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「キッチンには国境がありません」
竹村真紀子(たけむら まきこ)さん
インタビュー 連載第4回
今月のDreamia人は、「大使館シェフとクッキング!」という、なんとも楽しそうなプログラム「Little Ambassadors(小さな親善大使)」を制作されている竹村真紀子さん(International Women's Club JAPAN代表理事)。世界各国の在日大使館シェフと、子どもも大人も一緒に料理を楽しむことで、その国の文化や言語、習慣を身近に感じられる人気のイベントに、竹村さんが込めた思い、誕生の経緯などをうかがいます。5月30日に行われたばかりのイベントレポートも!
掲載日:2010/06/25(金)
「ありがとう!」は「モッシャケラム!」
クッキングが終わったら、イランについてのお勉強です。
まずは、竹村さんとアヤトッラーヒさんが先生役になり、簡単なイラン語会話から。
「おはようございます」「こんにちは」「ありがとう」「さようなら」「私の名前は○○です」など、ペルシャ語の書かれたパネルを見せながらアヤトッラーヒさんが実際に声に出してくださいます。
おもしろいのは、ペルシャ語の書き順。英語も日本語も左から右へ文字を書いていきますが、ペルシャ語は右から左に文字を書きます。だから、アヤトッラーヒさんは発音をしながら、パネルの文字を右から左へと指し示されていました。すごく不思議な感じ。
「今日、必ず覚えてほしいのが、こんにちは=Salam(サラーム)と、ありがとう=Moteshakeram(モッシャケラム)。とくに‘ありがとう’は大事ですからみんなで練習しましょう。せーの!」
モッシャケラーム!
クッキングですっかり緊張がほどけたのか、子どもスタッフの2人がひときわ大きな声でペルシャ語のごあいさつを返してくれました。
続いて、アヤトッラーヒさんに名前を書いてもらいます。受付でもらった資料の1ページに、自分の名前をローマ字で書くスペースがあり、そこに書き込んでアヤトッラーヒさんの前へ。あっという間に長ーい列ができます。
アヤトッラーヒさんは、子どもたち1人1人に丁寧に名前を聞き、書き込まれたローマ字表記も参考にされながら、ペルシャ文字をつづります。
椅子に姿勢よく腰かけ、細いペンを動かすその所作が、それだけでなんとも上品。さすがに各国の要人をおもてなしする大使館のお仕事をされてる方だけあります。
そしてやはり不思議な感じだったのは、アヤトッラーヒさんのペンが右から左へ動くこと。ペンの動きが国によって違う。それだけのことなのに、インパクトが残る光景でした。
名前を書いてもらうのを待つあいだ、楽器の演奏もさせていただけました。
ゴールヌーシュさんは打弦楽器(サントゥール)の前の椅子に子どもを座らせ、木製のスティックを握らせます。その上からご自分の手を添えて「きらきら星」を演奏すると、子どもは大喜び。
タラさんもダフを子どもたちに渡し、自由に触らせています。「演奏してみたい人ー」と声がかかると、竹村さんが「私がやりたーい!」と呟かれていました。おちゃめでいらっしゃる(笑)。
イランについて調べよう!発表しよう!
そうこうするうちに「キャビア」チームもクッキング終了。エブラヒミさんのランチの準備ができるまで、広間で子どもたちの発表会が行われました。
Little Ambassadorsの参加者には、参加する回の国の――たとえば今回はイランの国について、地理や歴史、文化について事前に調べてくるように宿題が出されています。それを「やりたい!」という子どもから発表してもらうのです。
調べてくる子はそんなにいないのでは?と半信半疑でしたが、これがびっくり! 全員が調べ物をして、しかも「発表してくれる人!」という竹村さんの呼びかけに、競うように「はい!」「はい!」と手があがるのです。
発表の内容は、国の広さや人口、国旗が示す意味、習慣、名産品、料理などいろいろ。中には犬の鳴き声の違いを調べて、「なぜ国によって違いがあるのか、とても興味深いです」と英語で発表したお子さんもいました(ちなみに、日本はワンワン、英語はバウワウ、ペルシャ語はハップハップだそう)。
本当は、子どもたちの発表のあと、竹村さんが足りない情報を補足されるそうですが、今回はたくさんの発表があって、「私の出番はもうありませんね!」と竹村さん。
それでも、昨年、ユネスコの世界無形遺産に指定された、イラン暦の元旦=ノウルーズ(今年は3月21日)の祝宴について、そして、楽器を演奏してくださった女性の衣装について(イランの女性は、顔と手以外は布で隠さなければいけない)の解説が加えられます。とても勉強になります。
大使館シェフのランチ!
