもあるんですよね。こういうところが汚れるんだとか。そういう気づきを与えてくれるから、ふき掃除も大切な日課になっています」

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システムキッチンは、中川さんが選び抜いたクリナップのSSシリーズ。

「家を建てる時は、お教室をやろうと決めていましたから、それこそ東京まで行ったりして、いろいろなメーカーのショールームを見て歩いたんですよ。でも、何かピンとこなくて。高級感ばかりをうたったメーカーが目立つ中、クリナップのSSは、箱が全部ステンレスで頑丈な上、デザインが斬新、モダンで都会的センスが感じられて、さらにシンク下の収納力が決定打だったんです」。

手を使わなくても体で軽く押しただけでワンアクションで開く引き出しや、シャワーホースつきのグースネック水栓など、お教室でも日々使いやすさを実感しているそうです。

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中川さんが本格的にお教室を開いたのはこの家ができてからですが、それ以前からも乞われるままに、ご自宅でお料理やお菓子、パンづくりを教えていたそう。その時の経験が、新居のキッチンづくりにもとても役立っていると中川さんは言います。

「パンを焼く時に300度の高温になるから、オーブンの真上にも換気扇をつけたり、泡立て器などをあちこちで使えるように細かくコンセントをつけたり。前の家では、オーブントースターをつけただけでブレーカーが落ちて『今の誰~?』なんて(笑)。おかげで、使い勝手のいいキッチンができました」

センターキッチンの周囲がぐるりと開いた配置も、中川さんの工夫。5人もの生徒さんが同時に作業してもぶつかることがなく、とても動きやすそうです。ある時は作業台、ある時は試食タイムに囲むテーブル、ある時は家族の食卓にとさまざまな顔を持つテーブルも、システムキッチンに対してタテに配置されていることで、キッチンの一部としてスムーズに機能しているようです。

「家に来ると、なぜかお客さんがキッチンに立ちたがるんです。なんか手伝うよ、って、一緒になって食事の支度に立ってくれるの。つまみ食いもしやすいし(笑)」

キッチンには玄関に面した扉もあり、開け放せば作業中の中川さんと目が合って「キッチンからいらっしゃいよ」なんてこともあるそうです。

壁面に2台並んだオーブンのほか、さりげなく置いてある湿度計や加湿器も、ここがパン教室であることを物語っています。

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「パンは湿度が大切ですから、いつでも最適な湿度に保つことはとても大切。秋から冬にかけては乾燥しがちなので、加湿器をかけて湿度を上げるようにしています。理想は60~70%ですから、今日はちょっと乾燥していますね。フランスパンの仕上げを早くやらないと」

パンにいい湿度は、お肌にいい湿度でもあります。中川さんはじめ生徒さんたちのお肌がツヤツヤなのは、そのせいかもしれません。
 

いよいよレッスンスタート!

午前10時。朝の光があふれるキッチンでは、生徒さんたちがもう計量を始めていました。パンは配合がカギ。同じ味や食感を出すためには、粉やイーストなどの材料をきちんと計量することが、地味ですが味を決める大事な作業です。

「今日のクラスは、ハヤブサチーム(笑)。2年前から来てくださって、もう上級さんです。だからどんどん自分たちでやります」

ふと見ると、生徒さんたちはそれぞれ、とてもユニークな道具を手にしています。卵白と卵黄を一瞬で分けてくれる分離器や、ゆで卵をレンジで作れるゆで卵調理器、大小さまざまな色とりどりのスパチュラ、小さなタッパーウェアなど……。なんだかどれも使いやすそうです。

「どこで買ったかは覚えていないけど、『これ、便利!』と思ったらすぐに試してみるんです。便利なものはどんどん使わなくちゃ、ね」

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さすがハヤブサチーム、なごやかにおしゃべりしながらも作業はどんどん進みます。やがて舞台はテーブルに移り、生地をのばしたり丸めたりする、パンづくりのハイライトにかかりました。

「今日作るのは、ハムロールとサブマリン、モーレ、モンキーブレッドの4種類。ハムロールは初級で一番最初に教えるパンです。サブマリンは卵白と牛乳で作るパン。モーレはフランスパン生地ですが、フランスパンとはまた違うきめ細かさを堪能してくださいね」

と、中川さんの明るい声がキッチンに響きます。 
 

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「ひき丸め」と「ヨッしぃの法則」

まずはハムロールから。丸めた生地の上にハムを置き、麺棒でそっとのばしていきます。

「のばしてやろうとしてはダメ。生地を平らにするというイメージで麺棒を使うの。パンは『ひき丸め』が命なんです」

「ひき丸め」って、何でしょう。

「パンを丸めたりのばしたりする作業のことね。これをいかに手数少なく、生地を傷つけずにできるかが、一番大切。手数が多いと生地が傷つくし、傷つくと焼きムラができて硬くなるんです」
 

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市販のパンでも、この「ひき丸め」がうまくできたパンかどうかは見ればすぐわかるとか。「パンを買うときはお尻をひっくり返してみて。アンパンなんか、お尻を見たときにべたーっとついているのは、丸めができていないか過発酵の証拠。芯の位置がずれているのも丸めがダメ。おいしいパン選びのポイントです」

ひとつ勉強になりました!

「生地を触っていると、今日の生地かわいいな、いとおしいなと思えてくる。いとおしく思っていると、だんだんうれしくなってくる。もう1個できた、また1個できた、と。するとそれが『楽しい』に変わってくる。ね、だんだんみなさん楽しくなってきたわよね?(笑)で、楽しくなってきたなら、絶対おいしいものができる」

「いとおしい」が「うれしい」になり、「楽しい」になり「おいしい」になる。「しい」が4つ続くことと、中川さんの愛称をかけて「ヨッしいの法則」。

「家族がいとおしいという思いさえあれば、絶対においしいものはできるということ。私は、それが家庭料理の原点だと信じているんです。そしたら生徒さんが、『おいしいものができたらやさしくなれる』って言い出して。『いとおしい』『うれしい』『楽しい』『おいしい』『やさしい』の5つになっちゃった。ヨッしいの法則じゃなくなったので、いい名前を大募集中なんです」

ひき丸めの作業から、こんな大事なことを教えてもらえるなんて。中川さんのパン教室が熱い支持を集める理由が垣間見えたような気がしました。
 

次回へつづく



インタビュー・テキスト=奥谷裕子
写真=原田崇
 

 

プロフィール

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中川 佳省(なかがわ よしみ)さん

「yoshimi baking school」主宰

息子が幼稚園に通う頃、硬いパンしか焼けず「私には、パンなんて絶対焼けないんだわ~」っと思っていた時、お友達のお誘いでつくばのパン教室に勇気を持って訪ねました。産まれて初めてフワッフワのパンが焼けた時の感動は未だ忘れることができません。その時に何回「美味し~い・美味し~い」と叫んだことでしょう(笑) 以来、パン作りに魅了されてから5年!美味しい感動を誰かにお伝えできれば・・・っと自宅サロンを夢をみて、昨年9月パン講師資格を取得し自宅のキッチンにて20名程の生徒さんと毎日楽しい時間を過ごしています。

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