食空間を優雅に演出する方程式

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ひがし きよみさん

インタビュー 連載第2回

食空間コーディネーターひがしきよみさんのお仕事は、ホテルやレストランのプロデュース、デパートやメーカー各社へのセミナーやコンサルティングと広く多岐に及んでいます。でもその中心はあくまで「食卓」。家族の笑顔を生む食卓の大切さを、日々の活動を通じて広めたいとおっしゃるひがしさんにお話をうかがいます。

掲載日: 2010/2/22(月)

◆今月のサロネーゼ◆
今月のサロネーゼはひがしきよみさん。ひがしきよみテーブル&フードコーディネート教室を中心に、食空間プロデュースのさまざまなお仕事でご活躍中です。(毎週月曜更新)

頭と手を動かしながらコーディネート実習

_SSP2007.jpg「では、はじめましょう!」 ひがしさんの号令で生徒さんが作業台に移動します。

 指名された生徒さんが、クロスの下に敷くアンダークロスをセッティングします。
「それで大丈夫?(笑)」と生徒さんを試すようにいたずらっぽく微笑むひがしさん。
 生徒さんはハッと気づいてアンダークロスの裏表を確認します。
「そうですね。ねっとりした感触がある面を下に向けるんでした。正解!(笑)」

 大きなクロスは生徒さんが協力して広げます。ひがしさんが要所要所で「そうそう、まず中心を決めて。それできれいになります」とコメントします。

 クロスの色は講義で紹介された四十八茶百鼠のねずみ色、日本の伝統柄「市松」をひがしさんがセレクトされました。これでクロスオーバーのベースができています。

 _SSP2112.jpgクロスが敷き終わったら、皿やカトラリー、花やキャンドルなど小物の配置です。「今日はセンターピース(中央に置くもの)になりそうなものがいくつかあります。皆さんで考えて置いてみてください」
 ひがしさんの出題に、作業台に置かれたアイテムを眺める生徒さんたち。

 みなさんの手にはお皿に盛られるメニューが書かれたプリントが握られていて、メニューとお皿を見比べながら、表情は真剣です。
 やがて、「私はこれをセンターにするといいと思うわ」と、お1人が塗りの台を指し示すと、「そうねぇ…、じゃあこのお皿は?」と、別の生徒さんが大きめのサラダボウルを取り上げ、「そうか~」と作戦会議(?)が始まります。

「さてっ!どうしましょうね(笑) メニューのリストをご覧いただきながら、まずはセンターピースになりそうなものを考えてみましょう。どうかしら?」とひがしさん。
「このサラダボウルにローストビーフのサラダ?」と生徒さん。
「そう! それからパンのファルシー3種をセンターにセットしたらいかがかしら。それがヒント。がんばって(笑)」

「クイズ方式なんですね?」と質問してみると、ひがしさんの回答は…
「基本ルールはありますけど、テーブルコーディネートに〝これが正解〟はありません。だから、皆さんにいろいろ考えてもらいたいんです。
 コーディネートの真髄は創意工夫で、個性が出ている作品のほうがおもしろいです。だってみんな同じじゃつまらないでしょう?」とひがしさんは楽しげです。

 生徒さんが「え、じゃあこれは?」「うーん…」と悩み始めると、ひがしさんは「じゃあテーブルに置いてみながら考えましょうか」と、実際に飾りつけるテーブルにアイテムを移動させます。

パズルを解くような楽しいレッスン

_SSP2162.jpg 和洋混在だけあって、ナイフフォーク以外にお箸もあり、ナイフレストをどう使うか?を考えるだけでも迷ってしまいます。なかなか難しい。
 ただ、パズルを仕上げる楽しさもあるので、生徒さんも時折、クスクスと笑いあいながら、ああでもないこうでもないと試行錯誤しています。

 小ぶりな花器には薄紫のスイートピーが活けられています。グレーとパープル、グレーとピンクは相性のいい色あわせです。
「テーマが和洋混在ですから、お花もアシンメトリーなの。器の高さも違うし、花の色も淡いものと少し濃いめのものと分けていて、ボリューム感を変えて動きを出しています」

