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「美味しいコーヒーって何だろう?」焙煎・抽出編(連載 第3回)
南青山マメーズ 椎名 香さん 連載第3回
前回は、焙煎することでコーヒーがどのように変化するのか、それを主に味の面からお話ししました。今回は、引き続き焙煎に関する事として、焙煎した後、コーヒー豆がどのように変化するのかというお話です。コーヒーは木になる「実」です。そして、コーヒー豆は、コーヒーの実の中にある「種」なのです。このことは、とても重要な意味を持っています。それは、植物性の油脂「コーヒーオイル」の存在です。皆さんご存知のように、植物性の油脂の多くは、種から絞りますね。種にはたくさんの油が含まれているのです。そして、これが、お茶や紅茶など「葉」から抽出する飲料と大きく違うポイントでもあるのです。
掲載日: 2009/3/24(火)
焙煎した後も刻々と変化する味の要素
コーヒー豆を焙煎することで、4つの味の要素「苦味」「酸味」「コク」「甘み(旨み)」の味わいは、焙煎後にどう変化するのでしょうか。
まず「苦味」は、あまり大きく変化しません。苦いものが時間の経過とともに、苦くなくなったり、他の味に変わることって、あまりないですよね。
一方「酸味」は、逆に大きく変化します。それは、酸素に触れることで酸化が進み、味が劣化してしまうからです。
「コク」「甘み(うま味)」も代表的なうま味物質である、グルタミン酸など酸化によって影響を受けてしまいます。さらに先ほど説明した「コーヒーオイル」この油脂成分も「コク・甘み」には大きな力を持っているのですが、同じく、酸化、劣化が進みます。その変化は、焙煎で一度200度以上に熱し続けた植物性の「油」を、そのまま放置しておくことを想像していただければ、少しお分かりいただけるでしょうか。そしてその劣化した「油」は、敏感な人にとっては、胸やけや胃痛の原因になったりするのです。お茶や紅茶は大好きだけれど、コーヒーは苦手という人には、意外とこの「油」の劣化が原因である事がも多いのです。
焙煎とは、香り・味を生み出していく重要な行程
では、焙煎してからどのくらいの期間であれば、美味しく飲めると言えるのでしょうか?これには色々な目安があり、豆や保存の状態によって変わってきますが、焙煎後2週間から1か月を目安にしているのが一般的なようです。あくまでも目安ですので、最終的にはお飲みになる皆様が満足できる味を維持できる期間、ということで良いと思います。しかし、このことには大きな落とし穴があります。私たち南青山マメーズでは、焙煎を調理と考えているため、焙煎日を明記してお届けしています。これが美味しさの目安の起点となるわけです。しかし、焙煎日の分からないコーヒー豆の場合はどうでしょう。目安ですら、まったく意味のないものになってしまうのです。確かに、コーヒーには賞味期限が付けられています。しかし残念なことに、これは1年半以内であれば任意での表示が可能であり、また、その起点を焙煎日にしなければならないという規定もありません。つまり、焙煎日を特定することは、かなり難しいというのが今流通する多くのコーヒー豆の現状なのです。 コーヒーは嗜好品です。ですから、絶対にこうでなければならない!と叫ぶ必要はないと思っています。ただし、本当に美味しいコーヒーを飲もうと思えば、焙煎日の分からないものより、焙煎日の分かるコーヒーの方が、美味しい可能性は高いと、言って良いのではないでしょうか。
コーヒー豆を香りと琥珀色のエキスを液体に変える「抽出」
そして最後はついに、このコーヒー豆を、琥珀色の液体に変える、抽出です。美味しいコーヒーへの旅路も、ついに最終章を迎えます。 美味しく淹れるにあたって、コーヒー豆の構造について、少し説明しておきましょう。コーヒー豆の中には、細胞のレベルで小さな部屋が沢山存在しています。その各部屋は、焙煎とともに膨らみ、その中には、コーヒーの香り、そして抽出すべきコーヒーのエキスが生まれます。コーヒーの抽出とは、その部屋にお湯を送りこみ、その香りとエキスを液体にすることを言います。 その抽出には、大きく3種類があります。ひとつは、みなさん良くご存じのドリップ式。粉にお湯を注ぎ、重力によって、そのエキスを抽出します。そして、圧力をかけて一気にその部屋にお湯を注入して、短時間で抽出するのがエスプレッソ。もうひとつは、お湯の中に粉を入れることで自然と抽出される浸し法。今回は、この中でも一般的なペーパーでのドリップ式抽出法についてお話ししたいと思います。
