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身体にいい食べ物は今日も明日も変わらない
ウー・ウェンさん
インタビュー 連載第4回
今月のゲストはウー・ウェンさん。料理好きならもう説明はいらないでしょう。書店には「ウー・ウェン本」コーナーがあり、雑誌・テレビでも、シンプルなのに斬新なレシピと、そのしなやかな存在感でひっぱりだこの「料理研究家」でいらっしゃいます。ご本人は「研究家じゃないの。中国家庭料理をご紹介しているだけ」と気負いがありません。「キッチンまん中、おいしい暮らし」がテーマのDreamia Club、新シリーズ「Dreamia人」初回は、まさに「キッチンが暮らしのまん中」とおっしゃるウー・ウェンさんにお話をうかがいました。
掲載日: 2010/1/29(金)
北京のサロンから発信したいこと
――今後、新しい活動をはじめられるご予定はありますか?
ウー 基本的に変わらない人間なんです、私(笑)。だから今やっていることも、昔やっていたこともほとんど同じですね。
ただ、これからは中国に向けたお仕事を少し増やしていきたいなと思っています。北京のサロンを拠点に、日本の食品メーカーのお手伝いができるような仕事ができたらうれしいですね。
――ウーさんのように日々台所に立って、日本の商品のよさを実感している人は貴重なのだと思います。
ウー 私自身はずっと同じことをやっているつもりなんです。自分に無理がなく、うそのない範囲で、満足できる仕事さえできればそれでいい、と思っているだけなのですが、こんなふうに活動のフィールドを自然と広げていただけるのは本当に幸せです。
――北京のサロンはお教室だけでなく、撮影スタジオとしても使われているそうですね。
ウー ええ。実は、北京のサロンは、中国で活躍されている日本人の若手デザイナーに手がけていただいているんです。それ以外にも、北京で一緒にお仕事しているのは全員日本の方なんですよ。
私が若い頃に日本でお世話になった分、私も北京で働く日本の若い方をできる限りサポートしたいから。彼らがどんどん成長してくれることも、私の喜びのひとつなんです。
デザイナーには、私のサロンをショールームとしても使ってもらっています。そうやって北京のサロンが、日中の交流の拠点になり、新しいプロジェクトがたくさん生まれたらすてきだな、と思います。
――北京のサロンはますますおもしろくなりそうですね。
ウー おもしろいですよ!
北京へ行くとパワーがもらえて、そのおかげで東京での仕事を頑張れている気がするので、これからも行き来が多くなると思います。
今は羽田空港から北京行きの便もあるので、パスポートだけ持って前より気軽に出かけています。
東京のサロンのほうも、変わらずにやっていきたいと思います。とにかく継続は力!ですからね。
テーマも「食」にこだわり続けます。身体にいい食べ物は今日も明日も変わらないですから、今までやってきたことをそのまま、特に流行を追うこともなく、生徒さんに必要とされる限り続けていければ幸せです。
「中国プロデュース」の調理器具
――ウー・ウェンパンをはじめ、ウーさんがプロデュースされる調理器具はとてもよくて、私も愛用しています。
ウー ありがとうございます!(笑) でも、ウー・ウェンパンも切菜刀(チェサイダオ) という包丁も、私がプロデュースしたというより、中国の台所から生まれた商品なんです。すべて中国の食文化に根づいたもので、「ウー・プロデュース」ではなく、「中国プロデュース」が正解なの。
中国の調理器具というと中華なべを連想される方も多いかもしれませんが、日本料理に日本なべがないように、フレンチにフランスなべがないように、中華なべという呼び方も中国ではありません。
日本で中華なべと呼ばれているあの形のなべは、中国では炒め物だけではなく、いろいろな調理法で使われます。
焼く、煮る、ゆでる、揚げるはもちろん、蒸籠(せいろ)をのせることで蒸す調理ができます。中華なべがこんなに多様な機能をもっていることに本当の意味で気づいたのは、日本に来てからでした。
ウー・ウェンパンも、おかげさまでたくさんの方に使っていただいていますが、ヒットした理由は中国の食文化をこのなべがずっと支えてきたという裏づけがあるからなんですね。
グッズの展開としては、やはりウー・ウェンといえば小麦粉!ですから、めん台やめん棒など小麦粉料理セットを企画しているところです。私らしい工夫も考えていますからどうぞ楽しみしていてください。
お茶はくすり。いいものを普段使いに
――3月にはクリナップの新宿ショールームでDreamiaサロン会員限定のお茶の講座をやっていただくことになりました。
ウー お茶も身体にいいですよ。もともと漢方=薬ですからね。私はずっと苦丁茶が好きで、身体がすっきりするのでよく飲んでいますけれど、知人に紹介したら彼女も気に入ってしまって。北京に帰るたびにたーくさん買い込んでこなければならないの!
