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「やんちゃ」から有名店での修行を経て
定谷豊(さだや ゆたか)さん
インタビュー 連載第2回
今月のDreamia人は、東京・根岸にあるステーキ懐石のお店「定谷」オーナーシェフの定谷豊さん。政財界の要人、各界の著名人が「とっておき」と一目置く店ながら、厨房に立つ定谷さんは拍子抜けするほど気さくなお人柄。約40年にわたってプロの料理人として仕事をされる今もなお「料理が好きだから」と目を輝かせる定谷さんに、その半生、そしていつも側にあった厨房と、料理への思いをうかがいました。
掲載日: 2010/03/12(金)
――「定谷」の創業は何年ですか?
定谷 平成3年ですから、そろそろ20年になりますね。ステーキ懐石というスタイルで、おまかせの和洋折衷メニューです。ラーメンもやれば寿司もやれば…
――えっ? ラーメンに寿司ですか!?
定谷 一時、うちで寿司職人を雇ってたときだけね(笑)。
店を長くやってると、お客様の年齢層も上がって、お肉ばかり召し上がる方が少なくなられて。それで野菜や魚も取り入れるようになって和洋折衷になりました。
――根岸という場所を選ばれたのは?
定谷 ここが自宅ですから。生まれもこの近所なんで。
中学時代から自分で弁当をつくった料理好き
――生まれは何年でいらっしゃいますか?
定谷 昭和28年です。
――お料理は小さな頃からされていた?
定谷 もう大好きですね。
実家が町工場だったんです。昔の下町は今みたいに騒音だなんだってご近所もうるさくなくて、高度経済成長期でもありましたし、一晩中機械を回してましてね。
親が忙しいときはごはんをつくる暇もなくて、それで自分でかんたんな料理をやってたんです。ごはん炒めてちょっとしょう油を垂らしてチャーハンにしてみたりね(笑)。
中学に上がる頃にはお弁当は全部自分でこしらえてましたから。
――へぇ、お母様の台所仕事を見よう見まねで。
定谷 ええ。大正生まれで、出身が能登で、京都に女中奉公に出てた経験もあった人でしたから、舌も肥えてますし料理もうまいです。大きなブリでもタイでもおろせますし。お袋には敵わないですね。
――大正生まれの女性はたくましいです(笑)。
定谷 中学の3年間はずっと、自分の弁当をつくりましたけど、高校からはちょっと不良になっちゃってケンカばかりだったんで、面倒くさくなっちゃいました。ははは!
――(笑)。当時、台所の手伝いをする男の子は珍しかったのでは?
定谷 そうかもしれません。でもとにかく料理が好きで、台所に立つのは全然苦になりません。今も家族の食事は3食とも、自分がつくりますし。
旅館の料理も、つい手を出し口を出し…
――プロの料理人は、家では料理をしないという方が多いですけれど。
定谷 全っ然平気ですね。自分でつくればおいしいし、早いし。
――料理をしないのは、旅先で料理が出てくるときぐらい?
定谷 旅館で出される料理にもつい手を加えちゃいますね(笑)。
――それは嫌がられませんか?(笑)
定谷 だから、旅館に行くと「自分は料理人です」って名刺出してはっきり挨拶するんですよ。「気がついたことがあったら言っていいですか」って。
普通は女将さんとか仲居さんに志(チップ)を包みますけど、自分は同じ商売なんで大変さがわかりますから、板場に渡すようにしてます。
こっちが隠しても、板前さんはこちらの目線で「同業者だ」ってわかるもんですからね。だから自分は最初から、全部さらけ出したほうがいいと思ってます。
おいしくないってことばかりじゃなく、もちろん「うまい!」と感心する場合もありますし、「これはどうやってるのかな?」って思うこともある。わからないことは未だになんでも聞きますから。
中には教えてくれない人もいますけど、教えてくれる人には頭をさげて「教えてください」って素直に頼みますね。
ほかは頑固ですけど料理に関しては心が広いんです。
上野「伊豆栄」で1週間、日本橋「宇田川」で10年
――(笑)。料理人になることは早くから決めていらっしゃった?
定谷 そうですね。六大学の付属校だったんで、黙ってても大学まで行けたんですけど、中学に入ったときから大学に進む気はまったくなかったですね。料理人になると決めてました。
――それでも高校は卒業されて。
定谷 ええ。卒業しろって言われたんで「じゃあしてやろうか」ってね(笑)。で、卒業後はすぐに修行に出ました。上野の「伊豆栄」といううなぎ割烹です。
――江戸時代創業、明治・大正・昭和の文豪も愛したという老舗ですね。
定谷 そこに紹介で行ったんですが、16歳ぐらいの年下の先輩がいて、アゴでこき使われて。自分はやんちゃやってたもんですから「年下のくせになめやがって」「やってられないぞ」って、へへへ。
――修行の世界は年齢は関係ないものですよ、定谷さん(笑)。
定谷 そう。でも子どもだったからそのあたりがわからなかったんですね。
あとは、和食は細かい作業があるんですけど、自分は不器用なんでうまくできなくて、「あーもうダメっ! こういうのキライっ!」って辞めちゃったんです。
――(笑)。
定谷 イヤイヤ我慢して、でも1週間で限界でしたね。
で、新聞広告で求人を見つけて、日本橋の「宇田川」に行きました。ランチはトンカツ、夜はステーキとか出す店で、ここには10年いました。しかも無遅刻無欠勤!