コーヒーの美味しさを最大限に引き出す抽出方法
紙を折ってセットしたら、粉をいれます。1杯分10g程度が目安です。粉の挽き目は、中細挽き程度。そしてまず最初に大切なのは、お湯の温度。決して熱湯を使ってはいけません。最初は90度程度を目安にするとよいでしょう。その後、もっと低い温度や、少し高めの温度で抽出し、味わいの差を確認されればまた新たな楽しみが広がると思います。
最初に表面を覆う程度に、ゆっくり細くお湯を注ぎます。先ほど説明した部屋にお湯を満たすことが最初の目的なので、お湯を置くように、注いでゆきます。焙煎から鮮度の良い状態のコーヒー粉であれば、ご覧のように大きく膨らみ、粉の粒一つ一つにある、先ほどの部屋にお湯が染み込んでゆきます。それによって、粉もむくむくと動くのですが、その動きが止まるまで、少し待ちます。お湯の染み込むのを待つわけですね。そして動きが止まったら、再びお湯を注ぎます。今度は、少し多めのお湯でドリッパー全体を使うように注いでゆきます。注ぎ方のポイントは、決してペーパーにはお湯をかけないということ。コーヒーの粉をフィルターにして、抽出するのがドリップです。紙を通してお湯を流しても仕方ないですね。そして、お湯を注ぎ続けると上部の泡が白く変わってきます。その部分は、言わばアクのようなもので、これを落とさないよう、ドリッパーの液面をある程度高く保って入れ続けます。最初に決めた杯数に近づいてきたら、ドリッパーを満たし、あとは杯数になったところで、ドリッパーにお湯の残った状態でカップやサーバーからはずしてあげます。こうすることで、適正な量の抽出を行うことができるのです。
最後まで美味しいコーヒーの楽しむためのコツ
最後に一言、コーヒーの保存についてです。
コーヒーは焙煎の中で、ほとんどの水分が失われます。逆にそのことによって、冷凍や冷蔵での保存が可能となります。ただし、冷やして保存している場合、開けた時の結露にはご注意ください。また、挽いてしまうと豆の表面積は1000倍以上にもなり、酸化・劣化が一気に進んでしまいます。なるべく飲む前に挽くことが薦められているのは、そのためなのです。
以上のように抽出されたコーヒーを温めておいたお好きなカップに注ぎ、まずは香りを嗅いでみてください。そして、「苦味、酸味、コク、甘み」のバランスを楽しみながら、リラックスしたひと時を過ごしていただく。これで、豆から焙煎、そして抽出へと続いたコーヒーの長い旅路も報われるのです。
これからもどうぞ、美味しいコーヒーを楽しんで下さい。そんな楽しみのお役に多少なりとも立てますならば、私どもにとってこの上ない喜びです。ありがとうございました。
椎名 香
「南青山マメーズ」主宰
新しいスタイルの自家焙煎ブランド「南青山マメーズ」を主宰。ブレンドを全てスペシャルティコーヒーで構成し、その内容をすべてオープンにするなど、今までのコーヒー業界の常識にとらわれず、「美味しさ」をいかに納得できる形で実現できるか、日々探究している。業務用まで含めて「焙煎日」を明記する鮮度へのこだわりなど、「南青山マメーズ」の商品、そしてセミナーなどを通じて、もっとも新しい「コーヒーの今」を伝えることに邁進中。
南青山マメーズ 焙煎工房
インターネットショップである「南青山マメーズ」であるが、実際に焙煎を行っている工房には、ショップも併設されている。焙煎から5日以内のコーヒーだけが並ぶショーケースを持ち、試飲やエスプレッソメニューのテイクアウトも可能。月1回のコーヒーセミナーも実施中。水曜定休。
所在地〒144-0052 東京都大田区蒲田1-18-5 (JR蒲田駅東口より徒歩7分、京急蒲田駅西口より徒歩7分)
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