 しばらくするとひがしさんがひとり、にんまり。「どうしました?」とお尋ねすると、「実は間違えちゃってるところがあるんですね、うふっ」と、いたずらっ子のよう。でも間違いを黙って見ているのには理由があって、「間違えるのも勉強ですから」と。なるほど。

_SSP2178.jpg「それからそれから、席次も考えてくださーい。どちらが上座になりますか?」「ある程度固まったら、席に座ってみて確認してくださいね。パーソナルスペースはちゃんと取れていますか? グラスやナイフフォークは取りにくくないですか?」

 ひがしさんの問いかけに、生徒さんがチェックポイントを確認していきます。見ていると、お皿の裏側まで確認されています。これは?
「ブランドのネームの入り方で、お皿が正しい向きになっているかチェックしているところ。ネーム自体の方向が間違っていることもありますけれど(笑)」

 サラダボウルと、日本酒を入れる銀の酒器の位置で生徒さんたちが悩んでいます。上座に置いてゲストが取りやすいようにするのか、下座に置いてホスト側がサーブするのか。サラダサーバーはどう置くか、酒器の取っ手は誰が握りやすいように置くか――。
 そろそろ煮詰まってきた?というあたりで、ひがしさんの解説がはじまります。

機能的なテーブルは美しい

_SSP2255.jpg「まずお箸から。お箸もナイフと同じように休ませたいですから、ナイフレストに置きます。位置は、お箸はたいてい右手で持ちますからお皿の右側ですね。フォークは左手で持つのでお皿の左側、レストはいりません。
 お箸を取り上げるとき、ナイフの向こう側より手前のほうが取りやすいですし、上げ下げしやすいですよね? だから、ナイフレストには手前からお箸、ナイフの順で並べます。ナイフのお尻はテーブルの端から指3本ですから…そう、そんな感じ!」

 習字に朱を入れるように、生徒さんが仮置きした食器やカトラリーをひがしさんがすっすっと動かしていくと、不思議とテーブルの上の風景が落ち着いて、ぐんぐん整っていきます。

「お箸を縦に置くのは違和感があるかもしれませんけれど、中国や韓国は縦置き。実は日本でも縦に置いていた時代があったと言われています。私が見たわけではないけれど(笑)」と、ちょっとした食文化の知識がウィットとともに盛り込まれとても興味深いです。

「では、ナプキンと、グラスも置いてみましょう。グラスは倒れると割れて危ないので、最後に置きます。グラスの位置はカトラリーの上でしたね。で、置いてみると…センターが少し窮屈に見えない? ですから、漆の台を斜めに置きなおせば…ほらね?」

 ちょっとしたことで、テーブルの表情ががらりと変わっていくのが新鮮。

「上座は入り口から一番遠いお席。サラダは一番下座の人がサーブしてさしあげますから、入り口寄りのお席の方が取りやすい位置に。取り皿もその近く。
 できあがったところでテーブルからちょっと離れて見てみます。最終的な位置の調整ね。それから椅子にかけてみて、カトラリーやグラスが取りやすい配置になっているかも確認します。どう?大丈夫そう?」

_SSP2206.jpg 最後にキャンドルと花を、流れを感じさせつつもピリッとテーブル全体がひきしまる配置に置きなおします。

 実はひがしさんが先ほど「間違えてる…」と微笑んでいらっしゃったのは、生徒さんがセンターの漆の台の上に花を置いていたことでした。
 ひがしさん曰く、「テーブルの主役はお料理です。お花を食べるわけではないですからセンターの漆の台の上には置きません。お花はあくまで脇役ですから小さなものでいいですし、お料理が出てきたらお花はテーブルから外してもいいくらいだと思っています」と。

「はい!完成です。
コーディネートはテーブルを美しく演出することですが、ただなんとなくお皿や小鉢を並べるだけではいけません。まず考えなければならないのは、カトラリーのとりやすさ、食べやすさ、サーブのしやすさ、といった機能的な面なんですね。そこを考えてコーディネートすると、自然と美しい配置になってくるから不思議でしょう?」

 ひがしさんの技術を間近に見ると、この言葉には納得。「見事!」としか言いようがありません。

アイデアいっぱい、ざっくばらんなお人柄

_SSP2321.jpg 30分ほどのコーディネートの実習が終了。この後、レッスンはお料理の盛り付け(見学したのはテーブルコーディネートのコースなので、お料理は用意済みです)、さらに試食へと進みます。