――伊豆栄は1週間でダメだったのに、どうして宇田川は続いたんでしょう?
定谷 宇田川のオヤジ(店主)が怖かったですから(笑)。反抗できる雰囲気じゃないんですよ。オヤジが「赤」と言ったら赤、「白」と言ったら白ですから。当時ちょうど30ぐらいで若い店主だったんですが…とにかく怖い人でした。
――尊敬できる人でもあったわけですよね。
定谷 そうですね。それに、大きな店はやらせてもらえる仕事が限定されますけど、個人でやってるお店はこちらのやる気と技術さえあれば、いろんな仕事をやらせてもらえます。料理が好きだったので、それが楽しくてね。
頑張ればお給料もどんどん上がりましたし(笑)。ほかの人は仕事が厳しくて辞めちゃうんで、店に残っている人間は大事にされたんです。
28歳ではじめて自分の店をもつ。が…
――店主は怖いけど、頑張ると給料があがる。まさにアメとムチですね(笑)。その10年でほとんど店を任されるように?
定谷 そうですね。ただ客前ではやはり、マスターがスターですから、そこはオヤジがやってました。自分で店をもってようやく自分がスターになれました(笑)。
初めての店をオープンさせたのは28歳のとき。宇田川のオヤジが29歳で店をはじめたので1年早くってことで。
土地勘のまるでない西荻窪で、とんかつ屋とステーキをやってましたが、結局オーダーはとんかつがほとんどで、「西荻は自分に合わない」と1年半でスパッとやめました。
店を閉めて、家も地元に引き上げて、料理の世界で転々と勤め歩いてました。アルバイトも何もしなかった時期もありましたし。
今振り返ると、結局最初に宇田川といういい店で仕事をしたのがネックになったんでしょうね。いわゆる「高級店」は仕事が丁寧です。一方で、グレードの低い店は仕事もだらしない。そういう店には仕事でも行きたくなかったんです。
自分がいいと思えない店に働きに行っても、2日3日で「やめたっ!」となるんなら、もう仕事を探しもしない。前向きな気持ちで休みをとっていた時期もありました。
――なるほど、かっこいい(笑)。
定谷 ものは言いようです、へへへ。
料理人仲間が仕事を紹介してくれたりしてありがたかったんですが、無理して働いてもそこのオーナーとケンカしちゃうんでね(笑)。
――筋が通らないことはお嫌いなんですね。そんな時期が3、4年?
定谷 いや、10年ぐらいかな。今の店は38歳でオープンして、西荻窪を閉めたのは30前ですから、その間の8年くらいは、中華やったりてんぷらやったり日本料理やったり、知り合いの小料理屋で手伝ったり…
わがままな性格なんで、好きにやりたいんですけど、「この食材が高い」とかオーナーにケチつけられるともう面倒くさくなっちゃうんです。「だったらオレを雇うなよ」ってね(笑)。
――けんか腰が江戸っ子っぽくていらっしゃる(笑)。オーナーも「まさかここまで好きにやるとは」と驚いたんじゃないですか?
定谷 高が知れてると思いますけどね?
一度自分が仕入れたマグロでケンカになりまして。「肉のコースにこんないいマグロはいらない」ってオーナーは言うんですけど、コース料理はバランスですからね。メインじゃないからって手を抜くとバランスが悪いんですよ。
そもそも赤字になるほど損してるわけじゃないですから。
――確かに。
定谷 でも、その時期に大きな店で仕事をしたのはいい経験でした。店長会議に出たのは後にも先にもそのときだけでしたから、「自分には向かないな」と思いはしたけど勉強にはなりました。
(次回へつづく)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ

定谷 豊(さだや ゆたか)さん
料理人
ねぎし柳通り ステーキ懐石の店「定谷」店主

ねぎし柳通り ステーキ懐石の店「定谷」
ランチ・・・カツカレー1500円
シェフおまかせ3000円
ディナー・・・おまかせコース16000円より
ステーキ定食5000円、10000円
※その他、ご予算に応じて承ります。
所在地東京都台東区根岸4-3-2
TEL03-3874-2406
*予約制
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- 投稿者 rira : 2010年3月18日 11:36
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定谷様の明るい笑顔が印象的です。特別な記念日に是非行ってみたいお店ですね。
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