クッキングで手を動かし、発表会で頭も使った子どもたちは、そろそろお腹がぺこぺこ。そろそろ、ランチの準備が整いました。
広間の奥はすっかりパーティ仕様に様変わりしていて、色鮮やかなお料理が湯気を上げています。
先ほどつくったコトレットも、厨房で目にしたケバブも並んでいますし、カットフルーツが飾られたタワーまであって、子どもたちならずとも「わぁー!」と声をあげてしまうほどの楽しいテーブルです。
パーティの食事をすべて準備してくれた大使館シェフのエブラヒミさんを、竹村さんがここで改めてご紹介します。
「これだけのお料理をつくるのは本当に大変で、ここに並んだお料理も、多分昨日から準備していただいていると思います。ありがたいですよね! みなさんからも、頂くまえにお礼を言いましょう。ペルシャ語でなんていうんでしたっけ?」
「えーっと…」「モ、モ…」「モッチャ?」「あ、モッシャケラム!」 ひとりが思い出すとみんなが声を揃えます。「モッシャケラーム!!」 今日いちばんの大きな声が出たところで、竹村さんから「どうぞ召し上がれ!」と号令がかかりました。
羊のコトレット、ジャガイモのコトレット、鶏肉のケバブ、そしてナンにごはんにヨーグルト、デザートとフルーツまで、「子どもたちのために喜んでつくりました」とエブラヒミさんがおっしゃっていたその言葉どおり、どのお料理にも、子どもが食べやすいように、食感にも、味付けにも、プラスアルファの工夫と真心が感じられました。
子どもたちも、お父さんお母さんにとりわけてもらったお皿を、大事そうに席へ運んで、「いただきまーす!」 自分たちがつくったコトレットを一口パクリ! 笑顔がいちだんと輝きます。
食事がはじまると子どもたちも食べることに夢中。このときだけ会場が静かでした(笑)。
「Little Ambassadors」の認定書
さて、盛りだくさんのプログラムも間もなく終了。最後にアヤトッラーヒさんから、「Little Ambassadors」の認定証が授与されます。
実はこの認定証、デザインからすべて、竹村さんが手づくりされているもの。IWCJのサイトも竹村さんがご自分で制作されているのですが、デザインがかわいらしいし、なによりどれもアイデアが楽しいですよね。
竹村さんから締めくくりの言葉がありました。
「今日、みなさんはイランの小さな親善大使(Little Ambassadors)になりました。今日学んだことをお友達にもいっぱいお話してください。それから、テレビでイランのことをやっていたら、興味をもって見てください。
今日がみなさんにとってのイラン親善大使としてのスタートラインです。これからみなさんの中のイランがいっぱい広がっていくことを願っています」
アヤトッラーヒさんが認定証に書かれた名前を読み上げ、1人1人に手渡しします。
卒業証書をもらうときのように、深々と頭をさげて認定証を受け取った子どもたちはちょっと恥ずかしそうに、でもとても誇らしげに見えました。そしてみなさん、「モッシャケラム!」と言えていました。声が小さいお子さんもいましたけれど、十分ですね。
最後は「チーフ」の認定です。けいたくんとこうしろうくんは合格したのかな!?
「えーまだまだ改善すべき点はありますが…今後の活躍に期待を込めて、チーフに認定します!」 けいたくんこうしろうくん、ガッツポーズ! チーフの認定証をもらった2人の言葉はもちろん、「モッシャケラム!」でした。おめでとう!
リーダーシップのある子どもをのびのび育てたい
――今日は1日お疲れさまでした。しかし、ここまで楽しい仕掛けが多いと、準備が大変そうです。
竹村 大変です!(笑) でも、とってもとっても楽しいですよ。
実際の交渉ごとや、ブログの更新、こまごまとした準備まで、実際に作業をしているのは主に私と副理事の寺脇の2人ですから、たしかに忙しいです。でも、当日手伝っていただけるスタッフの方も増えてきましたし、何より、大使館の関係者の方がとても前向きに協力してくださるので、苦労を上回るやりがいをひしひしと感じているところです。
将来的には、IWCJから奨学金を出したいと思っているので、いつかは収益を…とがんばっています。今現在も、留学をしたくても経済的な理由で希望が叶えられない子どもたちがいますからね。
収益を出すにはもうちょっと時間はかかりそうですが、留学で人生を変えたいと思っている子どもたちのために、がんばります!(笑)
私がお手伝いしたいのは、これからの日本を担えるリーダーシップを発揮できるような人材を育てていくことなんです。それも、「こうでなければならない」と枠にはめるのではなく、楽しみながら、子どもたちがもともと持っている能力を生かすような方法で、と考えているんですね。
――なるほど。
竹村 日本では、幼稚園までは比較的、クリエイティビティを生かす方向で教育がなされています。けれど、小学校へ上がったとたん、創造性を鍛えるようなカリキュラムがなくなってしまうのが残念だなと思っていて。
先日も、息子の学校で消防車の写生会があったのですが、前日に学校で渡された資料を見てびっくりしました。消防車の絵が描かれていて「こういうふうに書きましょう」というガイドラインがあるんですから!