 生徒さんお1人お1人の個性を引き受けながら、細やかに楽しく、ときに鋭くつっ込みながらガイドするひがしさんを囲んで、楽しい笑い声(ときどき爆笑も!)がキッチンにあふれます。
 盛り付けは、ひがしさんがお手本をデモンストレーションするお皿もありますが、基本的には生徒さんに手と頭を動かして実践していただく方式。多少失敗しても、ひがしさんは「あらいやだー!」と笑っていらっしゃって、「なんでもあり!」の方針をくずされません。

 ひがしさんのおしゃべりには、盛り付けのコツ(「ここは勇気をもって大胆にね!」)、おすすめの道具(「このあいだ○○のセールで買ったの。使いやすいわよー」)、レシピの提案(「マグロは血が出るから白身のお魚のほうがいいかな」)が散りばめられ、どこを切り取っても「なるほど」が詰まっているのです。

「おつかれさまでしたー!」 レッスン開始から約1時間半で、ひがしさんおすすめの日本酒・弐乃越州で乾杯。それぞれ盛り付けたお料理の試食タイムです。「おいしい!」「これは何が入っているんですか?」「かんたんで華やかでおもてなしにいいですね」と語り合いながら和やかムード。そんな生徒さんたちを、ひがしさんは温かい笑顔で楽しそうに見守ります。

 生徒さんにひがしさんの魅力をうかがうと…
「ざっくばらんなお人柄が私には居心地がいいのですが、なんと言っても先生は知識が豊富でいらっしゃるし、知識の出し惜しみをされないところがありがたいです」
「とにかく明るいところにひかれて!」
「先生はなんでも手づくりをされるんですが、アイデアがいっぱいある方なのですごく勉強になります」

 ひがしさんの人気は日本にとどまらず、最近では韓国の生徒さんもいらっしゃるとか。「韓国でもテーブルコーディネートが人気で、専門学校ができるほどです。その学校の先生が年にだいたい2回、生徒さんを連れて総勢15名ほどでいらっしゃいます」

 知識が豊富で、ロジックがしっかり組み立てられ、頭を使って楽しめるひがしさんの教室は、たしかに海外から学びに来る価値のあるオリジナルなものに違いありません。

(次回へつづく)

インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング
写真=下村しのぶ

プロフィール

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ひがし きよみさん

食空間コーディネーター
アシスタントカラーコーディネーター

◆経歴◆
短期大学英文学科卒業後、外 資系医薬品企業、ワイン・洋酒輸入企業勤務を経て、赤堀フードコーディネータースクール卒業
◆現在◆
・株式会社インフィニータ取締役
・ひがしきよみ テーブル&フードコーディネート教室主宰
・赤堀フードコーディネータースクール講師
・学習院生涯学習センター 講師
・大手百貨店 社員教育 講師
・食器メーカーコンサルタント
・ホテル・レストラン食空間コンサルタント
・朝日酒造(株)コンサルタント
・TV・ラジオ・雑誌・百貨店等でのテーブル&フードコーディネート
・テーブル&フードコーディネートセミナー・イベントの企画運営
・日本フードコーディネーター協会正会員
・内閣府認証 NPO法人食空間コーディネート協会 理事
・TALK食空間コーディネーター資格認定講師
◆受賞歴◆
H.7~H.11 東京ドームテーブルコーディネートコンテスト 5年連続入賞・最優秀賞
H.8~H.9 東京ビッグサイト優しい食空間コンテスト 2年連続入賞
H.10 ハウスクェア横浜 テーブルコーディネートコンテスト入賞 
       石川県主宰テーブルコーディネートコンテスト 優秀賞
H.11 世界文化社主催 家庭画報大賞 優秀賞
       TVチャンピオン フードコーディネーター選手権 優賞

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ひがしきよみテーブル&フードコーディネート教室

ひがしきよみの世界

SAKURA JAZZ WITH OMOTENASHI
桜日和とジャスのおもてなし
桜日和に合うオシャレなパーティーフードとジャズをお楽しみ下さい。
2010年3月28日
1部:14:00~16:00
2部:17:30~19:30
 

東急百貨店4店舗にてテーブル展示&トークショー