――ウーさんのお父さんもお茶がお好きとうかがっています。
ウー ええ。父はお酒もタバコもやらない人ですが、お茶に凝るようになったらお酒よりもお金がかかって困っているの。冗談で、「お茶の代わりにお酒でも飲んだら?」って言いたくなるくらい(笑)。
中国ではお茶好きは家を潰すって言われるように、いいお茶はとても高価なんですね。
父は、「僕は洋服にも興味がないし、食べ物もそんなに食べられなくなったし、お茶だけは好き勝手に飲ませてほしい」と言われますけれど、「今日は○○な気分だから明前龍井茶だな」とか、注文が多くて対応するのが大変なんです!
お茶を飲んでいれば健康でいてもらえるし、病気で入院するよりは確かにいいなと思っていたんです。ところが、父は実は日本で言う人間国宝になって、医療費が無料なの。だから、母曰く「病院に行ってもらったほうが家計が助かるかもしれないわね」って(笑)。
――人間国宝を病気にさせるわけにもいきませんし(笑)。
ウー 本当ですよ! ただ、お茶は一回いいものを飲むと、まずいものが飲めなくなりますよね。いいものは本当においしいんです。
クッキングサロンでも、生徒さんにお出しするお茶にはぜいたくをしています。わざわざ説明はせず、さりげなくお出ししていますが、それでもわかる方はいらっしゃって、「ウー先生のサロンはいつも本当にいいお茶を使っていますね」と喜ばれます。
いいものこそ普段使いにする、というのが私のポリシーですが、「先生、こんなお茶を出してコストがかかりすぎてるんじゃない?」と心配される方もいるくらいなんですよ。
お茶はくすり。だから高くてもいいものを飲まないといけませんね。いいお茶は気持ちもリラックスするし、場も穏やかになるので、お金をかける意味があると思っています。香りだけでも癒されます。
――最近、中国の若者がお茶を飲まなくなって、代わりにコーラを飲んでいるので、体型が太めになっているというのは本当ですか?
ウー お茶を飲む若者が少なくなったのはおそらく本当です。中国の若い世代にもお茶のよさを伝えて、文化を残していかなければならないですね。
「食」を司る中国の広いキッチン
――最後に伺います。先生にとってキッチンとは?
ウー キッチンは人間の基本の基本。生きて行くのになくてはならないものですね。
キッチンがなかったらごはんが食べられません。人間はごはんを食べないと生きていけませんよね。だから、キッチンはリビングより大事、って私は思います。
――小さい頃に暮らした家のキッチンは覚えていらっしゃいます?
ウー 母と暮らしていた祖母の家は四合院といって、中国の古い建築様式の家でした。
前院、中院、后院と分かれていて、その后院が丸ごとキッチンだったんですよ。
(絵を描きながら)扉を入るとお庭があって――ここでおじいちゃんたちが中国将棋とかをしてるんですが――庭に接して建っているのが前院(クッキングサロンの玄関ホールにも四合院の扉を飾られていました)。そして御主人様がいる棟が中院。一番奥の后院に使用人が暮らしていて、そこに広いキッチンがありました。
冷蔵庫は当時はありませんでしたが、食材の保存庫や、食器を置く棚、そして調理スペースも十分にとられていました。火元は石炭やコークスだったかしら。
今の北京でも、いいお屋敷には広ーいキッチンがあります。それだけ食べることが大切なんですね。マンションも台所のスペースは日本より広めに取られています。キッチンが家の中心にあるのが、中国では当たり前ですから。
――「今日は何食べた?」というのが挨拶になるようなお国柄ですからね。
ウー 家をつくるときも、まずキッチンをどうしようか?から考える人が多いんじゃないかしら。だって、キッチンが決まらないと、生活のスタイルも決まりません。
中国の人にとってそのくらい食べることは大切だし、「食」を司るキッチンは本当に大事な場所なんです。
(おわり)
インタビュー=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=下村しのぶ

ウー・ウェン(うー・うぇん)
料理研究家
北京生まれ。北京師範大学卒業。1990年来日。自宅でのおもてなし料理が評判となり料理研究家の道へ。小麦粉料理を中心に北京に伝わる家庭料理を日本の素材で手軽にできる中国料理として紹介し、シンプルかつ体や健康をいたわる料理として人気を呼ぶ。日本と中国北京でクッキングサロンを主宰するかたわら、雑誌、テレビでも活躍。その他にも中国の生活文化の魅力を幅広く紹介している。著書に『ウー・ウェンの黒酢でおかず』、『ウー・ウェンの美味鍋』、『餃子 春巻 焼売-ウー・ウェンの小麦粉料理 』(ともに高橋書店)など多数。
料理研究家 ウー・ウェンの台所
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