子どもたちに「きれいな絵」を描かせるのが目的ならば、もしかするとこういう指導法も有効なのかもしれません。でも、これではクリエイティビティは発揮できないと思うんです。
――消防署まで出かける意味もありませんしね。
竹村 そうなんです。いろんな絵を描く子がいていいんじゃないかしら?と思うんです。「いろいろ」があって、他の子のアイディアをみて「そういう考えもあるんだ」と思ったり、自分はどうしようかと考えることがクリエイティビティだと思いますから。
ですから私たちは、クッキングを軸にさまざまな国の文化に触れることで、子どもたちに色々な「違い」を体験させて、どれもが素晴らしく、「違い」があって面白いということを感じる事で子供の視野を拡げ、クリエイティビティを育てる仕事をしていきたいと考えています。
――夢の実現を祈っています。最後にうかがいます。竹村さんにとってキッチンとは?
竹村 そうですね…アイデアを出す場、かな? 料理をつくっているときや、洗いものをしているときもそうなんですが、無心になれるんですね。
ですから私は、新しい企画を考えたり、次の段取りを考えるときにキッチンに立つことが多いです。
アイデア出しをするときは長い時間、キッチンで洗いものや掃除をしながら考えるので、そのときは驚くほどキッチンがピカピカになっています(笑)。
子供にとっても同じで、息子に「何を使ってもいいから1品作って」と言うと目をキラキラさせながら冷蔵庫や食品を置いてあるところを色々覗いて、私が思いもつかない材料を合わせて作ります。子供のアイディアを引き出すのにキッチンは最適ですね。
――それはおもしろいですね(笑)。
竹村 子どもとちょっとしたことで衝突したり、イライラしたときも、気づけばキッチンにいますし(笑)。
それから、「イベントの中でのキッチン」ということで言えば、「まったく壁がない場所」だと思います。
キッチンに入ってしまえば、言葉はさほど必要なくなりますし、子どもも大人も一緒になって楽しく作業ができます。
Little Ambassadorsのキッチンでは、国も地位も関係がなくなります。
たとえば、ナイジェリア大使公邸で開催したときは、大使夫人が直々におもてなしをしてくださったのですが、大使夫人といえば、本来はお近づきになる機会のない方です。でも、キッチンに入ってしまえばそんな肩書きなどまったく関係なくなって普通にお話をすることもできますし、一緒にお料理もつくれます。
キッチンには国境はないし、これからもつくりたくないな、と思います。
――本当ですね。今日はありがとうございます!
竹村 こちらこそありがとうございます。楽しかったです!
(おわり)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ

ハンガリー大使館シェフとの講座開催決定!
Dreamia Clubでも、ハンガリー大使館シェフとお子様とのクッキング講座開催決定しました!
ハンガリー料理を一緒に作ったり、ハンガリーについてのクイズをしたり…お子様が楽しめる内容が満載です!
日程:2010年8月29日(日)
場所:パーティースペースDreamia新宿
(クリナップ新宿ショールーム内)

竹村真紀子(たけむら まきこ)さん
International Women's Club Japan代表理事
南山大学外国語学部英米科卒業
ブダペストELTE大学文学部ハンガリー語コース修了。
中学・高等学校教諭一種免許(英語)取得
ハンガリーフラワーデザイナー国家資格 取得
日本食育インストラクター(primary)
段取り力(Project Work Ability)研修/ホスピタリティプログラム『SMILE』研修認定講師
留学団体にて海外高校留学セールスおよびプロモーションを統括。その後留学メディア会社トゥモローを経て、検定プログラム企画会社の代表を務める。
現在は、International Women's Club JAPAN代表理事として活動しながらヒューマンデザインオーソリティーの段取り力(Project Work Ability)研修およびホスピタリティプログラム『SMILE』研修の講師として企業や行政で研修を行っている。2児の母。
「Little Ambassadors」今後の予定
6/27 インドネシア
7/11 ドミニカ共和国
8月ケニア、9月キルギス共和国、10月ケベック、11月韓国
お問い合わせはIWCJ公式サイトへ
International Women's Club JAPAN HP
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